相続した実家や土地を、とりあえず兄弟で「共有」にしておく——相続の現場で非常によくある選択ですが、これは将来のトラブルをほぼ確実に生む分け方です。まずは60秒の動画で全体像をご覧ください。
「とりあえず共有」が、後で一番もめる
遺産分割の話し合いがまとまらないとき、「では平等に、兄弟で2分の1ずつの共有に」という結論になりがちです。その場では公平に見えますが、共有不動産は「持っているだけ」で自由に使えず、時間が経つほど関係者が増えて収拾がつかなくなります。
共有だと、なぜ「動かせない」のか
売却・大規模リフォームは共有者全員の同意が必要
共有物に著しい変更を加える行為(売却、建て替え、大規模リフォームなど)は、共有者全員の同意がなければできません(民法251条1項)。兄弟の一人が「まだ売りたくない」と言えば、他の共有者がいくら望んでも売却できません。
貸す・軽微な修繕は「持分の過半数」
賃貸や通常の管理・修繕といった管理行為は、共有持分の価格の過半数で決められます(民法252条1項)。2023年4月施行の民法改正で、共有物の管理に関するルールは一部整理されましたが、「売却には全員の同意が必要」という基本は変わっていません。
固定資産税は毎年かかり続ける
使っていなくても、共有している限り固定資産税・都市計画税の負担は続きます。話し合いが長引くほど、誰も住まない実家に税金を払い続けることになります。
共有者は、次の相続で「雪だるま式」に増える
共有者の一人が亡くなると、その持分はその人の相続人へ引き継がれます。当初2人だった共有者が、次の代で4〜5人、その次で十数人になることも珍しくありません。全員の署名・実印・印鑑証明がそろわなければ、売却も担保設定も相続登記もできず、事実上「塩漬け」になります。
まとまらなければ、共有物分割訴訟から競売へ
話し合いで解決できない場合、最終的には裁判所に共有物分割を求めることになります(民法258条)。2023年4月施行の改正で分割方法の規律は整理されましたが、うまく現物で分けられず、代償金を払える人もいない場合は、競売(形式的競売)による換価分割になります。競売は市場価格より安くなりやすく、結果として全員の取り分が目減りします。
では、どう分けるのがよいか
代償分割——単独名義にして、他の相続人にはお金で清算
実家に住み続ける、あるいは管理できる相続人が一人で名義を取得し、他の相続人にはその分の代償金を支払う方法です。不動産を一つにまとめられるので、その後の売却・活用がスムーズです。代償金の負担が重い場合は、生命保険金を原資にする、分割払いにするなどの設計も可能です。
親が元気なうちに、遺言・家族信託で「継ぐ人」を決めておく
最も確実なのは、親の生前に「この家は誰が継ぐか」を決めておくことです。遺言で承継先を指定する、家族信託で管理・処分の権限を特定の子に託しておく、といった方法があれば、相続時に共有をめぐる話し合い自体が不要になります。
すでに共有になっている場合
すでに亡くなった方の名義のまま、あるいは兄弟共有のまま放置されている不動産は、2024年4月から義務化された相続登記の対象でもあります。共有を解消したい、共有者の一人と連絡が取れない、といったケースは、早めにご相談ください。解消の方法は事案によって変わります。
よくある質問
Q. 共有のままでも、相続登記の義務は果たせますか?
法定相続分どおりの共有名義で相続登記をすれば、申請義務は果たしたことになります。ただし共有の問題は残るため、将来的には単独名義へ整理することをおすすめします。すぐに分け方が決まらない場合は、相続人申告登記でいったん義務を果たす方法もあります。
Q. 共有者の一人と連絡が取れません。どうすればいいですか?
所在等が不明な共有者がいる場合、その持分を裁判所の手続きを経て取得・譲渡できる制度が2023年4月から始まっています(民法262条の2・262条の3)。ただし裁判所への申立てと供託が必要で、時間と費用がかかります。まずは戸籍・住民票の調査から着手します。
Q. 代償金を払うお金がありません。
分割払いの取り決め、住宅ローンの活用、いったん共有登記をしてから代表者が他の持分を買い取る、などの方法があります。売却して現金で分ける「換価分割」が向いているケースもあります。財産全体を見てご提案します。
Q. 親に「揉めるから決めておいて」と言い出しにくいです。
「相続税や登記の相談で専門家に会う」という入り方であれば切り出しやすくなります。ご家族一緒の初回相談も承っています。
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当事務所は阪急西宮北口駅から徒歩3分。西宮市を中心に、芦屋市・宝塚市・尼崎市・神戸市など阪神間で、遺産分割・相続登記・家族信託・遺言のご相談を承っています。
「共有にする前に相談したい」「すでに共有になっているものを整理したい」——どちらの段階でも構いません。まずはお気軽にお問い合わせください(TEL 0798-31-5930)。
出典・参考
- 民法251条・252条・258条・262条の2・262条の3(令和3年民法・不動産登記法改正、2023年4月1日施行)
- 法務省「令和3年 民法等一部改正法・相続土地国庫帰属法について」
- 不動産登記法76条の2(相続登記の申請義務)

