※本記事は2026年10月時点の法令にもとづいて解説しています。
「遺言書を書いたほうがいいのは分かっている。でも、どうしても気が進まない。」
「うちの子たちは仲がいいから、遺言なんて要らないと思う。」
ご家族に勧められたり、テレビや雑誌で「遺言は早めに」と聞いたりしても、いざ書こうとすると手が止まってしまう。遺言のご相談では、こうしたお気持ちを打ち明けられる方が少なくありません。
この記事では、遺言書に向き合うのが怖いと感じる理由を整理したうえで、「仲がいいから大丈夫」と思っているご家族でも書いておいたほうがよい理由、とくに書いておきたい4つの場合、今は急がなくてもよい場合をお話しします。あわせて、遺言書のほかにできる備えと、2026年に成立した民法改正で遺言が作りやすくなる点も紹介します。書くか書かないかを今すぐ決めるための記事ではありません。ご自身の場合はどうなのかを知る手がかりにしていただければと思います。
先に結論:遺言書が怖いときに知っておきたいこと
- 遺言書は義務ではありません。遺言がなければ、相続人全員の話し合い(遺産分割協議)で分け方を決めます
- 相続がこじれる原因は、家族の仲の良し悪しより、財産の中身(分けにくい自宅など)や家族の事情にあることが多いと考えられます。家庭裁判所で遺産分割が成立した事件の約4分の3は、遺産が5,000万円以下です
- 遺言で「誰にどの財産を」と決めておけば、相続人が分け方を話し合う必要がなくなります
- 子どものいないご夫婦、再婚して前の配偶者との間に子がいる方、相続人以外に財産を渡したい方、連絡の取れない相続人がいる方は、とくに検討しておきたい場合です
- 遺言書は、あとからいつでも何度でも書き直せます。遺言のほかにも、生前贈与・家族信託・死後事務委任契約・エンディングノートといった備えがあります
1. なぜ遺言書に向き合うのが「怖い」のか
遺言書を書くことに気が進まない理由は、人によってさまざまです。よく伺うのは、次のような思いです。
「人生の終わり」を意識してしまう
遺言書は、亡くなった後のことを決める書類です。書こうとすると、どうしても自分の死を考えることになります。「書いたら一区切りついてしまうようで寂しい」と感じるのは、自然なことです。
家族に順番をつけるようで心苦しい
財産の分け方を決めることは、「誰に何を渡すか」を選ぶことでもあります。「長男には家を、長女には預金を」と考えるうちに、子どもたちに差をつけているような気持ちになり、手が止まってしまう方もいます。
今の家族の関係を崩したくない
「遺言を書いたと知ったら、子どもたちがもめるのではないか」「期待させてしまうのではないか」という心配も、大きなブレーキになります。「仲がいいのだから、わざわざ書かなくても」という思いも、ここにつながっています。
書き方を間違えるのが怖い
自分で書く遺言は、形が整っていないと無効になることがあり、その不安から先延ばしになる方もいます。
こうした迷いは、ご家族を大切に思い、真剣に考えているからこそ生まれるものです。「まだ書けない自分」を責める必要はありません。そのうえで、ご自身の状況を知ったうえで「今は書かない」と決めるのと、なんとなく先延ばしにするのとでは、意味が違ってきます。次の章から、その判断の手がかりをお話しします。
2. 遺言書がないとどうなるか
遺言書がない場合、亡くなった方の財産は、法律で決まった相続人が引き継ぎます。誰が相続人になるかは、民法で次のように決まっています。
| 順番 | 相続人になる人 | 配偶者がいるときの法定相続分 |
|---|---|---|
| 配偶者 | 常に相続人 | (下の各欄のとおり) |
| 第1順位 | 子(子が亡くなっていれば孫など) | 配偶者2分の1・子2分の1 |
| 第2順位 | 父母などの直系尊属(子や孫がいないとき) | 配偶者3分の2・直系尊属3分の1 |
| 第3順位 | 兄弟姉妹(亡くなっていればその子=甥・姪) | 配偶者4分の3・兄弟姉妹4分の1 |
相続人が2人以上いるときは、相続人全員で話し合って(遺産分割協議)、誰がどの財産を引き継ぐかを決めます。法定相続分は話し合いがまとまらないときの目安で、全員が合意すれば、法定相続分と違う分け方にすることもできます。
話し合いが順調にまとまれば、遺言書がなくても大きく困ることはありません。問題は、話し合いがまとまるかどうかを、家族の仲のよさだけでは見通しにくいことです。
3. 「仲がいいから大丈夫」でも書いておきたい理由
「うちの家族は仲がいいから、遺言は要らない」というお話はよく伺います。ただ、相続の話し合いがこじれる原因は、家族の性格や関係の良し悪しより、財産の中身と家族の事情にあることが多いと考えられます。
こじれやすいのは、こんな場面
- 分けにくい財産が中心 … 自宅や実家が財産の大半で、預金が少ないと、公平に分ける方法がなかなか見つかりません
- 介護や同居をした相続人がいる … 「自分は親の面倒をみてきた」という思いと、ほかのきょうだいの受け止め方がずれることがあります(寄与分の主張)
- それぞれの配偶者が関わる … 当事者どうしは落ち着いていても、周りの意見が入ると引くに引けなくなることがあります
- 生前の援助に差がある … 「あの子だけ家を建てるときに援助してもらった」「留学の費用を出してもらった」といった不公平感(特別受益の主張)
これらは、仲のよい家族でも起こりえます。むしろ「言わなくても分かってくれるはず」という遠慮が、本音を言い出しにくくし、話し合いを難しくすることもあります。

争いになるのは「普通の家」が多い
「相続でもめるのはお金持ちの話」と思われがちですが、統計を見ると、そうとは言えません。
最高裁判所の「令和7年 司法統計年報(家事編)」によると、全国の家庭裁判所で遺産分割事件が調停成立や審判の認容で終わった8,399件のうち、遺産の価額が1,000万円以下のものが2,967件(約35%)、1,000万円を超え5,000万円以下のものが3,541件(約42%)でした。あわせて約77%、およそ4分の3が、遺産5,000万円以下の事件です。
| 遺産の価額 | 件数 | 割合(およそ) |
|---|---|---|
| 1,000万円以下 | 2,967件 | 35% |
| 1,000万円超〜5,000万円以下 | 3,541件 | 42% |
| 5,000万円超〜1億円以下 | 948件 | 11% |
| 1億円超 | 604件 | 7% |
| 算定不能・不詳 | 339件 | 4% |
(1億円超は、「5億円以下」544件と「5億円を超える」60件の合計です。)
自宅と少しの預金、という財産こそ、分けにくさから意見が分かれやすいといえます。家庭裁判所の手続きが長引きやすいことは、別の記事で取り上げています。

遺言があれば、話し合いそのものが要らなくなる
遺言で「自宅は同居している長男に、預金は長女と次男に」のように、誰にどの財産を引き継がせるかを決めておけば、相続人が分け方を話し合う必要がなくなります。もめごとの種を、ご本人が元気なうちに取り除いておけることが、遺言のいちばんの働きです。
ただし、特定の相続人に大きく偏った内容にすると、ほかの相続人が遺留分(配偶者・子・直系尊属に保障された最低限の取り分)を請求し、別の争いになることがあります。遺留分に配慮した配分にし、なぜその分け方にしたのかを「付言事項」で伝えておくと、気持ちの面のもつれを防ぎやすくなります。

4. とくに書いておきたい4つの場合
次のような場合は、遺言書がないと、残されたご家族の手続きがとても難しくなったり、ご自身の思いが届かなくなったりするおそれがあります。気が進まなくても、一度検討してみる価値がある場合です。
(1) 子どものいないご夫婦
子どもがいない場合、残された配偶者だけが相続人になるとは限りません。亡くなった方の父母などの直系尊属がご存命なら、配偶者と直系尊属が相続人になります。直系尊属がすでに亡くなっていれば、兄弟姉妹が相続人になり、兄弟姉妹が亡くなっていれば、その子(甥・姪)が相続人になります。
「長年連れ添った配偶者にすべてを残したい」と思っていても、遺言書がなければ、配偶者は義理の親や兄弟姉妹、場合によっては会ったことの少ない甥・姪と話し合いをすることになります。
遺言書で「全財産を配偶者に」と書いておけば、この話し合いをしなくても手続きを進められます。なお、兄弟姉妹(甥・姪を含みます)には遺留分がないため、相続人が配偶者と兄弟姉妹の場合は、遺言の内容がそのまま実現しやすいといわれます。父母などの直系尊属には遺留分があります。

(2) 再婚していて、前の配偶者との間に子どもがいる
前の配偶者との間のお子さんも、今の家族のお子さんと同じように相続人になります。遺産分割協議は相続人全員でする必要があるため、今のご家族が、ほとんど会ったことのない前の配偶者の子と連絡を取り、話し合うことになります。心理的にも、手続きのうえでも、大きな負担になりやすい場面です。
遺言書で分け方を決めておけば、この話し合いをしなくても手続きを進められます。ただし、前の配偶者との間の子にも遺留分があるため、その点を考えた内容にしておくことが大切です。

(3) 相続人以外の人に財産を渡したい
たとえば、介護をしてくれた長男の妻に報いたい、婚姻届を出していない内縁のパートナーに生活の支えを残したい、という場合です。長男の妻や内縁のパートナーは、法律上の相続人ではありません。遺言書がなければ、原則として財産を受け取ることはできません。
遺言書で「遺贈する」と書いておくのが、代表的な方法です。ほかに、生前贈与や、亡くなったら渡すと約束する死因贈与の契約といった方法もあります。また、介護などで尽くした親族は「特別寄与料」を請求できる場合がありますが、認められる範囲には限りがあります。


(4) 連絡の取れない相続人がいる
相続人のうち1人でも行方が分からなかったり、まったく連絡が取れなかったりすると、遺産分割協議をまとめることができません。預金の解約や不動産の名義変更では、相続人全員の実印と印鑑証明書が求められるのが一般的です。
行方の分からない相続人がいる場合は、家庭裁判所に「不在者財産管理人」を選んでもらい、その管理人が家庭裁判所の許可を得て遺産分割に加わる、といった手続きが必要になり、時間も費用もかかります。
遺言書で財産ごとに引き継ぐ人を決め、遺言執行者(遺言の内容を実現する人)も決めておけば、連絡の取れない相続人の印鑑がなくても手続きを進められる場合が多くなります。
このように、遺言書は「自分の死への準備」というより、「残された家族の手間と心配を減らすための備え」という面があります。
5. 今は急がなくてもよい場合
一方で、次のような場合は、今すぐ遺言書を書かなくても、残されたご家族が大きく困ることは少ないと考えられます。
相続人が1人だけ
たとえば、配偶者はすでに亡くなっていて、子どもが1人だけという場合です。その子がすべての財産を引き継ぐため、遺産分割協議をする相手がいません。相続人以外の方に渡したい財産がなければ、遺言書がなくても手続きは進めやすいといえます。
財産や家族の状況が、これから大きく変わりそうなとき
家を売るかどうか迷っている、子どもの暮らしが落ち着いていないなど、状況がこれから大きく変わりそうなときは、急いで書いても、すぐに書き直したくなることがあります。そうした時期は、まず財産の一覧を作るなど、下準備から始めるのも一つの方法です。
いずれの場合も、「今は急がない」は「ずっと書かなくてよい」とは限りません。体調や家族の状況が変わったときに、もう一度考え直してみてください。
6. 「書き直せる」と知ると気持ちが軽くなります
遺言書をためらう理由の一つに、「一度書いたら、もう変えられないのではないか」という思いがあります。
実際には、遺言はいつでも、何度でも撤回や変更ができます。財産の内容が変わったとき、家族の状況が変わったとき、気持ちが変わったときに、新しい遺言を作り直せばよいのです。撤回や変更は、新しい遺言の形式で行います。前に公正証書遺言で作っていても、あとから自筆証書遺言で書き直すことができ、逆も同じです。
「今の気持ちで、いったん書いてみる」「数年ごとに見直す」という考え方なら、最初の1通のハードルは少し下がるかもしれません。
気持ちを伝える「付言事項」
遺言書には、財産の分け方のほかに、家族への感謝や、その分け方にした理由を書き添えることができます。これを「付言事項(ふげんじこう)」といいます。法的な効力はありませんが、「差をつけたのではなく、こういう思いからだ」と伝えることで、受け取るご家族の気持ちがやわらぐことがあります。

手書きが負担なら、公正証書遺言や法務局の保管制度も
全文を手書きするのが負担な方や、形の不備が心配な方は、公証役場で作る公正証書遺言という方法があります。公証人が内容を聞き取って文章にし、遺言者は内容を確かめて署名します。公証役場に行けない場合は、公証人に自宅や病院、施設に来てもらうこともできます。
公正証書の手続きは2025年10月1日からデジタル化され、原本は電子データで作成・保存されるようになりました。条件がそろえば、公証役場に行かずにウェブ会議で公証人と面談して作る方法もあります。
自分で書いた遺言書を法務局に預ける「自筆証書遺言書保管制度」を使えば、なくしたり、見つけてもらえなかったりする心配を減らせます。



7. 遺言書のほかにできる4つの備え
それでも「遺言書はまだ気が進まない」という方へ。大切なのは遺言書を書くことそのものではなく、ご家族が困らないようにすること、そしてご自身が安心して過ごせることです。遺言書のほかにも、次のような備えがあります。
| 備え | どんなものか | 向いている方 |
|---|---|---|
| 生前贈与 | 元気なうちに財産を渡す | 渡す相手が決まっていて、喜ぶ顔を見たい方 |
| 家族信託 | 財産の管理を信頼できる家族に託す契約 | 認知症などで財産を動かせなくなるのが心配な方 |
| 死後事務委任契約 | 葬儀・納骨・役所の手続きなどを頼んでおく契約 | 身の回りの後始末で迷惑をかけたくない方 |
| エンディングノート | 希望や気持ちを書き留めるノート | まず気持ちの整理から始めたい方 |
生前贈与
「亡くなった後に渡す」と考えると寂しくなる方は、元気なうちに渡すという方法もあります。住宅資金や孫の教育費の援助などです。
贈与税には、1年間に受けた贈与のうち110万円までは課税されない基礎控除があります。ただし、相続や遺贈で財産を受け取る人が、亡くなる前の一定期間に受けた贈与は、相続税の計算で相続財産に加えられます。この期間は、2024年1月1日以後の贈与から段階的に延び、最終的には亡くなる前7年以内になります。また、一部のきょうだいだけに援助をすると、先ほどの特別受益の不公平感につながることもあります。贈与を考えるときは、税理士などの専門家にもご確認ください。

家族信託
遺言書が「亡くなった後のこと」を決めるものだとすれば、家族信託は「これからの財産の管理」を信頼できる家族などに託す契約です。元気なうちに家族と話し合って決めるため、「一緒にこれからのことを考える」という気持ちで取り組めるのが特徴です。信託の中で、亡くなった後に財産を誰に渡すかを決めておくこともできます。

死後事務委任契約
財産の分け方は法律どおりでよいけれど、葬儀や納骨、役所の手続き、住まいの片付けなどで家族に負担をかけたくない、という方に向いている契約です。財産の分け方には触れず、亡くなった後の事務だけを、信頼できる方に頼んでおくことができます。

エンディングノート
いちばん気軽に始められるのが、エンディングノートです。延命治療の希望、葬儀に呼んでほしい人、家族への感謝の言葉などを、自由に書き留めておけます。
ただし、エンディングノートには遺言書のような法的な効力はありません。「この家は長男に」と書いても、それだけで名義変更ができるわけではない点に気をつけてください。気持ちを整理する第一歩として使い、必要に応じて遺言書につなげていくのがおすすめです。

8. 2026年の改正で、遺言は作りやすくなる見込みです
2026年6月17日に「民法等の一部を改正する法律」(令和8年法律第45号)が成立し、6月24日に公布されました。遺言の制度にも、作る人の負担を軽くする改正が入っています。
| 改正の内容 | 施行の時期(法務省の案内) |
|---|---|
| 自筆証書遺言などの押印を任意にする(押さなくても有効になる) | 公布から1年を超えない範囲で政令で定める日 |
| パソコンなどで作った遺言のデータを法務局に出し、本人が全文を口述するなどして法務局が保管する「保管証書遺言」の新設 | 公布から3年を超えない範囲で政令で定める日 |
保管証書遺言では、法務局の職員(遺言書保管官)による本人確認や、ウェブ会議の利用も予定されています。手書きが負担な方にとっては、選択肢が増えることになります。
ただし、2026年10月の時点では、これらの施行日はまだ決まっていません。施行されるまでは、今の決まりどおり、自筆証書遺言は全文・日付・氏名を手書きして押印する必要があります。「改正を待ってから」と考えている方も、待つ間に体調が変わることがあります。今の決まりで作っておき、改正後に必要があれば作り直す、という考え方もあります。
9. まずは「自分の場合」を整理するチェックリスト
書くか書かないかを決める前に、次の点を紙に書き出してみてください。答えにくい項目があれば、そこが遺言で手当てしておきたい部分かもしれません。
- 自分が亡くなったとき、相続人になるのは誰か(配偶者・子・父母・兄弟姉妹・甥姪)
- その中に、連絡の取れない人や、話し合いが難しそうな人はいないか
- 前の配偶者との間の子など、今の家族があまり知らない相続人はいないか
- 財産の中心は何か。自宅や土地など、分けにくい財産が大半を占めていないか
- 介護や同居をしている子、住宅資金などの援助を受けた子はいないか
- 相続人ではない人(長男の妻・内縁のパートナー・お世話になった方・団体など)に渡したい財産はあるか
- 認知症などで財産を動かせなくなったとき、誰に管理を任せたいか
- 葬儀や納骨、住まいの片付けを、誰にお願いしたいか
1〜6に気になる点があれば遺言書、7は家族信託や任意後見、8は死後事務委任契約、というように、心配に合わせて備えを選ぶと考えやすくなります。
よくある質問
- きょうだい3人で仲もよく、財産も自宅と預金だけです。それでも遺言は要りますか。
-
そうしたご家庭こそ、遺言が役に立つことがあります。自宅は分けにくく、誰が引き継ぐかで意見が分かれやすいためです。「自宅は同居している長男に、預金は長女と次男に」のように、具体的に決めておくと安心です。
- 遺言書を書いたことは、家族に伝えなければいけませんか。
-
伝える義務はありません。ただ、遺言書があることを誰も知らないと、見つからないまま手続きが進むおそれがあります。公正証書遺言にする、法務局の保管制度を使う、信頼できる方に置き場所だけ伝えておくなど、見つけてもらえる工夫をしておくと安心です。
- 一度書いた遺言書を、あとで変えることはできますか。
-
できます。遺言は、いつでも何度でも撤回や変更ができます。新しい遺言を作ると、前の遺言のうち新しい遺言と食い違う部分は、撤回したものとして扱われます。財産や家族の状況が変わったら、見直してみてください。
- 認知症になってからでも、遺言書は書けますか。
-
遺言をするには、内容を理解して判断できる力(遺言能力)が必要です。認知症と診断されたからといって直ちに書けなくなるわけではありませんが、症状が進むと書けなくなったり、あとで有効かどうか争われたりするおそれがあります。気になり始めたら、早めに考えておくのがよいでしょう。
- 遺言があれば、遺留分の争いも起きませんか。
-
遺留分は、遺言で取り上げることはできません。遺留分を下回る取り分しかない相続人は、多くもらった人にお金での支払いを求めることができます。遺留分に配慮した配分にし、付言事項で理由を伝えておくと、争いになりにくくなります。
まとめ
遺言書を書くのが怖い、気が進まないと感じるのは、ご家族を大切に思っているからこその自然な気持ちです。遺言書は義務ではなく、相続人が1人だけの場合などは、今すぐ書かなくても困りにくいことがあります。
ただ、相続がこじれる原因は、家族の仲のよさより、分けにくい自宅や介護・援助の差といった事情にあることが多く、遺産分割事件の約4分の3は遺産5,000万円以下です。「仲がいいから大丈夫」と思えるうちに、誰にどの財産を引き継がせるかを決めておけば、ご家族は分け方を話し合わずに済みます。
遺言書は何度でも書き直せますし、遺言以外の備えもあります。2026年の改正で押印の任意化なども予定されていますが、施行されるまでは今の決まりで作ります。
「自分の場合は書いておいたほうがよいのか」を整理するところからのご相談は、西宮北口のシアエスト司法書士・行政書士事務所でもお受けしています。今は書かないという選択も含めて、ご自身に合った備えを一緒に考えます。
出典・参考
- 最高裁判所事務総局「令和7年 司法統計年報 3 家事編」第52表 遺産分割事件のうち認容・調停成立件数―遺産の価額別 https://www.courts.go.jp/saikosai/vc-files/saikosai/toukei/toukei-pdf-16677.pdf
- 国税庁 タックスアンサー No.4132「相続人の範囲と法定相続分」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4132.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.4161「贈与財産を加算しなければならない場合」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4161.htm
- 裁判所「不在者財産管理人選任」https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_05/index.html
- 日本公証人連合会「2 遺言」(遺言の撤回・変更、公証人の出張、ウェブ会議、遺言公正証書の電子化)https://www.koshonin.gr.jp/notary/ow02
- 法務省「「民法等の一部を改正する法律」(成年後見及び遺言の制度の見直し)について」https://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00410.html
- 法務省民事局「民法等の一部を改正する法律(令和8年法律第45号)」概要資料 https://www.moj.go.jp/content/001465481.pdf

