※本記事は2026年10月時点の法令にもとづいて解説しています。
「法務局から茶封筒が届いた。祖父の名前と、見覚えのない土地が書いてあるけれど、何のことか分からない」
ある日、法務局から「長期間相続登記等がされていないことの通知(お知らせ)」という書類が届くことがあります。差出人が国の役所なので、何か罰を受けるのではと心配になる方もいらっしゃるかもしれません。
この通知は、亡くなった方の名義のままになっている土地について、「相続の登記をしてください」とお願いするものです。そして、法務局が調べた相続人の一覧(法定相続人情報)を、相続登記に使えるという利点もあります。
この記事では、通知が届いたときに何をすればよいかを、通知の意味、期限、費用、手順の順にお話しします。相続登記の義務化そのものについては、次の記事で詳しく説明しています。

先に結論:通知は「罰」ではなく「相続登記のお願い」です。捨てずに手続きを始めます
- この通知は、公共事業などのために法務局が調べた結果、名義人が亡くなってから10年以上相続登記がされていない土地について、相続人の1人に送られるものです
- 通知が届いたこと自体で、過料(罰金のような金銭のペナルティ)を科されるわけではありません。ただし、相続登記は2024年4月から義務になっていて、期限があります
- 通知書の「作成番号」を使うと、法定相続人情報を全国の法務局で無料で受け取れます。相続登記では、戸籍の束の代わりに作成番号を使えることがあります
- 相続人は、通知を受け取った方だけではありません。まず、ほかの相続人に知らせて、誰がその土地を引き継ぐかを話し合います
- 法務局が費用の振込みを求めることはありません。お金を求める連絡があったら、法務局に確かめてください
1. この通知は何?なぜ自分に届いたの?
公共事業のための調査で見つかった「名義が古いままの土地」
道路や河川の工事、災害の復旧などの公共事業では、土地の持ち主が分からないと工事が進みません。そこで、法務局の登記官は、事業を行う国や自治体などの求めに応じて、その区域の土地の名義人が亡くなっていないかを調べます(所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法44条1項)。
調べた結果、名義人が亡くなってから10年以上、相続登記がされていない土地(長期相続登記等未了土地)が見つかると、法務局は戸籍をたどって相続人を探し、相続人の一覧である「法定相続人情報」を作ります。そのうえで、相続人に相続登記をするよう勧め、手続きに必要な情報を知らせます(同条2項)。これが、届いた通知です。
つまり、通知が届いたのは、ご自身が何か悪いことをしたからではありません。公共事業の区域などに入っていた土地が、昔の名義のままだったということです。
通知は、相続人のうち1人にだけ届きます
相続人が何人もいる場合、通知はそのうちの任意の1名に送られます(東京法務局・前橋地方法務局の案内)。誰を選ぶかの基準は公表されていません。
ですから、通知を受け取った方が1人で全部を片づけなければならない、という意味ではありません。ほかの相続人は、この通知のことをまだ知らない可能性があります。「法務局からこういう通知が来た」と、ごきょうだいや親族に知らせることから始めます。
登記簿には「長期相続登記等未了土地」と書き加えられます
調査の対象になった土地の登記簿には、登記官の権限(職権)で、長い間相続登記がされていない土地であることと、法定相続人情報の作成番号などが書き加えられます(付記登記。同法44条1項、省令2条・3条)。
この記載があるだけで罰則があるわけではありません。相続登記をして名義が変われば、この記載は法務局が職権で消します(省令7条)。
2. 通知が届いたら、期限はいつまで?
相続登記は2024年4月から義務になりました
2024年4月1日から、相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内に、相続登記をすることが義務になりました(不動産登記法76条の2)。正当な理由なく申請しないと、10万円以下の過料の対象になります(同法164条)。
2024年3月31日より前に起きた相続も対象です。期限は、次のどちらか遅いほうです(民法等の一部を改正する法律(令和3年法律第24号)附則5条6項)。
| ケース | 期限 |
|---|---|
| 前から、自分が相続したことを知っていた | 2027年3月31日 |
| 今回の通知で初めて、自分が相続人になっていて、この土地を相続したことを知った | 知った日から3年以内(2027年3月31日より後になることがあります) |
ただし、「いつ知ったか」は、後から説明しにくいことがあります。期限ぎりぎりを考えるより、通知をきっかけに早めに手続きを始めるほうが安心です。
過料は、いきなり科されるものではありません
法務局は、義務を果たしていない人に、まず期間を決めて申請するよう「催告」し、それでも申請がないときに裁判所へ知らせることになっています(不動産登記規則187条)。今回の通知は、所有者不明土地法にもとづく「勧告」で、この催告とは別のものです。
とはいえ、通知によって、相続した土地があることを知ったのは確かです。放っておいてよい理由にはなりません。
話し合いがすぐにまとまらないとき
相続人が多く、すぐには話がまとまらないこともあります。その場合は、「自分が相続人です」と法務局に申し出る「相続人申告登記」をしておけば、申し出た方は義務を果たしたことになります(不動産登記法76条の3)。この申出にも、法定相続人情報の作成番号を使えます(省令8条3項・4項)。

3. 法定相続人情報を受け取る(無料)
受け取り方
通知書に書かれた「作成番号」を使って、法定相続人情報を書面にしたものを受け取れます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 手数料 | 無料 |
| 受け取れる場所 | 全国の法務局(支局・出張所を含む)の窓口 |
| 頼める人 | 法定相続人情報に相続人として載っている方 |
| 必要なもの | 提供依頼書、本人確認書類(運転免許証など)、作成番号 |
| 代理人に頼むとき | 相続人本人が署名した委任状、相続人の本人確認書類の写し、代理人の本人確認書類 |
郵送で受け取れるかなど細かい点は、通知書に書かれた法務局に確かめてください。
相続登記で「戸籍の束」が要らなくなることがあります
ふつうの相続登記では、亡くなった方の生まれてから亡くなるまでの戸籍と、相続人全員の戸籍を集めます。名義人が亡くなってから何十年もたっていると、子や孫へと相続が重なり、戸籍が何十通にもなることがあります。
法定相続人情報の作成番号を申請書に書けば、相続があったことを示す戸籍の代わりになります(省令8条1項)。相続人の住所が記録されていれば、住民票の代わりにもなります(同条2項)。
ただし、次の点に気をつけます。
- 法定相続人情報に「相続人の全部または一部が判明しない」と書かれている場合は、戸籍の代わりには使えません(省令8条1項)
- 法定相続人情報は、作られた日の時点の内容です。その後に相続人が亡くなった場合などは、その方の相続について戸籍を別に集めます
- 遺産分割協議書、相続人の印鑑証明書、固定資産評価証明書などは、別に用意します
預金などの手続きには使えるとは限りません
法定相続人情報は、相続登記のために法務局が作ったものです。名前の似た「法定相続情報証明制度」(法定相続情報一覧図の写し)とは別の制度で、銀行の預金の解約などに使えるとは限りません。預金などの手続きには、戸籍や法定相続情報一覧図を別に用意すると考えておきます。
戸籍を集めるときは、2024年3月から始まった戸籍の広域交付(本籍地以外の市区町村の窓口でもまとめて請求できる仕組み)も使えます。

4. 相続登記の費用はどれくらい?
| 費用 | 目安 |
|---|---|
| 法定相続人情報の書面 | 無料 |
| 登録免許税 | 固定資産税評価額の0.4% |
| 途中で亡くなった相続人の名義にする登記 | 登録免許税なし(2027年3月31日まで) |
| 評価額100万円以下の土地 | 登録免許税なし(2027年3月31日まで) |
| 戸籍・住民票・評価証明書などの実費 | 作成番号を使えば、戸籍の分は少なくなります |
| 司法書士に頼む場合の報酬 | 内容や不動産の数によって変わります |
長い間名義が変わっていない土地は、「祖父→父→自分」のように相続が重なっていることがよくあります。このとき、途中の父の名義にする登記には、登録免許税がかかりません(租税特別措置法84条の2の3第1項)。途中の相続人が1人に決まっている場合などは、登記を1回にまとめられることもあります。
また、山林や農地などで、評価額が100万円以下の土地も、登録免許税がかかりません(同条2項)。持分を相続する場合は、土地全体の評価額に持分をかけた額で判断します。どちらも2027年3月31日までに受ける登記が対象で、申請書に免税の根拠となる条文を書かないと使えません(不動産登記規則189条2項)。
5. 通知が届いてから、手続きを終えるまで
- 通知書を保管し、中身を確かめる:土地の所在、不動産番号、作成番号、問い合わせ先の法務局を確認します
- 土地の場所と価値を調べる:調べ方は下の表のとおりです
- 法定相続人情報を受け取る:お近くの法務局で、作成番号を使って受け取ります
- ほかの相続人に知らせる:法定相続人情報で、相続人が誰かが分かります。住所が分からない方は、戸籍の附票などで調べます
- 誰が引き継ぐかを話し合う:遺産分割協議をして、協議書に全員が署名し、実印を押します
- 相続登記を申請する:土地のある場所を受け持つ法務局へ申請します。窓口のほか、郵送やオンラインでも申請できます
- 話し合いがまとまらないとき:相続人申告登記で義務を果たしておき、話し合いを続けます
土地の場所や価値を調べるには
「祖父の名義の山林と書いてあるけれど、行ったこともない」ということもあります。調べ方は次のとおりです。
| 調べたいこと | 調べ方 |
|---|---|
| 土地の所在・地番 | 通知書に書かれています |
| 名義・面積・地目 | 法務局で登記事項証明書を取ります(手数料がかかります)。インターネットの登記情報提供サービスでも見られます(有料) |
| おおよその位置や形 | 法務局で地図(公図)の写しを取ります(手数料がかかります) |
| 評価額・固定資産税 | 土地のある市区町村で、固定資産評価証明書や名寄帳を取ります(相続人であることを示す書類が要ります) |
| 亡くなった方の名義の不動産がほかにないか | 2026年2月から、法務局で「所有不動産記録証明書」を請求できます(登記の住所や氏名が古いままだと出てこないことがあります) |
無料で分かるのは、通知書に書かれた所在と不動産番号、そして法定相続人情報までです。登記事項証明書や公図などは、手数料がかかるものが多いです。
6. 古い相続ならではの注意点
10年を過ぎた遺産分割は、原則として法定相続分で考えます
相続が始まってから10年を過ぎた遺産分割では、生前に多くもらった人の分(特別受益)や、介護などの貢献(寄与分)を主張できないのが原則です(民法904条の3)。通知の対象になる土地は、名義人が亡くなってから10年以上たっているので、この点を前提に話し合います。

相続放棄の期限は「知った時から3か月」
相続放棄は、自分が相続人になったことを知った時から3か月以内に、家庭裁判所に申し立てます(民法915条)。今回の通知で初めて相続を知った場合の数え方は、事情によって変わります。また、放棄をすると、その土地だけでなく、預金なども含めて一切引き継がないことになります。考えている方は早めに相談してください。

「いらない土地」を国に引き取ってもらう制度もあります
相続した土地を手放したい場合は、相続土地国庫帰属制度(2023年4月27日開始)を使える場合があります。審査手数料は土地1筆につき14,000円で、承認されると、10年分の管理費用にあたる負担金(原則20万円。宅地や農地、森林などで面積に応じて高くなる場合があります)を納めます。建物がある土地などは引き取ってもらえません。
よくある質問
- 法務局から手紙が届きました。本物かどうか確かめるには?
-
法務局のホームページなどで調べた電話番号から、通知書に書かれた法務局に問い合わせると安心です。法務局が、この通知に関して費用の振込みを求めたり、お金を請求したりすることはありません。
- 通知を無視すると、どうなりますか?
-
通知そのものに罰則はありません。ただし、相続登記は義務で、期限を過ぎて法務局の催告にも応じないと、10万円以下の過料の対象になります。放っておくと、土地は昔の名義のまま残り、相続人もさらに増えていきます。
- 土地の持ち主は、無料で調べられますか?
-
通知書には、土地の所在と不動産番号が書かれています。法定相続人情報の書面も無料です。登記事項証明書や公図は法務局で取れますが、手数料がかかります。
- 法定相続人情報があれば、自分ひとりで相続登記ができますか?
-
法定相続分どおりに相続人全員の共有にする登記なら、相続人の1人から申請できます。ただし、共有のままだと売るときなどに全員の同意が必要です。特定の人の名義にするには、相続人全員での遺産分割協議が必要です。
- 相続人が多すぎて、話し合いができそうにありません。
-
まず相続人申告登記で義務を果たし、時間をかけて話し合う方法があります。連絡のつかない相続人がいる場合は、家庭裁判所での手続き(不在者財産管理人の選任など)が必要になることがあります。
まとめ
法務局からの「長期間相続登記等がされていないことの通知」は、罰則のお知らせではなく、名義が古いままの土地について相続登記をお願いするものです。通知書の作成番号を使えば、法務局が調べた法定相続人情報を無料で受け取れ、相続登記では戸籍の束の代わりに使えることがあります。
一方で、相続登記は2024年4月から義務になっていて、期限があります。古い相続は、相続人が増えていたり、10年を過ぎた遺産分割の決まりが関わったりして、時間がたつほど手間が増えます。通知書は捨てずに保管し、ほかの相続人に知らせるところから始めてください。
法務局から通知が届いた土地の相続登記のご相談は、西宮北口のシアエスト司法書士・行政書士事務所でもお受けしています。通知書をお持ちいただければ、法定相続人情報の受け取りから、遺産分割協議書の作成、相続登記まで、順を追ってご案内します。
出典・参考
- 所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法 44条、同法施行令 13条(e-Gov法令検索)
- 所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法に規定する不動産登記法の特例に関する省令(平成30年法務省令第28号)1条〜8条(e-Gov法令検索)
- 不動産登記法 76条の2・76条の3・164条、不動産登記規則 187条・189条(e-Gov法令検索)
- 民法等の一部を改正する法律(令和3年法律第24号)附則5条6項
- 民法 904条の3・915条(e-Gov法令検索)
- 租税特別措置法 84条の2の3(e-Gov法令検索)、法務局「相続登記の登録免許税の免税措置について」https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/page7_000017.html
- 前橋地方法務局「長期相続登記等未了土地解消作業について」https://houmukyoku.moj.go.jp/maebashi/page000001_00431.html
- 東京法務局の案内 https://houmukyoku.moj.go.jp/tokyo/page000001_00042.html
- 法務省「相続土地国庫帰属制度の概要」https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00457.html

