家族信託は契約したら終わりじゃない — 受託者の記録・報告義務を解説

家族信託は契約したら終わりじゃない — 受託者の記録・報告義務を解説

※本記事は2026年10月時点の情報に基づいて解説しています。

家族信託は、契約書を交わして終わりではありません。本当に大変なのは契約した「後」です。まずは45秒の動画で全体像をご覧ください。

目次

受託者には、記録を続ける義務がある

受託者になった人は、信託財産の収支や、財産・債務の状況を明らかにする帳簿を作り(信託法37条1項)、年に1回は貸借対照表等を作成する義務があります(同条2項)。この2つの作成義務は、信託契約でも免除できません。作成した内容を受益者へ報告する義務(同条3項)については、契約に別段の定めがあればその定めによります。

書類は何年保存すればいいのか

保存期間は書類の種類によって異なります。帳簿等は作成の日から10年間(信託法37条4項)、財産を売ったときの契約書など信託事務の処理に関する書類は作成または取得の日から10年間(同条5項)、貸借対照表等は信託が清算結了するまで(同条6項)保存する必要があります。ただし、帳簿等と契約書などは、10年の途中で清算が結了すればその日までで足り、受益者(複数いれば全員。信託管理人がいれば信託管理人)に写しなどを渡していれば保存しなくてもかまいません(同条4項・5項)。貸借対照表等も、作成から10年が過ぎた後に受益者へ渡せば、保存しなくてもかまいません(同条6項)。「一律10年」ではない点に注意が必要です。

信託が終わるまで、何年も続く

これらの義務は信託が終わった後の清算が結了するまで、何年にもわたって続きます。忙しい日常の中で記録をつけ続けるのは、想像以上に負担になることがあります。また、信託から収益がある場合は、受託者が税務署へ「信託の計算書」を出す手続きが別途必要になることがあります(所得税法227条)。信託の収益は受益者の収益として扱われるため、受益者の確定申告が必要になることもあります(同法13条1項)。

専門家の伴走が大切な理由

だからこそ、契約書を作る場面だけでなく、始まった後の記録・報告についても専門家に相談でき、税務は税理士に相談できる形にしておくことが大切です。家族信託は「始め方」より「続け方」の設計が、実務では成否を分けます。

続けやすい仕組みを、契約時から作っておく

記録・報告の負担を軽くするには、受託者を誰にするかという入り口の設計が重要です。家族信託の受託者、選び方を間違えると家族が揉める理由もあわせてご覧ください。

契約書の作成だけでなく、始まった後の記録・報告までを見据えたサポートが必要です(税務は税理士にご相談ください)。西宮・芦屋・宝塚・尼崎など阪神間で家族信託をご検討の方は、シアエスト司法書士・行政書士事務所までお気軽にご相談ください。

よくある質問

帳簿はどんな形式で作ればいいですか?

法律で決まった様式はなく、信託財産の収支や状況が明らかになる形であれば足ります。他の目的で作った書類を帳簿として使うこともできます(信託計算規則4条2項)。実家の管理だけのような単純な信託なら、年1回の書類も財産目録に当たるもので足りると考えられます。会計ソフトや表計算ソフトで管理する方法もあります。

受益者への報告は毎回書面でなければいけませんか?

信託法の条文には、報告を書面でしなければならないとは書かれていません。また、年1回の貸借対照表等の内容の報告(信託法37条3項)は、契約に別段の定めを置くことで軽くできます。ただし、受益者が求めた時の報告(同法36条)は契約でも制限できず(同法92条7号)、作成義務そのものも免除できないため、記録自体は残しておく必要があります。

記録を怠るとどうなりますか?

受託者としての義務違反となり、信託財産に損失が出ていれば、受益者からその穴埋めを求められる可能性があります(信託法40条1項)。重要な事由があれば、裁判所に受託者の解任を申し立てられることもあります(同法58条4項)。また、帳簿や貸借対照表等を作らない、保存しない、うその記載をするといった場合は、100万円以下の過料の対象です(同法270条1項6号)。家族間であっても、記録は誠実に続ける必要があります。

記録や申告の実務が負担なら、途中から専門家に頼めますか?

はい。契約時に依頼していなくても、途中から記録の相談を専門家に、税務の相談や申告を税理士に依頼することは可能です。負担を感じ始めた時点でご相談ください。

信託の計算書を税務署に提出する必要はありますか?

はい、必要な場合があります。信託会社でない受託者は、毎年1月31日までに、受益者ごとの「信託の計算書」を税務署へ提出します(所得税法227条)。受益者ごとの前年の収益が3万円以下(計算の期間が1年未満なら1万5千円以下)であれば提出しなくてもかまいませんが、上場株の配当などが含まれる場合は3万円以下でも提出が必要です(所得税法施行規則96条2項・3項2号)。個別の判断は税理士にご確認ください。

西宮・阪神間の家族信託は、シアエスト司法書士・行政書士事務所へ

当事務所は阪急西宮北口駅から徒歩3分。西宮市を中心に、芦屋市・宝塚市・尼崎市・神戸市など阪神間で、家族信託のご相談を承っています。

契約書を作った後の記録・報告まで、一緒にサポートします。まずはお気軽にお問い合わせください(TEL 0798-31-5930)。

出典・参考

  • 信託法36条(報告を求める権利)、37条(帳簿等の作成義務・報告義務・保存義務)、40条(損失のてん補)、58条(解任)、92条(契約で制限できない受益者の権利)、176条(清算中の信託の存続)、270条(過料)、信託計算規則4条、所得税法13条・227条、所得税法施行規則96条、税理士法2条・52条、法務省民事局参事官室「信託法改正要綱試案 補足説明」、国税庁「F1-33 信託の計算書(同合計表)」
代表司法書士・行政書士 今井 康介

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