「親の家を売りたいから成年後見を申し立てる」——よくある入り口ですが、成年後見は目的が済んでも終わりません。使う前に知っておきたいことを、まず動画でご覧ください。
成年後見は、途中でやめられない
法定後見(成年後見)は、家庭裁判所が本人の判断能力が不十分と認めて開始する制度です。いったん始まると、本人の判断能力が回復して家庭裁判所が後見開始の審判を取り消すか、本人が亡くなるまで続きます。
「実家を売る」「預金を解約する」といった当初の目的が終わっても、そこで打ち切ることはできません。後見人が辞任するには「正当な事由」と家庭裁判所の許可が必要で(民法844条)、辞任しても制度自体は続き、次の後見人が選ばれます。
後見人は家庭裁判所が選ぶ——家族とは限らない
誰を後見人にするかを決めるのは家庭裁判所です。申立ての際に候補者を挙げられますが、次のような事情があると、家族ではなく司法書士・弁護士などの専門職が選ばれる傾向があります。
- 財産が多い、内容が複雑(不動産の売却、賃貸経営、係争中の案件など)
- 親族間で意見の対立がある
- 後見人候補者と本人の間に利益相反がある
専門職が後見人になると、報酬が発生します。金額は家庭裁判所が本人の財産額や事務の内容をふまえて決定し(民法862条)、原則として本人の財産から毎年支払われます。
後見人にできること・できないこと
後見人の役割は、本人の財産を維持・管理し、本人のために使うことです。
- できる:日常の生活費・医療費・施設費の支払い、預金の管理、税金の申告、必要な契約
- 家庭裁判所の許可が必要:本人が住んでいる(住む予定の)居住用不動産の売却・賃貸・抵当権設定(民法859条の3)
- 原則できない:生前贈与、相続税対策のための資産の組み替え、家族のための支出(孫の学費・親族の生活援助など)、投資性の高い運用
「実家を売って家族で分けたい」「元気なうちに贈与して相続税を減らしたい」といった希望は、後見が始まると実現しにくくなります。
元気なうちなら、選択肢がある
任意後見契約
判断能力があるうちに、将来支援してほしい人(任意後見人)を自分で選び、依頼する内容を決めて公正証書で契約しておく制度です。誰に任せるか、何を任せるかを自分で決められる点が、法定後見と大きく違います。
家族信託(民事信託)
信頼できる家族に、財産の管理・処分を託しておく仕組みです。契約で定めた範囲で、認知症になっても不動産の売却や預金の管理ができます。「実家を売って施設費用に充てる」といった柔軟な対応が可能です。ただし身のまわりの手続き(施設契約・医療同意)は対象外で、任意後見と組み合わせるのが一般的です。
よくある質問
- 家を売る手続きが終わったら、後見をやめられますか?
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やめられません。本人の判断能力が回復するか、本人が亡くなるまで続きます。目的だけのために使う制度ではない、という点は事前に理解しておく必要があります。
- 家族が後見人になれますか?
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なれる場合もありますが、財産が多い・親族に対立があるといった事情があると専門職が選ばれます。家族が選ばれても、後見監督人(専門職)がつくことがあります。
- 専門職後見人の報酬はいくらですか?
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家庭裁判所が事案に応じて決定します。管理する財産の額が大きいほど、また特別な事務(不動産売却など)があるほど高くなる傾向があります。目安は家庭裁判所の運用によります。
- すでに親の判断能力が低下しています。任意後見や家族信託はできますか?
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どちらも契約時に本人の判断能力が必要です。難しい場合は法定後見を利用することになります。「少し不安を感じ始めた」段階でのご相談をおすすめします。
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当事務所は阪急西宮北口駅から徒歩3分。西宮市を中心に、芦屋・宝塚・尼崎・神戸など阪神間で、任意後見・家族信託・成年後見のご相談を承っています。
「後見しかない」と決める前に、家族構成と財産に合った備えをご提案します(TEL 0798-31-5930)。
出典・参考
- 民法838条以下(後見)、843条(成年後見人の選任)、844条(後見人の辞任)、859条の3(居住用不動産の処分の許可)、862条(後見人の報酬)
- 任意後見契約に関する法律
- 信託法

