相続手続きが「多すぎて辛い・進まない」…。1日15分で頭を整理する「3つのノート術」【司法書士が解説】

葬儀を終えられ、本来であれば、故人様との思い出を振り返りながら、静かに過ごされたい時期かと思います。

けれど、現実はなかなか、それを許してくれないものです。 役所の手続き、年金、保険、銀行……。悲しみが癒えないうちに、山のような書類と向き合わなければならない。これは本当に、酷なことだと思います。

私の事務所にご相談に来られる方の中にも、 「頭では分かっているのに、なぜか体が動かないんです」 「何から手を付ければいいのか、考えるだけで苦しくなってしまって……」 と、ご自身のことを責めてしまっている方が少なくありません。

もし今、これを読んでいるあなたも同じように感じているとしたら……どうか、ご自身を「ダメだ」なんて思わないでください。 それは決して能力不足などではなく、あまりの重圧に心が悲鳴を上げている、ごく自然な反応だと私は思います。

私たちが実務を行う中でも、複雑な案件では冷静さを保つために「思考を整理する技術」を使うことがあります。 今日はその中から、どなたでもすぐに実践できて、張り詰めた心がふっと軽くなる「ジャーナリング」という手法をご紹介します。

名前は少し難しそうですが、やることはシンプルです。1日15分、紙とペンを用意するだけで、絡まった思考が驚くほど整理されます。

目次

そもそも「ジャーナリング」とは?

「ジャーナリング」なんて聞くと、少し難しそうな横文字に聞こえますよね。 でも、やることはとてもシンプルです。「頭に浮かんでいることや感情を、そのまま紙に書き出す」。ただこれだけのことなんです。

実はこれ、最近では「書く瞑想(めいそう)」とも呼ばれていて、Googleなどの大手企業でも研修に取り入れられているほど、信頼されている方法です。

単なる日記とは違い、「臨床心理学」の世界でも効果が実証されている、科学的な心のケア技術でもあります。 「書くだけで本当に楽になるの?」と思われるかもしれませんが、エビデンス(科学的な根拠)もしっかりとしている方法ですので、安心して取り組んでみてください。

今回は、特に「相続の手続き」で心が疲れてしまった時に効果的な、3つの書き方をご紹介します。

1. 不安を吐き出す「エクスプレッシブ・ライティング」

「何が不安なのか自分でも分からないけど、とにかく怖い、しんどい……」 そんなふうに、漠然としたモヤモヤで押しつぶされそうな時にこそ、試していただきたい手法です。

どうやって書くの?

やり方はとても簡単です。 ノートを1冊用意して、今心の中にある「不安」「不満」「辛さ」を、1日15分間、手を止めずに書き殴ってください。

  • 「銀行の手続き、面倒くさくてやりたくない」
  • 「なんで私ばっかりやらなきゃいけないの? お兄ちゃんはずるい」
  • 「もし借金が見つかったらどうしよう……」

誰かに見せるものではありませんから、言葉を選ぶ必要はありません。 汚い言葉でも、誰にも言えないような本音でも構いません。心の中のドロドロとしたものを、すべて紙の上に吐き出してしまうイメージです。

心理学的な根拠(エビデンス)

これは心理学用語で「エクスプレッシブ・ライティング(筆記開示)」と呼ばれる手法です。

オーストラリアのニューサウスウェールズ大学などの研究によると、この「感情の書き出し」をたった4日間続けるだけで、メンタルヘルスが改善し、ストレスが大幅に軽減されることが分かっています。 「書く」という行為が、脳のデトックスになるんですね。

司法書士からのアドバイス

書き出すことの最大のメリットは、「漠然とした不安」が「具体的な課題」に変わることです。

頭の中だけで考えていると、「全部が不安」で押しつぶされそうになりますが、紙に書くことで、「ああ、私は『借金があるかどうか』が一番心配なんだな」と、冷静に気づくことができます。

悩みの正体さえ分かれば、あとは私たち専門家が解決策をご提示できます。 「見えないお化け」は怖いですが、正体が見えれば対処法はあるものです。それだけで、心の重荷はずっと軽くなるはずですよ。

2. 気が重い作業を仕分ける「行動活性化タスクリスト」

「役所に行かなきゃ」「書類を集めなきゃ」 頭では分かっているのに、どうしても体が動かず、ズルズルと先延ばしにしてしまう……。

そんな自分を「私はなんてダメなんだ」と責めていませんか? でも、それはあなたの意志が弱いからではありません。そんな時に役立つ、行動心理学を応用した「リスト作り」をご紹介します。

どうやって書くの?

まずは、今抱えている「やらなきゃいけない手続き(タスク)」を書き出してみてください。 そして、その横に次の2つの基準で、「10点満点の点数」をつけてみるのです。

  1. やりがい(意義): これをやると将来の自分は助かるか? 大事なことか?
  2. 快楽(楽しさ): やっていて楽しいか? ワクワクするか?

点数をつけると「動けない理由」が見えてくる

実際に点数をつけてみると、ある事実に気づくはずです。 相続の手続きのほとんどは、次のような点数になりませんか?

  • 戸籍の収集 👉 やりがい:10点(絶対に必要)/ 快楽:1点(面倒で気が重い)
  • 銀行口座の解約 👉 やりがい:10点(お金のために必要)/ 快楽:0点(待たされるし辛い)

心理学的に、人間の脳は「やりがいはあるけれど、快楽(楽しさ)が低い行動」ばかりを抱え込むと、強いストレスを感じます。 その結果、防衛本能として「先延ばし」という選択をしてしまうのです。

つまり、あなたが動けないのは、あなたが怠け者だからではありません。 脳の仕組み上、「できなくて当たり前」の状態になっているだけなのです。

司法書士からのアドバイス

ここで、一つ提案させてください。 書き出してみて、「快楽」が著しく低いタスク(=苦痛な作業)は、無理してご自身でやるべきではありません。

点数が低い作業こそ、私たちのような専門家に任せてしまってください。 それは決して「手抜き」ではありません。ご自身の心を守り、ご家族と故人を偲ぶ大切な時間を守るための、「賢い選択」だと私は思います。

3. 心の平穏を取り戻す「感謝日記」

相続の手続きが進むにつれて、ご親族に対して「どうして分かってくれないんだろう」「昔からそうだ」といった、割り切れない感情が湧いてくることはありませんか? お金や財産のこと以上に、過去の記憶や人間関係のストレスで、心がざわついて眠れない夜があるかもしれません。

そんな夜にこそ、試していただきたいことがあります。

どうやって書くの?

夜、お布団に入る前に、今日一日を振り返って「感謝できること」を3つだけ、ノートに書いてみてください。

  • 「今日はご飯が美味しく炊けた」
  • 「移動中に信号に引っかからなかった」
  • 「遠い親戚が気遣いの電話をくれた」

そんな、本当にささやかなことで構いません。「ありがとう」と思える瞬間を、少しだけ探してみてください。

心理学的な根拠(エビデンス)

これは「グラティチュード・ジャーナル(感謝日記)」と呼ばれる心理療法の一つです。

サンパウロ大学などの研究によると、これを続けるだけで幸福度が10%以上も高まり、その効果は半年近くも続くことが示唆されています。 人間には、どうしても不安や欠点ばかりに目が向いてしまう「ネガティブ・バイアス」という脳の癖があるのですが、書くことでそれを修正し、心を穏やかに保つ効果があるんですね。

司法書士からのアドバイス

実務の現場にいると痛感するのですが、相続トラブル(いわゆる争族)の本当の原因は、法律の解釈よりも、こうした「感情のもつれ」にあることがほとんどです。

心が波立っている状態では、どうしても売り言葉に買い言葉になり、冷静な話し合いができません。 無理に相手を好きになる必要はありません。ただ、ご自身の心を落ち着けて、「あるもの(感謝)」に目を向けること。 それが、結果としてご自身にとって一番納得のいく、後悔のない解決(遺産分割)につながる近道になります。

まとめ:心が「しんどい」と声を上げたら、頼ってください

今回ご紹介した3つの方法は、毎日頑張って続ける必要はありません。 ふと心が疲れた時に、深呼吸をするような気持ちで試してみてください。

  1. モヤモヤしたら「書き出してみる」
  2. やる気が出ないなら「点数をつけてみる」
  3. イライラしたら「感謝を探してみる」

もし、ノートに書き出してみて、「これは自分には荷が重すぎるな」「今の自分には、これ以上抱えきれないな」と感じたら、どうか無理をなさらないでください。

それは決して、あなたの責任でも、能力不足でもありません。 「誰かに頼っていいんだ」という、ご自身の心からのサインなのだと思います。

私たち司法書士の仕事は、その「重たい荷物」を、あなたに代わって背負うことです。 書き出したそのノートの内容、特に「点数が低くて辛い手続き」については、私たちがすべて引き受けます。

ご自身とご家族の穏やかな日常を取り戻すために、私たちを頼っていただければと思います。

代表司法書士・行政書士 今井 康介

西宮・芦屋・宝塚・尼崎エリアで司法書士・行政書士をお探しなら、シアエスト司法書士・行政書士事務所へお任せください。

相続・遺言・成年後見から不動産登記まで、幅広く対応いたします。 お客様の想いに寄り添い、わかりやすく丁寧なサポートをご提供します。

よかったらシェアしてください!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次