
こんにちは。シアエスト司法書士・行政書士事務所の代表、今井康介です。
いよいよ2026年(令和8年)4月1日より、改正不動産登記法が施行されます。不動産をお持ちの方や、ご親族の相続を控えている方にとって、実務上非常に大きな変化となるのが「職権による住所等変更登記」と、所有者死亡時に付される「符号(◇)」の導入です。
今回は、司法書士の視点から、皆様にぜひ知っておいていただきたいポイントを最新の通達に基づき整理しました。
1. 個人の住所変更に「本人の申出」が必要な理由
今回の法改正(不動産登記法第76条の6)により、引越し等で住所が変わった際、登記官が他の行政機関から情報の提供を受け、職権で登記簿の住所を更新できる仕組みが導入されます。
しかし、自然人(個人)の場合、登記官が勝手に書き換えることはありません。必ず以下のプロセスを経て、本人の意向を確認します。
- 意思確認通知: 登記官が住基ネット等で変更を把握した場合、本人へメールや書面で「職権で変更登記ができる旨」を通知します。
- 1ヶ月以内の申出: 通知を受けた本人が、1ヶ月以内に「職権で登記してほしい」と申し出た場合に限り、登記が実行されます。
これは、DVやストーカー被害者が避難先の住所を隠している場合など、個人のプライバシーや安全に配慮し、本人の同意なしに新住所が公示されるリスクを防ぐための重要な手続きです。
2. 住所だけでなく「氏名」や「法人の名称」も職権で変わる?
この制度の名称は「職権による住所等変更登記」ですが、対象は住所だけではありません。氏名や、法人の名称(商号)の変更も対象となります。
法人の場合(同意不要): 会社法人等番号がある法人の場合は、個人とは異なり、本人の申出を待たずに、名称や本店の変更登記が自動的に行われます
個人の氏名変更: 結婚や養子縁組などで氏名が変わった場合も、本人の申出があれば職権で更新されます。この際、希望すればローマ字氏名や旧氏(旧姓)を併記することも可能です。
【登記簿にはどう記載される?】
登記原因は、これまでの「住所移転」などではなく、役所から情報を得たことを示す「異動情報取得」と記録されます。
3. 登記簿に記録される記号「◇」とその情報の入手先
もう一つの大きな変化は、所有権の登記名義人(個人)が亡くなった際に、その氏名の末尾に「◇」という記号(符号)が表示される制度です(不動産登記法第76条の4)。
これは「この不動産は相続が発生している可能性がある」ことを外部に示し、所有者不明土地の発生を予防するためのものです。
【法務局はどうやって死亡を把握するの?】
登記官は主に以下のルートから死亡の事実を確認します。
自治体からの提供: 市町村などの地方公共団体から提供された情報を端緒とする場合もあります。
住基ネットや戸籍副本: 定期的な照会や、戸籍情報の確認によって把握します。
業務の過程: 法務局が行う「地図作成事業」や、他の不動産の「相続登記」で提出された戸籍謄本などから確認することもあります。
4. 「◇」が表示されない例外ケースとは?
すでに「相続の手続きや管理が進んでいる」ことが登記簿から明らかな場合、符号(◇)は表示されません。主なケースは以下の通りです。
- 相続人申告登記が既にされているとき。
- 長期相続登記等未了土地である旨の付記があるとき。
- 相続財産の分離の登記や、相続人不存在による相続財産法人への名称変更がされているとき。
つまり、適切に相続の手続き(またはその申出)を行っていれば、この記号が付されることはありません。
まとめ:早めの相続登記が大切な理由
今回の改正は、登記簿の情報を常に新しく保ち、所有者不明土地を減らすための国の強い姿勢の表れです。
登記簿に「◇」がつくことで、相続手続きが止まっていることが一目でわかるようになります。また、住所変更が職権でできるようになるとはいえ、個人の場合は本人の「申出」という手間が必要です。
ご自身の財産を正確に管理し、次世代へスムーズに引き継ぐためにも、住所変更や相続が発生した際は放置せず、お早めに手続きを行うことをお勧めします。
「自分の家の登記はどうなっている?」「◇がつかないようにするには?」など、ご不安なことがありましたら、シアエスト司法書士事務所までお気軽にご相談ください。

