抵当権抹消の一括申請とは?できる要件と、1番・2番、所有者が異なる場合、根抵当権との一括抹消を司法書士が解説

※本記事は2026年10月時点の情報に基づいて解説しています。

住宅ローンを完済しても、抵当権の登記は自動的には消えません。自分で抹消登記(まっしょうとうき)を申請する必要があります。

借り換えをくり返した場合や、土地と建物の両方にいくつも抵当権が付いている場合は、「1番と2番の抵当権を、1回の申請でまとめて消せるの?」と迷われる方が多いと思います。

この記事では、抵当権の抹消を一つの申請でまとめて行う「一括申請」ができる要件と、抵当権者が違う場合、所有者が違う場合、根抵当権がまじっている場合の考え方を、順にお話しします。

抹消のご依頼をいただいたときは、まず登記簿で「抵当権者の名前」と、金融機関から届いた書類の「日付」を確かめるようにしています。一括でできるかどうかは、ほとんどこの2つで決まるからです。

この記事のポイント

  • 同じ不動産の1番・2番の抵当権は、抵当権者が同じで、抹消の原因とその日付が同じなら、1回の申請でまとめて抹消できます(不動産登記規則35条9号)。
  • 抵当権者が違う場合(たとえば銀行と保証会社、銀行と住宅金融支援機構)は、原因と日付が同じでも、別々に申請します。
  • 土地と建物など、同じ借入れを担保する「共同抵当」は、所有者が違っていてもまとめて抹消できます(同条10号)。登録免許税は、抵当権の数ではなく「不動産1個につき1,000円」です。
目次

一括申請できるかどうかの早見表

結論を先にまとめると、次のとおりです。

ケース一括申請根拠
同じ不動産の1番・2番(抵当権者が同じ、原因と日付も同じ)できる規則35条9号
同じ不動産の1番・2番(抵当権者が違う)できない実務の取扱い(先例)
同じ不動産の1番・2番(抵当権者は同じだが、抹消の日付が違う)できない規則35条9号
土地と建物の共同抵当(同じ借入れを担保)できる規則35条10号
共同抵当で、土地と建物の所有者が違うできる(所有者全員が申請人)規則35条10号
抵当権と根抵当権(権利者が同じ、原因と日付も同じ)できる規則35条9号・実務の取扱い(先例)
不動産の管轄の法務局が違うできない不動産登記令4条ただし書・規則35条10号

迷ったときは、別々に申請すれば必ず受け付けてもらえます。分けた場合のデメリットは、登録免許税と手間が少し増えることだけです。

法律上の根拠

原則は「不動産1個・登記1件ごと」

登記の申請は、原則として、登記の目的と原因に応じて、不動産1個ごとに行います(不動産登記令4条本文)。

ただし、同じ法務局の管轄にある複数の不動産について、登記の目的・原因・その日付がすべて同じ場合や、法務省令(不動産登記規則35条)で定める場合は、一つの申請情報(申請書)でまとめて申請できます(同条ただし書)。

抵当権の抹消でよく使うのは、規則35条の9号と10号です。

規則35条9号:同じ不動産に、抵当権がいくつもある場合

「同一の不動産について申請する二以上の権利に関する登記(中略)の登記の目的並びに登記原因及びその日付が同一であるとき」

同じ不動産の1番抵当権と2番抵当権を、まとめて抹消するときの根拠です。担保している借入れが別々でもかまいませんが、抹消の原因(弁済・解除など)と、その日付が同じであることが必要です。

規則35条10号:複数の不動産にまたがる共同抵当の場合

「同一の登記所の管轄区域内にある二以上の不動産について申請する登記が、同一の債権を担保する先取特権、質権又は抵当権(中略)に関する登記であって、登記の目的が同一であるとき」

土地と建物のように、一つの借入れを複数の不動産で担保している抵当権を「共同抵当(きょうどうていとう)」といいます。これをまとめて抹消するときの根拠です。

条文には書かれていない「当事者が同じ」という要件

法務局の実務では、一括申請をするには、申請する人(抵当権者と所有者)が同じであることも求められています。ただし、10号の共同抵当については、所有者が違っていても一括申請が認められています(後で説明します)。

ケース別の考え方

1番と2番の抵当権者が同じ場合

抵当権者が同じで、抹消の原因と日付が同じであれば、まとめて抹消できます(規則35条9号)。順位が1番・2番と違っていても、担保している借入れが別々でも問題ありません。

注意したいのは「日付」です。原因が「弁済」なら、日付は完済した日です。たとえば1番を9月1日、2番を9月20日に完済した場合は、同じ「弁済」でも日付が違うので、まとめられません。

一方、原因が「解除」の場合は、金融機関が解除した日が日付になり、完済日とは一致しないことがあります。金融機関から届く「解除証書」などの日付を確認してください。

1番と2番で抵当権者が違う場合

抵当権者が違う場合は、原因と日付が同じでも、まとめて抹消することはできません。それぞれの抵当権者ごとに、別の申請になります。

よくあるのは、次のようなケースです。

  • 1番が住宅金融支援機構、2番が銀行
  • 1番が銀行、2番がその銀行の保証会社(住宅ローンでは、抵当権者が銀行ではなく保証会社になっていることがよくあります)

窓口の支店が同じでも、登記簿上の抵当権者が違えば「別の抵当権者」です。登記簿の「権利者その他の事項」欄で、抵当権者の名前を確かめてください。

土地と建物の共同抵当の場合

同じ借入れを担保する共同抵当であれば、土地と建物をまとめて抹消できます(規則35条10号)。土地が何筆かに分かれていても同じです。

共同抵当かどうかは、登記簿の抵当権の欄に「共同担保 目録(あ)第〇〇号」といった記載があるかで確認できます。

所有者が異なる場合

共同抵当であれば、土地は父、建物は子というように、不動産ごとに所有者が違っていても、まとめて抹消できます(規則35条10号)。抵当権を設定したあとで、一部の不動産だけ名義が変わった場合も同じです。

この場合、所有者全員が、登記権利者(登記によって利益を受ける側)として申請人になります。

反対に、別々の借入れのために設定された抵当権で、所有者も違う場合は、まとめることはできません。

抵当権と根抵当権を一緒に抹消する場合

同じ不動産に、同じ金融機関の抵当権と根抵当権(ねていとうけん)があり、抹消の原因と日付が同じであれば、一つの申請でまとめて抹消できるとされています。

共同根抵当権の場合

根抵当権を複数の不動産に設定するときに、「共同担保である」旨の登記をしたものを共同根抵当権といいます(民法398条の16)。これは同じ債権を担保するものとして扱われるので、普通の共同抵当と同じく、規則35条10号でまとめて抹消できます。

一方、共同担保の登記をしていない根抵当権は、不動産ごとに独立した別の根抵当権です(民法398条の18)。この場合、所有者が違う不動産の根抵当権を、まとめて抹消することはできないと考えられます。

共同抵当で、不動産ごとに原因や日付が違う場合

規則35条10号は、9号と違い、条文上は「原因と日付が同じ」ことを求めていません。ただ、共同抵当は、完済すれば土地も建物も同じ日に消えるので、ふつうは問題になりません。

一部の不動産だけ先に解除してもらった場合など、原因や日付が違うときは、別々に申請するか、事前に法務局へ確認するのが安全です。

根抵当権は「完済したら消える」とは限りません

普通の抵当権は、借入れを完済すると、その時点で消滅します。

一方、根抵当権は、一定の範囲の取引から生じる債権を、極度額(きょくどがく、担保の上限額)まで担保するしくみです(民法398条の2)。元本が確定する前であれば、その時点の借入れを全部返しても、根抵当権は当然には消えません。

そのため、根抵当権を抹消するときは、金融機関に「解除」してもらうのが一般的です。根抵当権が付いている場合は、完済したことだけでなく、金融機関から解除証書などの書類が届いているかを確かめてください。

登録免許税は「不動産1個につき1,000円」

抵当権抹消の登録免許税は、不動産1個につき1,000円です(登録免許税法別表第一・一(十五))。抵当権の数ではなく、不動産の数で計算します。同じ申請で20個を超える不動産を抹消する場合は、1件につき2万円です。

たとえば、土地1筆と建物1棟の両方に、同じ抵当権者の1番・2番の抵当権がある場合は、次のようになります。

申請のしかた登録免許税
一括申請(1件)2,000円(不動産2個×1,000円)
別々に申請(2件)4,000円(2,000円×2件)

一括申請にすると、税金が安くなるだけでなく、申請書の作成も1回で済みます。

抹消の前に確かめておきたいこと

所有者の住所・氏名が変わっていないか

登記簿の所有者の住所や氏名が、今の住所・氏名と違う場合は、抵当権を抹消する前に、住所・氏名の変更登記が必要です。

2026年4月1日から、住所等の変更登記は義務になりました。住所や氏名が変わった日から2年以内に申請が必要で、2026年3月31日以前に変わった場合の期限は2028年3月31日です。正当な理由なく申請しないと、5万円以下の過料の対象になります。抵当権の抹消は、住所変更をまとめて済ませるよい機会です。

抵当権者の金融機関が合併していないか

抵当権が消える前に、抵当権者の金融機関が合併していた場合は、原則として、先に合併による抵当権の移転登記をしてから抹消します。

抵当権が消えた後に合併した場合は、移転登記をしないで、合併後の金融機関と一緒に抹消を申請できます。

共有名義の場合

不動産が共有名義の場合、抵当権の抹消は、共有者の1人から申請することもできます。

よくある質問

抵当権抹消の一括申請ができる要件は何ですか?

同じ不動産の複数の抵当権なら、①抵当権者(と所有者)が同じ、②抹消の原因と日付が同じ、の2つです(規則35条9号)。土地と建物の共同抵当なら、同じ借入れを担保していて、同じ法務局の管轄であればまとめられます(同条10号)。

1番と2番の抵当権を、1回の申請で抹消できますか?

抵当権者が同じで、抹消の原因と日付が同じであればできます。登録免許税は不動産1個につき1,000円のままです。

1番が銀行、2番が保証会社の場合はどうなりますか?

抵当権者が違うので、まとめることはできません。それぞれ別に申請します。

土地と建物の所有者が違っても、まとめて抹消できますか?

同じ借入れを担保する共同抵当であれば、できます。所有者全員が申請人になります。

根抵当権と抵当権を一緒に抹消できますか?

同じ金融機関のもので、抹消の原因と日付が同じであれば、まとめて抹消できるとされています。根抵当権は、完済しただけでは当然には消えないので、金融機関の解除の書類があるかも確認してください。

まとめると、費用はどれくらい変わりますか?

土地と建物に1番・2番がある場合、一括なら2,000円、別々なら4,000円です。

まとめ

抵当権の抹消は、原則として不動産1個・登記1件ごとに申請しますが、同じ不動産の複数の抵当権は規則35条9号、土地と建物の共同抵当は10号の要件を満たせば、まとめて申請できます。

判断のポイントは、「抵当権者が同じか」「抹消の原因と日付が同じか」「同じ借入れを担保する共同抵当か」の3つです。登記簿と、金融機関から届いた書類を見比べれば、多くの場合はご自身でも確かめられます。

一括でできるか迷ったときは、無理にまとめず、分けて申請することをおすすめしています。費用の差は数千円ですが、補正や取下げになると、その何倍も手間がかかるからです。

シアエスト司法書士・行政書士事務所は、阪急西宮北口駅から徒歩3分。西宮市を中心に、芦屋・宝塚・尼崎・神戸など阪神間で、抵当権抹消や住所変更などの不動産登記を承っています(TEL 0798-31-5930)。

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→ 不動産の登記・名義変更のご案内

(参考)

代表司法書士・行政書士 今井 康介

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