※本記事は2026年10月時点の法令にもとづいて解説しています。
「亡くなった叔父には相続人がいない。叔父に貸していたお金はどうなるのか」「兄弟が全員相続放棄をした。実家や預金は誰が片付けるのか」「長年一緒に暮らしたパートナーは、何か受け取れるのか」。相続人がいない、またはいなくなったときに出てくるのが「相続財産清算人」という手続きです。
この記事では、相続財産清算人を家庭裁判所に選んでもらう「申立て」の手続きを中心に、費用や期間、申し立てる人の立場ごとの注意点を整理します。ご自身が元気なうちに「相続人がいない自分の財産をどうするか」を考えたい方は、遺言の記事をご覧ください。

先に結論:相続財産清算人の申立てで押さえること
- 相続人のあることが明らかでないとき(相続人がもともといない、全員が相続放棄をした等)に、家庭裁判所が選ぶのが相続財産清算人です
- 申し立てられるのは、債権者・受遺者・特別縁故者などの「利害関係人」と検察官です。申立先は亡くなった方の最後の住所地の家庭裁判所で、西宮市・尼崎市・芦屋市なら神戸家庭裁判所尼崎支部です
- 費用は収入印紙800円、連絡用の郵便切手、官報公告料5,582円のほか、財産が少ないときは「予納金」を求められることがあります
- 2023年(令和5年)4月1日の改正で公告をまとめて行えるようになり、権利関係が決まるまでの期間は最短で6か月になりました
- 特別縁故者への財産分与は、相続人を探す期間が終わってから3か月以内に別に申し立てます。分与されずに残った財産は、国のものになります
1. 相続財産清算人とは
相続人のあることが明らかでないとき
人が亡くなると、財産も借金も相続人が引き継ぎます。ところが、次のような場合は引き継ぐ人がいません。
- 配偶者・子・親・兄弟姉妹がもともといない、または先に亡くなっていて、代わりに相続する人(代襲相続人)もいない
- 相続人はいたが、全員が相続放棄をした
- 戸籍を調べても相続人が見つからない
民法は、このように「相続人のあることが明らかでないとき」は、相続財産そのものを法人として扱うと定めています(民法951条)。そのうえで、家庭裁判所は、利害関係人または検察官の請求によって、相続財産の清算人を選ぶとされています(民法952条1項)。
相続財産清算人は、亡くなった方の財産を調べて管理し、借金や費用を支払い、遺言で財産を受け取る人(受遺者)に渡し、最後に残ったものを国に引き継ぐまでを担当する人です。
なお、遺言で財産の全部を受け取る人(包括受遺者)がいるときは、相続人がいなくても、この手続きはいらないと考えられています。
「相続財産管理人」から名前が変わりました
2023年(令和5年)4月1日の民法改正で、相続人がいない場合のこの役目は、「相続財産管理人」から「相続財産清算人」という名前に変わりました。財産を片付ける(清算する)という仕事の中身に合わせた名前です。
改正後も「相続財産の管理人」という言葉は残っていますが、こちらは別の制度です。相続人がいるかどうかにかかわらず、相続財産を守るために家庭裁判所が選ぶ人で、保存のための手続きです(民法897条の2)。清算人が選ばれているときは、こちらは使いません。古い本やサイトでは旧名称のまま説明されていることがあるので、読むときは名前に注意してください。
清算人に選ばれるのは
法律上、特別な資格は求められていません。ただ、財産の調査・売却・支払いといった仕事を任せるため、家庭裁判所が事件と利害関係のない弁護士や司法書士などを選ぶことが多いようです。申立書に候補者を書くことはできますが、そのとおりに選ばれるとは限りません。
2. 申し立てられる人
申立てができるのは「利害関係人」と「検察官」です(民法952条1項)。利害関係人は、裁判所の案内では、亡くなった方の債権者、特定遺贈を受けた人、特別縁故者などが挙げられています。
| 申し立てる人 | よくある場面 |
|---|---|
| 債権者 | 貸したお金、未払いの家賃や管理費などを、亡くなった方の財産から払ってほしい |
| 受遺者(特定遺贈を受けた人) | 遺言で「この預金をあげる」と書かれていたが、渡してくれる相続人がいない |
| 特別縁故者になりうる人 | 内縁の配偶者や療養看護をした人が、財産分与を受けたい |
| 成年後見人など | 後見していた方が亡くなり、預かっている財産の引き渡し先がない |
| 検察官 | 公益のために必要な場合 |
全員が相続放棄をした場合で、放棄した人が実家などを現に占有しているときは、清算人に引き渡すまでその財産を保存する必要があります(民法940条1項)。このため、引き渡し先として清算人の選任を考える場面もあります。放棄した人が利害関係人として申し立てられるかは事案によるため、事前に裁判所に確かめてください。

3. どこの家庭裁判所に申し立てるか
申立先は、亡くなった方の最後の住所地の家庭裁判所です。相続は亡くなった方の住所で始まり(民法883条)、相続財産の清算の手続きは、相続が始まった地を管轄する家庭裁判所が扱うとされているからです(家事事件手続法203条1号)。
| 最後の住所地 | 申立先 |
|---|---|
| 西宮市・尼崎市・芦屋市 | 神戸家庭裁判所尼崎支部(尼崎市水堂町3-2-34) |
| 神戸市など | 神戸家庭裁判所(本庁) |
申立人がどこに住んでいるかではなく、亡くなった方の最後の住所で決まる点に注意してください。
4. 申立ての費用
裁判所の案内による費用は次のとおりです。
| 費用 | 金額 | 納める時期 |
|---|---|---|
| 収入印紙 | 800円 | 申立てのとき |
| 連絡用の郵便切手 | 裁判所ごとに異なる | 申立てのとき |
| 官報公告料 | 5,582円 | 家庭裁判所の指示があってから |
| 予納金 | 事案ごとに裁判所が決める | 申立ての後、必要なとき |
| 戸籍などの取り寄せ費用 | 通数による | 申立ての前 |
予納金とは
予納金は、清算人の仕事にかかる費用や清算人の報酬にあてるため、申立人が前もって裁判所に納めるお金です。相続財産から清算人の費用(報酬を含みます)が出せないおそれがあるときに求められます。
大阪家庭裁判所の手引きでは、金額は事案によって異なり、申立ての後に裁判官が決めること、相続財産から清算人の報酬などにあてる財産が集まったときは後で優先的に返されるが、集まらないときは全部または一部が返されない場合があることが説明されています。預金がほとんどなく、売りにくい不動産だけが残っているような事案では、予納金が大きくなる傾向があるといわれ、数十万円から100万円程度になることもあるようです。
清算人の報酬は、家庭裁判所が相続財産の中から決めます(民法953条・29条2項)。
郵便切手の内訳は裁判所ごとに決まっていて、郵便料金の改定で変わることがあります。申し立てる前に、神戸家庭裁判所尼崎支部の担当の係に確かめておくと安心です。
5. 申立てに必要な主な書類
裁判所の案内では、主に次の書類が挙げられています。
- 申立書
- 亡くなった方の出生から死亡までのすべての戸籍(除籍・改製原戸籍)謄本
- 亡くなった方の父母の戸籍謄本
- 子、兄弟姉妹、おい・めいが亡くなっている場合は、その方の戸籍謄本
- 亡くなった方の住民票の除票または戸籍の附票
- 財産の資料(不動産の登記事項証明書、預貯金や有価証券の残高が分かる書類など)
- 利害関係人が申し立てるときは、利害関係を示す資料(借用書、遺言書の写しなど)
- 清算人の候補者がいるときは、その方の住民票または戸籍の附票
相続人がいないことを示すため、相続人になりうる人の戸籍をすべてそろえる必要があり、ここに時間がかかります。全員が相続放棄をした場合は、放棄したことが分かる書類(相続放棄申述受理証明書など)も用意します。
6. 手続きの流れと期間(2023年改正後)
改正前は最低10か月、改正後は最短6か月
改正前は、①清算人(当時は管理人)を選んだことの公告、②債権者・受遺者への申出の公告、③相続人を探す公告を順番に行っていたため、権利関係が決まるまでに最低でも10か月かかっていました。
改正後は、①と③を一つの公告にまとめ、それと並行して②の公告を行えるようになりました。法務省の資料では、権利関係が決まるまでに最低限必要な期間が合計6か月に短くなったと説明されています。
| 順番 | 内容 | 期間 |
|---|---|---|
| 1 | 家庭裁判所に申立て | – |
| 2 | 清算人の選任と、相続人を探す公告(家庭裁判所が官報に載せる) | 6か月以上(民法952条2項) |
| 3 | 清算人が、債権者・受遺者に申出を求める公告 | 2か月以上。2の期間内に終わるように行う(民法957条1項) |
| 4 | 2の期間内に相続人が現れなければ、相続人・知れなかった債権者などは権利を行使できなくなる | (民法958条) |
| 5 | 特別縁故者が財産分与を申し立てる | 2の期間が終わってから3か月以内(民法958条の2第2項) |
| 6 | 分与されずに残った財産を国に引き継ぐ | (民法959条) |
2023年4月1日より前に管理人が選ばれていた事件は、改正前の手続きのままです。どちらの決まりになるかは、選ばれた日で決まります。
実際にかかる期間
公告の期間は最短6か月ですが、不動産の売却、債権者への支払い、特別縁故者の審判などがあると、終わるまでに1年以上かかることも珍しくありません。不動産を売るなど、清算人の権限を超える行為をするときは、家庭裁判所の許可が必要です(民法953条・28条)。
7. 清算人が選ばれた後にすること
清算人は、主に次のような仕事をします。
- 財産の目録を作り、財産を管理する(民法953条・27条)
- 債権者・受遺者に申出を求める公告をし、申し出た人や分かっている人に支払う(民法957条)
- 必要に応じて、家庭裁判所の許可を得て不動産などを売り、お金に換える
- 債権者や受遺者から求められたら、財産の状況を報告する(民法954条)
- 特別縁故者の申立てについて、家庭裁判所に意見を伝える(家事事件手続法205条)
- 最後に残った財産を国に引き継ぐ(民法959条)
途中で相続人が見つかって相続を承認したときは、清算人の代理権はなくなり、清算人は相続人に計算の結果を報告します(民法956条)。
8. 特別縁故者への財産分与
特別縁故者とは
相続人がいないとき、家庭裁判所が相当と認めれば、次のような人に、清算した後に残る財産の全部または一部を与えることができます(民法958条の2第1項)。
- 亡くなった方と生計を同じくしていた人(内縁の配偶者、事実上の養子など)
- 亡くなった方の療養看護に努めた人
- そのほか、亡くなった方と特別の縁故があった人
内縁の配偶者には法律上の相続権がありません。この制度は、そうした方が財産を受け取れる数少ない道の一つです。内縁の方の住まいや年金のことは、別の記事で詳しく整理しています。

申立ての期限と手続き
特別縁故者の財産分与は、清算人の選任とは別の申立てです。相続人を探す公告の期間が終わってから3か月以内に申し立てます(民法958条の2第2項)。この3か月を過ぎると申し立てられないため、清算人の選任を申し立てた段階から、期限を意識しておくことが大切です。
裁判所の案内では、申立先は亡くなった方の最後の住所地の家庭裁判所、費用は収入印紙800円と連絡用の郵便切手とされています。家庭裁判所は、期間が終わってから3か月がたった後に審判をし(家事事件手続法204条1項)、その前に清算人の意見を聴きます(同法205条)。
認められるとは限りません
財産分与は、家庭裁判所が「相当」と認めたときに、認めた範囲で与えられます。申し立てれば全部もらえる、というものではありません。一緒に暮らした期間、生活の実態、療養看護の中身などを、資料で示していくことになります。
亡くなった方の預金を、特別縁故者になるつもりで先に生活費に使ってしまうと、後で問題になりかねません。清算人が選ばれるまでは、財産に手をつけずに保管しておくのが無難です。
9. 債権者の立場から
亡くなった方にお金を貸していた、家賃や管理費が未払いになっている、といった債権者にとって、相続人がいない状態では請求する相手がいません。清算人の選任を申し立てれば、清算人が財産から支払いをする流れになります。
債権者として気をつけたいのは次の点です。
- 清算人が出す公告の期間内に、申出をする。期間内に申し出ず、清算人にも知られていなかった債権者は、相続人を探す期間が終わると権利を行使できなくなります(民法958条)
- 財産が少ないと、申立人として予納金を求められます。回収できる見込みの金額と、予納金・申立ての手間をくらべて判断することになります
- 財産が足りないときは、債権の額に応じて分けて支払われるのが原則です(民法957条2項・929条)
亡くなった方の借金の調べ方は、こちらの記事で整理しています。

10. 共有者の立場から
亡くなった方が不動産を誰かと共有していた場合、民法255条は、共有者の一人が相続人なく亡くなったときは、その持分は他の共有者のものになると定めています。
ただし、最高裁判所の平成元年11月24日の判決は、その持分も、ほかの相続財産と同じく特別縁故者への財産分与の対象になり、分与されなかったときに初めて他の共有者のものになる、と判断しています(判決当時の民法958条の3。今の958条の2にあたります)。
つまり、他の共有者がその持分を取得するにも、清算人の選任から特別縁故者の手続きまでが終わるのを待つことになります。共有者の一人として清算人の選任を申し立てることもあります。持分を自分の名義にする登記の方法は事案によって異なるため、個別に確認してください。
共有者の一人が行方不明のときの制度は、こちらの記事をご覧ください。

11. 最後に残った財産は国のものに
特別縁故者への分与がされなかった財産、分与した後になお残った財産は、国庫に帰属します(民法959条)。清算人は、残った財産を国に引き継いで仕事を終えます。
「相続人がいなければ自動的に国のものになる」と思われがちですが、実際には、清算人が選ばれ、公告や支払いを経てからでないと国には引き継がれません。誰も申し立てなければ、空き家や預金が手つかずのまま残ってしまいます。
12. 申立て前のチェックリスト
申し立てる前に、次の点を確かめておくと進めやすくなります。
- 相続人が本当にいないか(戸籍で、配偶者・子・親・兄弟姉妹・おいめいまで確認したか)
- 全員が相続放棄をした場合、放棄したことが分かる書類がそろっているか
- 遺言はないか(包括受遺者・特定受遺者がいないか)
- 財産と借金の全体がおおよそ分かるか(不動産、預金、借入れ、未払いの費用)
- 自分が「利害関係人」にあたることを示す資料があるか
- 預金が少ない場合、予納金を負担できるか
- 特別縁故者として申し立てるつもりなら、相続人を探す期間が終わってから3か月以内という期限を把握しているか
相続全体の期限は、こちらの記事にまとめています。

よくある質問
- 相続人が全員相続放棄をしたら、遺産は自然に国のものになりますか。
-
自然には国のものになりません。相続財産清算人が選ばれ、公告や支払いを終えてから、残ったものが国に引き継がれます(民法959条)。誰も申し立てなければ、財産はそのまま残ります。
- 申立てには、全部でいくらかかりますか。
-
裁判所に納めるのは、収入印紙800円、連絡用の郵便切手、官報公告料5,582円です。このほか、相続財産が少ないときは予納金を求められることがあり、金額は事案ごとに裁判所が決めます。戸籍などの取り寄せ費用も別にかかります。
- 申し立ててから終わるまで、どのくらいかかりますか。
-
2023年4月の改正で、権利関係が決まるまでの期間は最短6か月になりました。ただ、不動産の売却や特別縁故者の審判などがあると、1年以上かかることも珍しくありません。
- 内縁の妻(夫)は、何もしなくても財産を受け取れますか。
-
受け取れません。内縁の配偶者には相続権がないため、清算人が選ばれた後、相続人を探す期間が終わってから3か月以内に、特別縁故者として財産分与を申し立てる必要があります。認められるかどうか、どの範囲かは家庭裁判所が判断します。
- 亡くなった方の家に、私物や家財が残ったままです。勝手に片付けてよいですか。
-
相続人がいない財産は、相続財産清算人が管理するものになります。勝手に処分すると後で問題になりかねないため、清算人が選ばれるまでは手をつけず、必要なら清算人の選任を申し立てて、清算人と相談しながら進めるのが無難です。
まとめ
相続人がいない、または全員が相続放棄をしたときは、家庭裁判所に相続財産清算人を選んでもらい、財産の整理を進めます。申し立てられるのは債権者・受遺者・特別縁故者などの利害関係人と検察官で、申立先は亡くなった方の最後の住所地の家庭裁判所です。西宮市・尼崎市・芦屋市なら神戸家庭裁判所尼崎支部になります。
費用は収入印紙800円・郵便切手・官報公告料5,582円が基本ですが、財産が少ないときは予納金が大きな負担になることがあります。2023年の改正で公告の期間は短くなったものの、実際には1年以上かかることも多く、特別縁故者の申立てには3か月の期限があります。どの立場で、何を目的に申し立てるのかを整理してから準備を始めると、手戻りが少なくなります。
相続財産清算人の選任や特別縁故者の財産分与の申立書の作成、そのための戸籍の収集は、西宮北口のシアエスト司法書士・行政書士事務所でもお受けしています。司法書士は家庭裁判所に出す書類の作成をお手伝いします。
出典・参考
- e-Gov法令検索「民法」(25条〜29条、255条、883条、897条の2、940条、951条〜959条) https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089
- e-Gov法令検索「家事事件手続法」(203条〜205条) https://laws.e-gov.go.jp/law/423AC0000000052
- 裁判所「相続財産清算人の選任」 https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_15/index.html
- 裁判所「特別縁故者に対する相続財産分与」 https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_16/index.html
- 裁判所「神戸家庭裁判所 尼崎支部」 https://www.courts.go.jp/kobe/about/syozai2/amagasakisibu/index.html
- 神戸家庭裁判所「管内支部等所在地一覧」 https://www.courts.go.jp/kobe/vc-files/kobe/file/30203003.pdf
- 大阪家庭裁判所「相続財産清算人選任申立ての手引き(成年後見人・保佐人・補助人用)」 https://www.courts.go.jp/osaka/vc-files/osaka/souzokuzaisan_kouken_tebikiR080105.pdf
- 法務省「令和3年民法・不動産登記法改正、相続土地国庫帰属法のポイント」(16.相続人不存在の相続財産の清算手続の見直し) https://www.moj.go.jp/content/001444017.pdf
- 最高裁判所第二小法廷 平成元年11月24日判決(昭和63(行ツ)40) https://www.courts.go.jp/hanrei/52769/detail2/index.html

