こんにちは。司法書士・行政書士の今井康介です。
相続のご相談を数多くお受けする中で、「もっと早く知っておけば防げたのに…」そう感じる場面が少なくありません。
相続の失敗は、たった一つの“見落とし”や“誤解”から起こります。
しかし、事前の準備さえしておけば、多くは防ぐことができます。
まずは、結論からお伝えします。
相続の失敗は「知らない」「後回し」が原因。準備でほとんど防げます。
家族間の誤解、財産の見落とし、書類ミス、遺言の不備 などです。
ですが、少し早い段階で「家族・財産・想い」を整理しておくことで、遺産分割トラブルの多くは未然に防げます。
■ なぜ相続手続きで“失敗”が起きるのか
相続は、財産を分ける手続きであると同時に、家族の感情や関係が深く影響する繊細な問題です。
失敗が起こる主な理由は、次のとおりです。
- 財産の把握が難しい(ネット銀行・証券が増加)
- 遺言書がない、または内容が曖昧
- 相続税を想定していない
- 共有名義の管理が難しい
- 書類やルールが複雑でミスが起きやすい
では実際に、よくある失敗を具体的に見ていきましょう。
■ 相続手続きでよくある失敗5つ
① 家族間での遺産分割トラブル
相続で最も多いのが「家族間の行き違い」です。
たとえば当事務所でも、以下のようなご相談がありました(一般化しています)。
「母から“家は長男に”と聞いていたのに、遺言書がない」
「聞いてない」「そんな話していない」と兄弟が対立してしまった
争いの原因は、お金そのものよりも“知らされていなかった” という不信感 が多くを占めます。
防ぐ方法
- 公正証書遺言で正式に残す
- 家族に気持ちを伝えておく
- 相続する理由をメモにしておく
これだけでトラブルの可能性は大きく減ります。
② 相続税・納税資金が足りない
「相続税が思ったより高くて払えない」
「土地ばかりで現金がない」
こんなケースもよくあります。
不動産が多く現金が少ないご家庭ほど、土地を売るために急いで動かざるを得ない状況に陥ります。
防ぐ方法
- 生前に税理士へ相続税の試算を依頼する
- 納税資金の準備(保険・預貯金)
- 不動産の活用・売却を早めに検討
相続税は“早めの把握”が何より大切です。
③ 隠れた財産・借金の見落とし
近年はネット銀行・ネット証券が増え、家族でも財産を把握できないケースが多くなっています。
また、亡くなった後に借金が見つかることもあります。
防ぐ方法
- 財産一覧(財産メモ)を作っておく
- エンディングノートの活用
- 重要書類を一か所にまとめる
わずかなメモでも、相続人の負担は大幅に軽減されます。
④ 不動産を“共有名義”のまま放置する
「とりあえず共有でいいか」と考えがちですが、共有名義は後の相続で大きなトラブルになりやすいです。
- 売却に全員の同意が必要
- 管理が複雑
- 次の相続で所有者がさらに増える
- 連絡が取れなくなるケースも
防ぐ方法
- 可能なら単独名義に整理
- 生前に方向性を決めておく
- 公正証書遺言で明確にしておく
司法書士の現場では、共有名義トラブルは非常に多いテーマです。
⑤ 遺言書の不備・遺言内容の不一致
遺言書に多いミスは、
- 日付なし
- 押印なし
- あだ名で書いてしまう
- 不動産の番地や家屋番号が曖昧
- 相続人が先に亡くなるケースの記載がない
これらは、遺言書が無効になったり、争いのもとになります。
防ぐ方法
- 公正証書遺言にする
- 予備的条項を入れる
- 専門家にチェックしてもらう
遺言書は“書けば安心”ではなく、“正しく書けているか”が重要です。
■ 相続の失敗を防ぐ5つの方法
「誰が相続人か」「財産はどこにあるか」をまず確認。
預金・不動産・保険・借入などをまとめておく。
特に家・土地がある人は効果絶大。
納税資金の不足を防ぐ最重要ポイント。
状況は変わるため、見直しが安心につながる。
■ 実際にあった相談事例
ある70代の女性から、こんなご相談がありました。
「子どもたちは仲がいいから、遺言は必要ないと思っていて…」
ところが、実際に相続が始まると、長女様と長男様で意見が分かれ、話し合いが難航しました。
理由は、「自宅をどちらが引き継ぐのか」が曖昧だったためです。
もしあの時、“自宅は長女へ。その代わり預貯金を長男へ”といった遺言があれば、話し合いはスムーズに進んでいたはずです。
■ よくある質問(FAQ)
- 遺言書はいつ見直せば良い?
-
3〜5年ごと、または家族・財産に変化があったときが目安です。
- 自筆証書と公正証書、どちらがいい?
-
争いを避けたい場合は公正証書遺言が最も安全です。
- 相続税が心配な場合は?
-
税理士に早めに試算を依頼すると、納税資金の準備ができます。当事務所でも、税理士のご紹介が可能です。
- 相続手続きは司法書士・税理士どちらに?
-
名義変更・戸籍収集は司法書士、相続税は税理士が担当します。
■ まとめ|相続の失敗は“準備”でほとんど防げます
相続は、お金だけの問題ではなく、家族の関係や気持ちを守るための手続きです。
少し早めの準備をしておくことで、将来の不安やトラブルはぐっと小さくなります。
■ 相続のご相談はお気軽にどうぞ
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