内縁関係(事実婚)のまま亡くなったら、財産はどうなる?【2025年最新版】【司法書士が解説】

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はじめに

「結婚はしたいけれど、名字は変えたくない」「事実婚のほうが気楽でいい」
そう感じて、婚姻届を出さずに一緒に暮らすカップルが増えています。

このような内縁関係(事実婚)は、社会的には夫婦同然に見られますが、
法律上の扱いは少し違います。

もしパートナーが亡くなった場合、
「相続できるのか」「家や預金はどうなるのか」
という点で、大きな落とし穴があるのです。

今回は、判例を交えながら、司法書士の立場からわかりやすく解説します。

内縁関係に「相続権」はない ― 最高裁の原則

結論から言うと、婚姻届を出していない限り、相続権はありません。

この点についての基本的な立場を示したのが、
最高裁昭和33年4月11日判決(民集12巻6号952頁)です。

「内縁関係にある者は、法律上の配偶者ではないため、相続人とはならない。」

つまり、どれほど長年同居していても、
戸籍上の婚姻関係がなければ、法律上は「他人」と扱われるということです。

そのため、亡くなったパートナーの

  • 預金を引き出す
  • 不動産の名義を変更する
  • 遺産分割協議に加わる
    といったことは、法的権限がないため行えません。

裁判所が認めた“例外的な保護” ― 実質的夫婦関係の尊重

もっとも、裁判所は「内縁=完全に無保護」とはしていません。
実質的な夫婦関係に基づく保護を、他の場面では認めています。

🔹 交通事故の損害賠償(最判昭和55年3月27日・民集34巻2号244頁)

この事件では、交通事故で亡くなった男性の内縁の妻が、
加害者に対して損害賠償を請求しました。

最高裁はこう判断しています。

「婚姻届を出していなくても、社会的・実質的に夫婦であれば、
被扶養者としての損害賠償請求権が認められる。」

つまり、相続権こそないものの、
生活を共にしていた実態があれば、一定の法的保護が認められることを示した重要な判例です。

🔹 遺族補償年金の受給(東京地裁平成16年3月29日)

「内縁関係にあり、生計を共にしていた場合には、遺族補償年金の受給資格者と認められる。」

行政実務でも、労災・年金などで「実質的な配偶者」と認められることがあります。
ただし、「同居」「経済的一体性」「周囲からの社会的認知」など、
夫婦としての実態が証明できることが前提です。

遺言があれば財産を残せる ― 判例で確認された方法

「内縁でも財産を残すことは不可能ではない」
それを明確にしたのが、東京高裁平成24年2月16日判決です。

この事件では、被相続人が
「内縁の妻に自宅を遺贈する」と公正証書遺言に記していました。
他の相続人が「無効だ」と争いましたが、
裁判所は遺言を有効と判断しました。

👉 遺言があれば、内縁関係でも財産を確実に残すことができる。

ただし、他の相続人には「遺留分」という最低限の取り分があるため、
専門家に相談してバランスを取ることが大切です。

最近の動向 ― 多様な家族への法的保護の流れ

家族のかたちは年々多様化しており、
同性カップルや別姓事実婚など、従来の“婚姻中心”の法体系では対応しきれない問題が増えています。

東京地裁令和4年5月26日判決(同性パートナー訴訟)でも、

「同性カップルにも婚姻に準じる法的保護を与えるべき」
と指摘されました。

この流れは、内縁関係にも共通する課題です。
床谷文雄先生(大阪大学名誉教授)も、
「家族法は“婚姻”ではなく“生活共同体”を基軸に再構築されるべき」と講演で述べています。

よくあるトラブルと司法書士ができる備え

内縁関係のまま相手が亡くなった場合、次のようなトラブルが多く見られます。

  • 自宅が被相続人名義のままで、相続人(別居中の子など)から退去を求められる
  • 預金口座が凍結され、生活費が引き出せない
  • 遺言がなく、全財産が血縁の相続人に渡ってしまう

これらを防ぐには、以下の備えが有効です。

  1. 公正証書遺言で遺贈を明記する
  2. 死後事務委任契約で葬儀・納骨を委任する
  3. 家族信託で自宅の居住権を守る
  4. 任意後見契約で老後の財産管理を委ねる

こうしたスキームを組み合わせることで、
婚姻に依存しない“法的安心”を設計することができます。

まとめ ― 婚姻届を出していなくても、守れる方法はある

法律上、内縁関係に相続権はありません(最判昭和33年4月11日)。
しかし、

  • 実質的な夫婦としての保護(最判昭和55年3月27日など)
  • 遺言や信託による財産承継(東京高裁平成24年2月16日)
    といった方法で、現実的な解決策は存在します。

「婚姻届を出していないから何もできない」とあきらめず、
今のうちに“法律で守る準備”をしておくことが大切です。

相続・遺言・信託に関するご相談は、司法書士がサポートいたします。

代表司法書士・行政書士 今井 康介

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