相続の電話が怖い…「着信音で動悸がする」あなたへ。司法書士が教える「心の守り方」

こんにちは。シアエスト司法書士・行政書士事務所の今井です。

相続や親族間の話し合いにおいて、感情的な対立が生まれてしまうことは少なくありません。

「兄弟からの電話の着信音を聞くだけで、動悸がする」
「遺産分割のことを考えると、夜も眠れない」

このようなご相談を受けることがあります。

まずお伝えしたいのは、これは決してあなたが弱いからではないということです。 家族や親族といった近しい関係だからこそ、言葉の刃は深く刺さり、心は自分を守ろうとして防衛反応を起こしているのです。

本日は、法律家としての経験に加え、心理学の知見にも基づいた「ご家庭でできる心のケア」と、司法書士として提供できる「法的な整理による安心」の両面から、あなたが平穏な日常を取り戻すためのヒントをお伝えします。

目次

1. なぜ、親族トラブルはここまで心を蝕むのか?(心理メカニズム)

親族間の問題は、他人とのトラブル以上に心に深く突き刺さり、解決した後も「嫌な記憶」として残りやすい特徴があります。 なぜこれほどまでに苦しいのか。心理学の視点から見ると、主に次の3つの理由が挙げられます。

① 条件づけ(着信音への恐怖)

「電話が鳴る」=「責められる・怒鳴られる」という嫌な経験が重なると、脳がそのパターンを学習してしまいます。 その結果、まだ話してもいないのに、着信音や相手の名前を見ただけで心臓がドキドキしたり、パニックになったりする拒絶反応(条件反射)が起きるようになります。

② 注意の過敏化(疑心暗鬼)

「また何か言われるのではないか」と、脳の警戒レベルが常にMAXの状態になります。 そのため、親族の何気ない一言を悪く受け取ってしまったり、郵便受けに手紙が届く「コト」という音にまでビクッとしたりと、過敏に反応して心が休まる暇がなくなってしまいます。

③ 「正しさが報われない」という苦しみ(公正世界仮説の裏切り)

「親の介護を何年も必死に続けてきた自分が、なぜ何もしてこなかった兄弟から『遺産を隠している』などと泥棒扱いされなければならないのか?」

相続の現場で最も心を深くえぐるのが、このやり場のない「理不尽さ」ではないでしょうか。

私たちは無意識のうちに、「正しい行いをすれば報われる」「悪いことをすれば罰が当たる」という世界のルールを信じて生きています。心理学ではこれを「公正世界仮説」と呼びますが、この信念があるからこそ、人は努力し、誠実に生きることができるのです。

しかし、相続トラブルという現実は、時にこの心の支えを容赦なく打ち砕きます。 献身的に尽くした人が報われず、逆に義務を果たさなかった人が権利だけを声高に主張し、それがまかり通ってしまう。こうした「善意が踏みにじられ、身勝手さが得をする」という現実を目の当たりにすると、単なる怒りを超えて、「自分の人生や人格そのものを否定された」ような強烈な絶望感に襲われてしまいます。


これらは、あなたの心が限界を訴えている自然な「SOS」です。 どうか「自分が弱いからだ」と責めないでください。無理に耐えるのではなく、適切な手当てが必要です。

2. まず最初に:「感情の棚卸し」をしましょう

具体的な対処法を試す前に、ご自身の心が「いま、何に一番苦しんでいるのか」を知ることから始めましょう。 心の中がモヤモヤとしたままだと、対策も空回りしてしまいます。

以下の4つのうち、今のあなたのお気持ちに近いものはどれでしょうか?

  • 【恐怖】 相手の声を聞くのが怖い、着信画面を見るだけで手が震える、ポストを開けるのが怖い。
  • 【怒り】 理不尽な要求をする相手がどうしても許せない。「なぜあんなことが言えるのか」と腹が立つ。
  • 【自責(自分を責める)】 「遺産を主張する自分は浅ましいのではないか」「親族と争うなんて親不孝ではないか」と罪悪感がある。
  • 【反すう(繰り返し思い出す)】 言われた嫌な言葉が、寝る前やふとした瞬間に何度も頭の中で再生され、そのたびに嫌な気持ちになる。

いかがでしたか? これらは混ざり合っていることも多いですが、「自分はいま、怒っているんだな」「怖がっているんだな」と感情に名前をつけてあげる(特定する)ことが、解決への確実な第一歩になります。

次項からは、それぞれの感情に合った「心の処方箋」をご紹介します。

3. 親族の悩みに効く「心の処方箋」(心理療法の実践)

ご自身の心の状態が把握できたら、次は具体的なケアの方法です。 どれもご自宅ですぐに実践できるものですので、無理のない範囲で試してみてください。

【基本】まずは「生活リズム」から

心理テクニックを試す前に、確認させてください。睡眠と食事はとれていますか?

不安や恐怖は、脳が疲れているときに増幅します。「まずは寝る」「温かいものを食べる」。実はこれが最強の治療法です。 もし、どうしても眠れない日が続くようであれば、無理をせず心療内科等の専門機関を頼ってください。薬の力を借りて脳を休めることは、決して恥ずかしいことではありません。

① 恐怖で震えが止まらない時(症状:パニック、着信音への恐怖)

過去の嫌な場面がフラッシュバックしたり、怖くてたまらなくなった際、心を「今、ここにある安全な場所」に戻す方法です。

処方箋:グラウンディング(地に足をつける)

実践方法(五感を使う5-4-3-2-1法)

これは、確認する感覚を「5つ」から「1つ」へとカウントダウン(数を減らし)していく手順から名付けられました。 今いる部屋の中で、以下の順番に感覚を探してみてください。

  • 5つ探す(視覚): 部屋にある「赤いもの(または四角いもの)」を目で5つ探す。
  • 4つ感じる(触覚): お尻で座っている椅子の硬さ、足の裏の床の感覚、服の肌触りなど、体に触れているものを4つ確かめる。
  • 3つ聞く(聴覚): 壁にかかった時計の音、外の車の音、空調の音など、聞こえてくる音を3つ拾う。
  • 2つ嗅ぐ(嗅覚): 飲み物の香り、部屋の匂い、あるいは自分の服の匂いなど、鼻で感じる香りを2つ探す。
  • 1つ味わう(味覚): 口の中の感覚、飲み物の後味など、舌で感じる味覚を1つ意識する。

こうして数字を数えながら感覚に集中することで、脳に「今は電話を切っている。ここは安全だ」と教え込み、暴走した感情を落ち着かせます。

② 自分を責めてしまう時(症状:自責の念、自己嫌悪)

相手から「守銭奴」「親不孝者」などと罵られると、正当な権利を主張しているだけなのに「自分が悪いのかな」と思い込んでしまうことがあります。

処方箋:セルフ・コンパッション(自分への慈しみ)

実践方法(親友への言葉)

少しだけ想像力を働かせてみてください。

  1. 「もし、あなたの大切な親友が、今のあなたと全く同じ立場にいたら、なんと声をかけますか?」
  2. きっと、「法律で認められた権利なんだから、主張して当然だよ」「あなたは十分我慢したよ」と優しく言うはずです。決して「お前が悪い」とは言わないでしょう。
  3. その優しい言葉を、親友ではなく、鏡に映るあなた自身に向けてかけてあげてください。

自分自身を「大切な友人」のように扱うことで、傷ついた心をケアする実証された心理テクニックです。

③ 怒りが収まらない時(症状:怒り、不公平感)

「許せない!」という強い怒りは、無理に抑え込む必要はありません。ただ、それを直接相手にぶつけてしまうと、売り言葉に買い言葉で事態が悪化するだけです。別の安全な方法でエネルギーを使い切りましょう。

処方箋:怒りの代替行動(エネルギーの発散と昇華)

実践方法

怒りのパワーを「物理的な発散」と「未来への備え」に変えます。

  • 身体を動かす(発散): 早歩きで散歩をする、誰もいない部屋でクッションや布団を思い切り叩くなど、体を動かして物理的にエネルギーを放出します。
  • ノートに記録する(昇華): 言われた言葉や起きた事実を、ノートに書き殴ってください。 実はこれ、単なるストレス発散ではありません。後に私たち専門家に相談する際、「正確な証拠資料(メモ)」として非常に役に立ちます。
    「この怒りは、将来自分を守る最強の盾になる」と考え、悔しい気持ちを詳細に記録に残しましょう。

④ 嫌な記憶が頭から離れない時(症状:反すう思考)

一日中、四六時中、嫌な親族の顔や言葉が頭をよぎってしまう。そんな状態への対策です。

処方箋:スケジュールド・ワリー(悩み時間の予約)

実践方法

あえて「悩む時間」をスケジュールに組み込み、それ以外は脳を休ませる技術です。

  1. 時間を決める: 「夜の20時から30分間だけは、書類の整理をして思いっきり悩む」とあらかじめ決めます。
  2. 棚上げする: それ以外の時間にふと不安がよぎったら、「今はその時間じゃない。20時になったらたっぷり悩もう」と心の中で唱え、その思考を後回しにします。

常に悩み続けてしまう脳にメリハリをつけることで、疲弊を防ぎ、心の体力を温存します。

⑤ 解決まで時間がかかる時(症状:長期化のストレス)

「このトラブルが解決しない限り、私は幸せになれない」「心が休まる日はない」と思い詰めていませんか? 実は、そんなことはありません。トラブルの解決を待たなくても、幸せを感じることは可能です。

処方箋:ACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)

実践方法(荷物を背負ったまま歩く)

トラブルを「重い荷物」に例えて、考え方を少し切り替えます。

  1. 受け入れる: 「トラブルという重い荷物は、まだ背中にあるままでいい」と、無理に下ろそうとせず、今の状況を一度受け入れます。
  2. 行動する: 「荷物を下ろせてはいなくても、その荷物を背負ったままで『お孫さんと遊ぶ』『美味しいお茶を飲む』という行動はできる」と考えます。
  3. 切り離す: 「嫌な気持ち(感情)」と「日々の楽しみ(行動)」を切り離します。

問題が解決するその日まで、ずっと苦しみ続ける必要はありません。たとえ背中に荷物があっても、あなたの人生を楽しむ時間は、今すぐ取り戻すことができます。

⑥ 将来への不安で胸が苦しい時(症状:予期不安)

「もし調停になったらどうしよう…」「家に押しかけてきたら…」といった、まだ起きていない未来のことで頭がいっぱいになってしまう。そんな苦しい時間から、心を休める練習です。

処方箋:マインドフルネス(呼吸による瞑想)

実践方法(「今」に戻る呼吸の練習)

特別な道具はいりません。脳を「未来の不安」から切り離し、「今」に戻すためのトレーニングです。

  1. 姿勢を整える: 椅子に深く腰掛け、背筋を軽く伸ばします。手は太ももの上に置き、リラックスします。目は軽く閉じるか、薄目を開けてぼんやりと床の一点を見つめます。
  2. 呼吸に集中する: 自分の「呼吸」だけに意識を向けます。無理に深呼吸をする必要はありません。 自然なリズムで、「鼻を空気が通る感覚」や「息をするたびにお腹が膨らんだり凹んだりする動き」をじっくりと感じ取ります。心の中で「吸って…吐いて…」と実況しても構いません。
  3. 雑念に気づく(ここが重要): 途中で「明日のこと」や「不安な気持ち」などの雑念が必ず浮かんできます。でも、それは失敗ではありません。 人間の脳は考えるようにできているからです。雑念が浮かんだこと自体を責めないでください。
  4. 優しく戻る: 考え事をしている自分に気づいたら、「あ、また心配事をしていたな」と、ただ客観的に気づくだけで十分です。 そして、よそ見をしてしまった子供の手を引くように、優しく、何度でも意識を呼吸に戻してあげてください。「雑念に気づいて、戻す」。この繰り返こそが、心の筋トレになります。

これを1日3分〜5分続けるだけで、心が「未来の不安」から離れ、「今、ここ」にある静かな時間を取り戻せます。

4. 司法書士だからできる「法的な整理」(環境調整)

ここまで、心理療法で「内面の心」を守る方法をお伝えしました。 しかし、現実の問題(外側の問題)が解決しない限り、不安の種は残ってしまいます。そこで大切なのが、専門家を活用して現実を「整理」することです。

※すでに相手方と激しい争いになっている場合(代理交渉が必要な場合)は弁護士の分野となりますが、当事務所では司法書士として、以下のようなサポートであなたの「心の負担」を減らすお手伝いをしています。

① 法的な交通整理(現状の「見える化」)

「相手の言っていることは、法律的に本当に正しいの?」 「そもそも、自分にはどんな権利があるの?」 親族トラブルの恐怖は、「分からないこと」への不安(お化け屋敷の暗闇のような怖さ)から来ています。 法律の光を当てて「ここは相手が正しい」「ここはあなたの権利」と明確にするだけで、漠然とした恐怖は消え、単なる「対処すべき課題」へと変わります。

② 書類作成による徹底サポート

遺産分割協議書の作成や、話し合いがまとまらず家庭裁判所の調停(話し合い)を利用する場合の「申立書作成」などを代行します。 ただでさえ精神的に辛いときに、慣れない法律用語を使って難しい書類を作るのは大変なストレスです。 面倒な手続きを私たちが引き受けることで、あなたは作成のストレスから解放され、正確に手続きを進めることができます。

③ 適切な専門家への橋渡し(道案内)

お話をじっくり伺い、もし相手方との代理交渉や裁判が必要な「紛争案件」であると判断した場合は、信頼できる提携弁護士をご紹介します。 「誰に相談していいか分からない」「たらい回しにされたらどうしよう」という、法律の迷子状態を解消します。入り口として、まずは当事務所を頼ってください。

まとめ:一人で抱え込まず、専門知識を味方にしてください

親族間のトラブルは、当事者だけで解決しようとすると、どうしても過去の感情がぶつかり合い、解決が遠のいてしまいがちです。 どうか、すべてを一人で背負おうとしないでください。以下のように役割を分けることで、あなたの負担は確実に軽くなります。

  • 心のケア ご自身での心理療法の実践、心療内科の受診、あるいはChatGPT(AI)への壁打ち相談などで、気持ちを吐き出す場を持つこと。
  • 権利の整理・書類作成 司法書士による法的な交通整理と、面倒な手続きの代行。
  • 紛争の解決 話し合いが困難な場合は、交渉のプロである弁護士へ連携。

これらを適切に使い分けることで、何よりも大切なあなたの「心」を守り抜きましょう。

「こんなことを相談していいのかな?」と迷う必要はありません。 まずはお話を聞かせてください。あなたが安心して夜眠れる平穏な日常を取り戻せるよう、法律の専門家としてしっかりとサポートいたします。

代表司法書士・行政書士 今井 康介

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