口座凍結はこうして起きる|認知症になった親のお金を守るための“現実的な5つの対策”【司法書士が解説】

目次

はじめに

「親が認知症になったら、銀行口座はどうなるのか?」
これは、私たち司法書士事務所にも非常に多く寄せられるテーマです。

そして、多くのご家族がこうお話しされます。

「キャッシュカードさえあれば、しばらくは大丈夫ですよね?」

実は、いちばんトラブルにつながりやすい考え方がこれです。

認知症と銀行口座の問題は、法律、銀行の内部運用、ご家族の状況が複雑に重なるため、“想像しているよりずっと早く・突然” 問題が表面化します。

この記事では、そうした現実のトラブルを避けるために、司法書士としての実務経験をもとに、
「実際に何が起きるのか」
「どうすれば困らずに済むのか」
を、わかりやすく整理しました。

この記事でわかること
  • 認知症になっても すぐに口座が凍結されるわけではない理由
  • しかし銀行が「異変」を認識した瞬間に起こる対応
  • 凍結されると家族でも 一円も引き出せない仕組み
  • 凍結後は、実質 成年後見制度しか使えない 現実
  • その前にできる 5つの現実的な対策
     (任意後見/家族信託/代理人カード/生前贈与/口座整理)

1|口座凍結は「認知症と診断された瞬間」では起きない

まず、多くの方が誤解しているポイントがあります。

❌ 誤解

「親が認知症と診断されたらすぐ口座が凍結される」

⭕ 実際

銀行が『判断能力に問題あり』と判断した時点で制限がかかるという仕組みです。

つまり、“診断書” ではなく “銀行の認識” が引き金になる のです。

銀行が「異変」に気づく場面は意外に多い

  • ATMで何度も暗証番号を間違える
  • 取引内容を説明できない
  • 生年月日や住所を繰り返し言い間違える
  • 定期預金の解約理由が曖昧
  • 家族が窓口で「認知症で…」と話す
  • 大きな金額の出金が続く

銀行には預金者を守る義務があるため、「不正取引の可能性」 を感じた瞬間、口座が凍結されるか、厳しい制限が始まります。

2|凍結されると、家族でも「一円も引き出せない」理由

凍結は、預金者を保護するための銀行側の措置です。
ただし、その結果、家族でも預金に一切手を付けられなくなります。

凍結されるとどうなる?

  • ATM → 完全にストップ
  • 窓口引き出し → 不可
  • 生活費が払えない
  • 施設費・病院代 → 立替が必要
  • 公共料金の引き落としが止まる可能性

銀行にとって、家族は「代わりに引き出してよい存在」ではありません。

そのため、口座が凍結した後の選択肢は極めて限られます。

3|凍結後に使える制度は、ほぼ「成年後見制度」だけ

口座が凍結された後、家族が預金を使うための現実的な方法は成年後見制度しかありません。

成年後見制度の特徴

  • 家庭裁判所が後見人を選任
  • 後見人が預金・契約の代理を担当
  • 生活費や医療費の支払いが可能になる

ただし、デメリットも大きい

  • 申立てから開始まで 2〜6ヶ月
  • 毎年の報告書作成が必要
  • 財産の使い道に制限が多い
  • 司法書士・弁護士などの専門職が後見人になった場合、報酬が発生

つまり、凍結された後では“負担の大きい制度”を使うほかないというのが現実です。

4|口座凍結を防ぐための“現実的な5つの対策”

ここからは、実務で効果が高く、実際のご家庭でも多く採用されている方法です。

① 任意後見制度

判断能力がしっかりあるうちに、将来の代理人を指定しておく仕組み。

▼できること

  • 生活費の支払い
  • 銀行手続き
  • 施設入所・介護契約

“法的な代理権”が生まれるため、口座凍結後の混乱を防ぎやすい制度です。

② 家族信託(民事信託)

財産の管理権限を家族に託す制度。

▼できること

  • 銀行口座の運用
  • 不動産管理
  • 売却や資金確保の柔軟な判断

「元気なうちに準備する」という前提は必要ですが、口座凍結リスクを大きく減らせる方法です。

③ 代理人カード(銀行の制度)

銀行が許可すれば、家族がATM操作をできるカードを発行できます。

▼ただし注意

  • 使える取引が限定される
  • 信託や後見のような法的保護はない
  • 銀行ごとに運用が異なる

“最低限の対策”としては有効です。

④ 生前贈与の活用

贈与税の範囲内で定期的に資金を渡しておく方法。

▼メリット

  • 凍結後の生活費不足を防げる
  • 相続トラブルも軽減

ただし、税務判断が必要なケースもあるため、計画性が重要です。

⑤ 口座の整理と分散

意外と見落とされる重要な対策。

  • 年金受け取り口座
  • 生活費用口座
  • 貯蓄口座

これらを整理しておくだけで、凍結時の影響を最小限に抑えられます。

5|どれを選ぶのが最適?

実務でトラブルが少ないのは、次の組み合わせです。

★ 任意後見 + 家族信託

  • 任意後見 → 生活・契約・介護
  • 家族信託 → 銀行・財産・不動産

役割を分けることで、口座凍結のリスクと、生活の困難を同時に防ぐことができます。

最後に

認知症による口座トラブルは、家族の生活や介護を直撃する問題です。

だからこそ、元気なうちにしかできない準備があります。

  • 「もう少し様子を見ようかな」
  • 「うちの親はまだ大丈夫」
  • 「キャッシュカードがあれば…」

そう思った時が、本当は“いちばん準備がしやすい時期”です。

◆ 西宮市で口座凍結や認知症対策をお考えの方へ

西宮市のシアエスト司法書士・行政書士事務所では、制度の説明だけでなく、ご家族の不安・兄弟間の状況・生活の現実も含め、その家庭に合った方法をご提案しています。

  • 親のお金が心配
  • どの制度を使えばいいか迷っている
  • 認知症の兆候があり、早めに備えたい

そんなときは、どうぞ一度ご相談ください。
あなたのご家庭にとって、最も安心できる形を一緒に考えていきます。

代表司法書士・行政書士 今井 康介

西宮・芦屋・宝塚・尼崎エリアで司法書士・行政書士をお探しなら、シアエスト司法書士・行政書士事務所へお任せください。

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