契約書を袋とじする方法は、インターネット上でもたくさん紹介されています。
しかし実際に作業してみると、
- A4用紙を切って帯を作る
- 糊で貼る
- 上下の止め部分を調整する
- 最後に契印を押す
……という手順が手間で、「思ったより面倒だな」と感じる方も多いのではないでしょうか。
そもそも、契約書は必ず袋とじにしなければならないのでしょうか?
本記事では、
- 袋とじが不要なケース
- 袋とじを省略するための書類作成の工夫
- どうしても袋とじしたい場合の便利グッズ
- 実務で気を付けるべき法的ポイント
を、司法書士の専門知識と実務経験からわかりやすく解説します。
契約書は袋とじすべき?結論:必須ではありません
結論から言えば、契約書が複数ページに及ぶ場合でも、袋とじは絶対条件ではありません。
その理由は、袋とじをせずとも、改ざん防止が可能な手段が法律実務として確立しているためです。
▼もっとも一般的な改ざん防止方法
すべてのページに契印(割印)を押すこと。
契印とは、契約書が複数ページである場合、「1枚目と2枚目」「2枚目と3枚目」のように隣り合うページにまたがるように押す印鑑のこと。
これにより、
- ページの差し替え
- ページの抜き取り
- 後からの書き換え
などの不正を防止でき、袋とじと同等の効力があります。
▼実務ではどうしている?
実務の現場では…
- 2〜3ページ程度の契約書 ⇒ ホッチキス止め+契印で十分
- 10ページ以上の契約書 ⇒ 見やすさと保全性のため袋とじを検討
という運用が一般的です。
▼袋とじしても契印は必要
意外と知られていないポイントですが、
袋とじした契約書でも、袋とじ部分と本文の境目には契印が必要です。
つまり、袋とじをしても「契印を押す手間」は変わらないため、
袋とじのメリットは実はそれほど大きくありません。
袋とじを省略したいときの「契約書作り」のコツ
袋とじを前提にすると作業が増えますが、そもそもページ数を減らせば袋とじの必要性自体が薄くなります。
以下の工夫は、実務でも頻繁に使われている方法です。
① 両面印刷にする
単純にページが半分になります。
金融機関・不動産取引・企業間契約でも一般的です。
② フォントサイズを調整する
「10.5pt → 9.5pt」程度の微調整でも、1ページに収まることがあります。
【注意点】
- 読みにくいほど小さくしない
- 高齢の方や取引先への配慮も必要
- 誤解や読み間違いにつながるリスク
実務では9ptが下限という感覚の会社も多いです。
③ A4 → A3 に切り替える
契約当事者が対面で署名する場合など、A3は非常に使いやすいです。
ただし提出先の指定がある場合(裁判所など)は要注意。
【例】
- 裁判所書類 → A4・12pt指定
- 一部の行政手続 → A4指定
- 契約書でも「A4で」の希望を示す企業もある
必ず事前確認をしましょう。
④ パンチ穴を開ける場合の注意点
これは意外とある「実務トラブル」です。
- 余白ギリギリに文章がある
- パンチ穴が文字にかかってしまう
- “文字の欠損”が契約の有効性に影響する可能性
特に書類保管を厳密に求める業種(不動産取引や金融)では注意しましょう。
袋とじをする場合は、テープ製本(専用テープ)が最も実務的
「袋とじした方が見栄えが良い」「ページ数が多い」といった場合は、専用の製本テープを使うのが最も効率的です。
▼実務で便利な製本テープ(司法書士事務所でも使用)
【Amazon】ニチバン 製本テープ 製本ラベル A4判 35mm 契印 BKL-3534
★メリット
- 見栄えが良く、書類の信頼感が高い
- 剥がれにくく長期保存向き(不動産や契約書に最適)
- 上下が閉じられる“袋とじ構造”で改ざん防止に強い
- 割印用スペースが設けられているタイプもある
★注意点
100円ショップの“簡易製本テープ”は、
- 上下が開いている
- ページの差し替えが可能
- 改ざん防止としては不十分
正式な契約では絶対に避けた方が良いです。
【まとめ】袋とじは必須ではない。契約書は「内容と保全性」が最優先
- 契約書の袋とじは 必ずしも必要ではない
- ホッチキス止め+契印で十分な法的効力がある
- ページ数を減らす工夫をすれば、袋とじの手間が大幅に減る
- どうしても袋とじする場合は、専用テープを使うのが実務的
契約書は法的な文書であると同時に、契約相手との信頼を形にするツールでもあります。
読みやすく、誤解がなく、適切に保全できる方法を選ぶことが大切です。
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