こんにちは。司法書士の今井康介です。
今日は、普段の業務とは少し違うテーマで、私が最近行った寄付についてお話ししたいと思います。
先日、京都府木津川市にある「木津川ダルク」という薬物依存症回復支援施設に寄付をさせていただきました。司法書士として日々、相続や成年後見、債務整理など、人生の転機や困難に直面している方々と向き合う中で、「もっと社会に貢献できることはないか」と考えた結果の行動です。
この記事では、木津川ダルクという団体の活動内容と、なぜ司法書士である私がこの団体を支援しようと思ったのか、その想いをお伝えできればと思います。
1. ダルクとは?
ダルク(DARC)って何?
まず、「ダルク」という言葉を初めて聞く方も多いかもしれません。
ダルク(DARC)とは、「Drug Addiction Rehabilitation Center(薬物依存症リハビリテーションセンター)」の略称で、薬物依存症からの回復を目指す人々が集う自助グループ施設です。
日本では1985年に東京で最初のダルクが設立されて以来、全国に約80か所の関連施設が広がり、40年以上にわたって薬物依存症者の回復支援を続けています。
木津川ダルクの特徴
木津川ダルクは、京都府南部の木津川市に拠点を置き、薬物依存症からの回復を支援している施設です。
木津川ダルクの最大の特徴は、「当事者による当事者支援」というピアサポートのモデルです。実際に薬物依存症から回復した人々がスタッフとなり、今まさに回復を目指している仲間たちをサポートしています。
代表の加藤さんご自身も、かつて薬物依存症に苦しんだ経験を持ち、2025年12月には断酒断薬30周年という大きな節目を迎えられました。そんな「生きた回復のモデル」が、日々仲間たちと共に歩んでいるのが木津川ダルクです。
活動の基本:12ステッププログラム
木津川ダルクでは、グループミーティングを基本に、12ステッププログラムを実践しています。
これは、アルコール依存症の自助グループ「AA(アルコホーリクス・アノニマス)」から派生した、薬物依存症版の「NA(ナルコティクス アノニマス)」のプログラムです。
12ステップの核心は、以下のようなプロセスです。
① 無力の実感:自分の力ではどうにもならないと認める
② ハイヤーパワーへの委ねる:自分を超えた大きな力に身を委ねる
③ 自己の棚卸し:これまでの行動を正直に振り返る
④ 埋め合わせ:傷つけた人々に可能な限り償いをする
⑤ 日々の実践:一日一日を大切に、薬物を使わない生き方を続ける
興味深いのは、この12ステッププログラムが、浄土真宗の教え(他力本願・業の直視・無力の実感)と深く共鳴している点です。実際、木津川ダルクの代表・加藤さんは、保護司会の学習会で「さるべき業縁のもよおせば、いかなるふるまいもすべし」という親鸞聖人の言葉を引用しながら、依存症支援について語っておられます。
「人間は、条件さえ揃えば、どのような悪でも、どんな酷いことでもしでかしてしまう、恐ろしい面を持った存在である」 という、人間の深い「業(ごう=行為、罪の性質)」を認める言葉です。
2. なぜ司法書士が薬物依存症支援に関心を持ったのか
司法書士業務との接点
「司法書士が、なぜ薬物依存症支援に?」と不思議に思われるかもしれません。
実は、司法書士の業務と薬物依存症の問題は、意外なところでつながっています。
① 成年後見業務
薬物依存症が長期化すると、脳への影響や精神疾患の併発により、判断能力が低下するケースがあります。そうした方の財産管理や身上監護のため、成年後見制度を利用することがあります。
② 債務整理業務
薬物を手に入れるための借金、依存症による失職で返済が困難になった債務など、依存症と経済的困窮は密接に関連しています。債務整理のご相談の背景に、依存症の問題が隠れていることもあります。
③ 相続・遺言業務
「薬物依存症の子どもに財産を遺すと、すぐに使い果たしてしまうのでは?」と心配されるご家族からのご相談もあります。信託や遺言を活用して、本人の生活を守りながら財産を管理する方法を一緒に考えます。
「再犯防止」と社会復帰支援の重要性
日本では、薬物事犯による検挙者の約65%が再犯者です。つまり、刑罰だけでは薬物問題は解決しないということです。
近年、法務省も「再犯防止推進計画」の中で、薬物依存症者への治療・支援の重要性を強調しています。刑事施設を出た後、地域社会で回復を続けられる環境があるかどうかが、再犯防止の鍵を握っているのです。
そこで重要な役割を果たしているのが、ダルクのような民間の回復支援施設です。
「人間の弱さ」を認めることから始まる支援
加藤代表が保護司会で語られた言葉が、深く心に残りました。
「自分は絶対に悪いことなどしない」と思っていても、縁(条件)さえ整えば、人間はどのような振る舞いもしてしまう。この人間の「弱さ」を認めることから、真の回復が始まる。
依存症は意志の弱さではなく、耐えがたい現実を生き抜くための「自己治療」でもあった―
この視点は、司法書士として困難を抱える方々と向き合う上でも、大切にしたい姿勢だと感じました。
私たちは誰もが、何かに依存しながら生きています。コーヒー、スマホ、仕事、承認欲求…。たまたま法律に触れない対象だったから、社会的に問題視されていないだけかもしれません。
「病気」ではなく「人間」を見る。
この視点を持つことが、本当の意味での社会復帰支援につながるのだと思います。
3. 実際に寄付をしてみて感じたこと
木津川ダルクへの寄付は、オンライン寄付プラットフォーム「リコサポ」を通じて簡単に行うことができました。
寄付をした後、改めて団体の活動報告を読んでいると、日々の地道な取り組みが伝わってきました。
・仲間の送別会での涙と笑顔
・ソフトバレーで声を掛け合う仲間たち
・保護司会での講演活動
・2026年3月に向けた新規グループホーム開設の準備
公的な助成に頼らず、自分たちの手と支援者の寄付だけで運営を続けているという事実にも、驚きと尊敬の念を覚えました。
寄付という行為は、お金を渡すだけではなく、「あなたたちの活動を応援しています」というメッセージを送ることでもあります。そして、私自身も社会の一員として、回復を支える「縁」の一部になれたような気がしています。
4. 私たちにできる社会貢献のかたち
司法書士としてできること
司法書士として、薬物依存症の問題に関わる方法はいくつかあります。
① 適切な情報提供
債務整理や成年後見のご相談の際、背景に依存症の問題がある場合、ダルクや医療機関、自助グループなどの情報を提供する。
② 遺贈寄付のサポート
「自分の財産を社会貢献に使いたい」というご相談の際、ダルクのような支援団体への遺贈寄付という選択肢を提案する。
③ 成年後見人としての配慮
依存症を抱える被後見人の支援では、単なる財産管理だけでなく、回復のための社会資源につなげる視点を持つ。
④ 地域での啓発活動
薬物依存症に対する偏見をなくし、「回復できる病気」であることを伝える活動に参加する。
一般の方にもできること
司法書士でなくても、私たち一人ひとりにできることがあります:
① 寄付をする
木津川ダルクをはじめ、全国のダルクや依存症支援団体への寄付。少額でも、継続的な支援が施設運営を支えます。
② 偏見をなくす
「薬物依存症=犯罪者」という単純な見方ではなく、「回復できる病気」として理解すること。
③ 情報を広める
身近に困っている人がいたら、ダルクや自助グループの情報を教えてあげること。
④ ボランティアに参加する
一部の施設では、ボランティアスタッフを募集していることもあります。
「承継寄付」という選択肢
最近、司法書士業界でも注目されているのが「承継寄付(遺贈寄付)」という概念です。
人生で使わずに残ったお金を、死後に社会課題の解決のために寄付する方法です。相続人がいない方や、「相続人には十分な財産を遺したので、残りは社会に還元したい」という方にとって、人生最後の社会貢献となります。
遺言書の中に「◯◯に○○万円を遺贈する」と記載することで、あなたの想いが未来の回復を支える力になります。
ご興味のある方は、ぜひ司法書士や弁護士にご相談ください。
5. おわりに:「螺旋階段」を共に歩む社会へ
木津川ダルクの活動を知る中で、印象的だった表現があります。
「依存症からの回復は、ゴールのある競争ではなく、一進一退を繰り返しながら、ゆっくりと登っていく『螺旋階段』のようなプロセス」
この螺旋階段を、当事者だけに登らせるのではなく、私たち社会全体で支えていく―それが、真の意味での社会復帰支援なのだと思います。
司法書士という職業柄、私は日々、人生の転機や困難に直面している方々と向き合います。相続で家族関係がこじれた方、借金で首が回らなくなった方、認知症で判断能力が低下した方…。
そのような方々に寄り添う中で、いつも感じるのは「人間の弱さと強さは紙一重である」ということです。
どんなに困難な状況でも、適切な支援と温かい仲間がいれば、人は回復し、再び笑顔を取り戻すことができる。木津川ダルクの「10年ぶりに笑えた」という言葉が、それを証明しています。
今回の寄付は、私にとって小さな一歩に過ぎません。しかし、この小さな一歩が、誰かの回復を支える「縁」の一部になれたとしたら、司法書士として、一人の人間として、これほど嬉しいことはありません。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
もし、あなたも何か社会に貢献したいと考えているなら、ぜひ身近なところから始めてみてください。寄付、ボランティア、情報を広めること、偏見をなくすこと―どんな小さなことでも、確実に誰かの力になります。
私たち一人ひとりが、「螺旋階段」を共に歩む社会の一員でありたいですね。
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【参考リンク】
・木津川ダルク
・厚生労働省「全国の薬物依存症回復支援施設」
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※この記事は、薬物依存症に対する理解を深め、回復支援の重要性を伝えることを目的としています。薬物の使用を推奨・容認するものではありません。薬物に関するお悩みがある方は、最寄りの精神保健福祉センターや医療機関、ダルク、自助グループ等にご相談ください。

