こんにちは。 シアエスト司法書士・行政書士事務所の代表、今井康介です。
日頃、相続や成年後見、生前対策のご相談をお受けしていると、お客様との会話は単なる「手続きの話」だけでは終わりません。 ふとした瞬間に、
といった、深い迷いや不安を打ち明けてくださることがあります。
一見すると、法律家である私には関係のない悩みのように思えるかもしれません。 しかし、数多くの現場に立ち会ってきた私は、こう確信しています。
実は、遺言や後見といった法的な「終活」は、単なる事務手続きではありません。 これまでの人生を振り返り、ご自身の想いを整理することで、「生きる意味」を再確認する作業そのものなのです。
今回は、心理学の知見と司法書士としての実務経験を交えながら、幸福な老後と法的な備えの意外な関係についてお話ししたいと思います。
1. 心理学で見る「人生の意味」と「幸福」
「人生の意味」と聞くと、哲学的な難問のように思えるかもしれません。 しかし、近年の心理学では「Meaning in Life(人生の意味)」という分野で科学的に研究されており、「人生に意味がある」と感じている人は、幸福度が高く、心身ともに健康であることが明らかになっています。
世界が注目する日本の「Ikigai(生きがい)」
この分野で、いま世界中から注目されているのが、日本古来の概念である「Ikigai(生きがい)」です。
ハンセン病患者のケアに生涯を捧げた精神科医・神谷美恵子は、生きがいを「大きな目的」ではなく、「日々の小さな喜び」や「誰かの役に立っているという役割意識」の積み重ねだと説きました。
これは、現代の心理学の研究結果とも一致しています。
幸せの正体は「他者とのつながり」
日本の国土技術政策総合研究所の研究でも、興味深いデータがあります。 それは、「家族や地域社会などとのつながりが薄れると、人の幸福感は著しく低下する」というものです。
きに、最も強く生きる意味を見出します。
つまり、人生の意味とは、自分ひとりの頭の中でひねり出す「答え」ではなく、他者との関わり合いの中で生まれる「感覚」なのです。
2. 司法書士が見た「意味」を見つけた人たちの共通点
心理学の研究結果は、私が日々の実務現場で感じていることと驚くほど一致しています。
遺言書の作成や、家族信託の契約を無事に終えられたお客様は、皆様一様に「憑き物が落ちたような」晴れ晴れとした表情をされます。
「これでいつお迎えが来ても大丈夫。あとは残りの人生を楽しむだけです」
「ずっと気掛かりだった子供たちのことが片付いて、本当にスッキリしました」
単なる書類作成が終わっただけで、なぜこれほどまでに安堵し、前向きになれるのでしょうか。 それは、法的な手続きを通じて、以下の2つを実現できたからだと私は考えています。
- 家族への責任(役割)を果たしたという実感
- 自分の想いを形として残せたという達成感
法的な備えを整えることは、将来の不安を消すだけの作業ではありません。 「自分は家族のためにこれをやった」という自信が生まれ、「自分の人生を肯定する作業」そのものになるのです。
3. 「生きる意味」を形にする3つの法的アプローチ
「生きる意味」というと、抽象的で雲をつかむような話に聞こえるかもしれません。 しかし、法的な備えを通じて、それを具体的な「行動」に落とし込むことができます。
ここでは、心理学的な「意味」の分類に沿って、司法書士として提案できる3つのアプローチをご紹介します。
① 遺言書(想いの継承)
遺言書は、単なる財産の分配図ではありません。 「付言事項(ふげんじこう)」というメッセージ欄を活用することで、ご自身の価値観や家族への感謝を残すことができます。
- 心理的効果: 「自分は家族を愛し、愛されていた」という関係的な意味(つながり)を再確認できます。 自分が大切にしてきた価値観を言葉にすることで、精神的なバトンを次世代に渡すことができます。
② 任意後見・死後事務(自己決定)
認知症になった後の生活や、亡くなった後の葬儀・納骨の方法を、元気なうちに自分で決めておく契約です。
- 心理的効果: 「最後まで自分らしく生き抜く」という覚悟を決めることは、個人的な意味(自己決定)の確立につながります。 誰かに迷惑をかける不安を消し、自分の人生の幕引きを自分で演出する尊厳を守ります。
③ 家族信託(次世代への貢献)
ご自身の資産を、次の世代(子や孫)のために役立てるよう、託す仕組みです。 例えば、「孫の教育資金として使ってほしい」「障がいのある子の生活を守ってほしい」といった設計が可能です。
- 心理的効果: 自分の資産が未来の誰かの役に立つという社会的・普遍的な意味(貢献)を実感できます。 「自分の人生は、次の世代の土台になった」という確信は、深い幸福感をもたらします。
4. 「生きがい」としての家族会議
心理学の研究が示すように、生きがいは「大きな目的」ではなく、「小さな役割」や「人とのつながり」の中にあります。
私が提案したいのが、法的な手続きの前段階として行う「家族会議」です。
これは、難しい法律用語を並べる場ではありません。 「これからの人生をどう過ごしたいか」「どんな不安があるか」を、家族と共有する時間です。
- つながりの再確認: 普段は離れて暮らすお子様やお孫さんと、これからのことを話す時間は、孤立感を防ぎ、「自分は家族の一員である」という実感をもたらします。
- 役割の発見: 「お父さんの経験を教えてほしい」「お母さんの味を残したい」といった会話から、家族の中での新たな役割が見つかることもあります。
法的な備え(遺言や信託)は、この家族会議で話し合われた「想い」を、形にするための手段にすぎません。 大切なのは、書類を作ることそのものではなく、その過程で生まれる「家族との対話」にあるのです。
まとめ:手続きの先に「安心」と「意味」がある
「生きる意味が分からない」という悩みは、決してネガティブなことではありません。 それは、ご自身の人生を真剣に考え、より良く生きたいと願っている証拠だからです。
生きる意味は、どこか遠くに探しに行くものではなく、日々の備えや家族との対話の中で、ふと実感するものなのかもしれません。
遺言や後見、家族信託といった法的な手続きを、単なる事務処理としてではなく、「ご自身の人生の集大成」として捉えてみてください。 そこには必ず、あなただけの「生きる意味」が隠されています。
シアエスト司法書士事務所は、法律の専門家として、そして人生の伴走者として、あなたの想いを形にするお手伝いをさせていただきます。 まずは一度、お気軽にご相談ください。



