「遺言なんて、まだ自分には早い」「財産もそんなにないし関係ない」――そう思っている方、多いのではないでしょうか。
でも実は、特におひとりさまの方こそ、遺言を残しておくことで、今の暮らしにも安心が生まれます。
今日は、私が実際にお手伝いした方々の事例も交えながら、遺言を残すことで得られる三つのメリットについてお話ししたいと思います。
まず一つ目は、「財産を自分の意思で託せる安心」です。
ある70代の女性からご相談を受けたときのことです。
その方は、ご主人を早くに亡くされ、お子さんもいらっしゃいませんでした。
「私が亡くなった後、このお金はどうなるんでしょうか?」
そう不安そうに話されていました。
実は、相続人がいない場合、その財産は最終的に国庫、つまり国のものになるんです。
どんなに大切にしてきたお金や持ち物でも、遺言がなければ自分の想いで託すことはできません。
そこでこの方は、遺言を作って、親しくしていたご友人と、長年寄付を続けていた動物保護団体に財産の一部を残されました。
完成した遺言書を手に、「これで本当に安心しました」と笑顔を見せてくださったのを、今でも覚えています。
遺言というのは、資産の多い少ないではなく、「自分の人生をどう終えたいか」を形にするものなんです。
二つ目のメリットは、「死後の手続きをスムーズにできる」という点です。
例えば、亡くなった後の葬儀や納骨、役所への届出、銀行口座の解約など――こうした手続きは、思っている以上に多くの場面で“判断”が求められます。
おひとりさまの場合、その判断をしてくれる家族がいないため、残されたご友人や専門家が戸惑ってしまうこともあります。
実際にあったケースですが、ある男性が亡くなったあと、遺言がなかったために銀行の口座が凍結され、葬儀費用の支払いができなくなってしまったことがありました。
生前に遺言を作っておけば、財産の扱いや支払いの方法をきちんと示せたのに――とご友人が悔やまれていました。
遺言があると、「誰がどのように進めるのか」が明確になります。
さらに、死後事務委任契約と併せて準備をしておくと、葬儀や役所手続きまでスムーズに行えるので、まさに“自分の最後を自分の手で整える”ことができるんです。
そして三つ目のメリットは、「自分の人生を整理して、心が軽くなる」ということ。
これは意外に感じるかもしれませんが、遺言を作る過程で、多くの方が「自分のこれまでを振り返る時間になった」とおっしゃいます。
例えば、「この人にはお世話になったな」とか、「この思い出の品は、あの人に渡したい」とか。
そうした一つひとつを考えていくうちに、自分の歩んできた人生をあらためて肯定できるようになるんです。
遺言づくりは、“終わりの準備”ではなく、“これからを前向きに生きるための整理”でもあります。
実際に作成を終えた方から、「書いた瞬間に、心がスッと軽くなった」「これでようやく安心して暮らせる」といった声をよく聞きます。
遺言というと、重たく感じる方も多いと思います。
でも、考え始めるのに早すぎるということはありません。
むしろ、「まだ元気な今だからこそ」落ち着いて自分の想いを形にできるんです。
おひとりさまが安心して、自分らしい最期を迎えるために。
遺言は、未来への優しいメッセージでもあります。
もし少しでも気になる方は、一度専門家に相談してみてください。
きっと、「思っていたよりもずっと安心できる」と感じていただけると思います。

