土地を分筆・合筆したら権利証(登記識別情報)はどうなる?司法書士が仕組みと実務をやさしく解説

土地の分筆(ぶんぴつ)や合筆(ごうひつ/がっぴつ)をすると「権利証はどう扱われるのか?」という質問をよくいただきます。土地の形が変わると、権利証も新しくなるのでは…と心配されるのですが、実はその仕組みはとてもシンプルです。

まず、権利証には昔の「登記済権利証(登記済証)」と、現在の制度で発行される「登記識別情報(登記識別情報通知)」の2種類があります。どちらも“あなたがその土地の所有者であることを証明する書類(または情報)”という点で役割は同じです。違うのは形式だけで、昔は厚紙の証書、今は12桁の符号を紙に印字して目隠しをつけた形式で発行されます。

この権利証が新しく発行されるかどうかは、「土地がどのように変化したか」で変わります。

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分筆をした場合 ― 権利証は“変わらず、そのまま使う”

土地をいくつかに分ける「分筆」は、あくまで土地の形を変える作業であって、所有者そのものが変わるわけではありません。たとえば1筆の土地を3筆に分けても、法務局から新しい登記識別情報(いわゆる権利証)が発行されることはありません。分筆の登記をすると手続きが完了したことを知らせる「登記完了証」が出ますが、これはあくまで通知であり、権利証の代わりになるものではありません。

実際の権利証として使うのは、分筆する前に受け取っていた登記済権利証や登記識別情報です。3つに分けたうちの1筆を売却する場合でも、その土地専用の新しい権利証が出てくるわけではなく、必要になるのは分筆前の権利証1通だけです。残りの2筆を後日売却する場合も同じで、元の権利証を繰り返し使います。分筆してから何年経っていても、この扱いは変わりません。

なお、昔の制度では「分筆の登記済証」が発行されていましたが、これらは手続き完了を示す証明書であり、売買など所有権移転の場面で権利証として使えるものではありません。現在の実務でも、分筆後に必要になる権利証はあくまで“分筆前にもらっていた1通”だと覚えておいていただくのが一番安心です。

合筆をした場合 ― 新しい権利証が発行される(ただし例外あり)

複数の土地をひとつにまとめる「合筆」は、分筆とは性質が異なり、新しくひとつの土地が生まれるという扱いになります。そのため、所有権については“新しい権利証(登記識別情報)”が発行されるのが原則です。地番もひとつにまとまり、法務局の登記上も一体の土地として取り扱われるため、所有者を確認するための新しい鍵が発行される、というイメージを持っていただくと分かりやすいかもしれません。

ただし、この「新しい権利証」が出てくるのはあくまで所有権に限られた話です。抵当権などのほかの権利については、新しい権利証が別途発行されるわけではありません。たとえ合筆と分筆を複数回くり返して形が大きく変わった土地であっても、抵当権の抹消に必要なのは“最初に抵当権を設定したときの権利証”だけで足りる場合が多くあります(ただし、法務局によって扱いが異なることがあるため、事前確認は必須です)。

合筆した土地を売却するときに司法書士が通常お願いするのは、合筆の際に発行された新しい権利証です。これが一番確実で、確認もスムーズにできるためです。とはいえ、もしその権利証を紛失してしまっていたとしても、合筆前のすべての土地の権利証がそろっていれば、それらを権利証として利用することは可能です。ただし、この方法をとる場合は確認に時間と費用がかかるため、実務上はまず“合筆時の新しい権利証を探していただく”ことをおすすめする、というのが現場の感覚です。

例外的なケースでは扱いが変わることもある

ただし、分筆と合筆のルールがそのまま当てはまらない“例外的なケース”もあります。代表的なのが国土調査の結果として土地の形や地番が整理される場合です。一見すると合筆されたように見えても、これは所有権の登記を新しく作り直す手続きではないため、通常の合筆と違って新しい権利証が発行されません。こうしたケースでは、売却時に必要になるのは国土調査の前に受け取っていた権利証です。

また、区画整理による換地でも注意が必要です。複数の土地が一体化して全く新しい土地に置き換わる場合は権利証が新しく発行されますが、1筆が2筆に増えたり、場所だけが移るような換地では権利証が出ないことがあります。見た目は大きく変わっても、登記上“その土地が新しく誕生した”と扱われない限り、権利証は増えません。

こういった特別なケースを見ても、最終的には「新しい土地として所有権が生まれたのかどうか」が権利証発行の判断基準になります。土地の形や地番が変わっても、その一点を押さえておくと、不安や混乱はずっと少なくなるはずです。

まとめ ― 分筆も合筆も、権利証の扱いはシンプルです

分筆や合筆をすると土地の形や地番が変わるため、「権利証も変わるのでは?」と心配される方が多いのですが、実際にはとても分かりやすい決まりで動いています。

まず、土地を分ける分筆をしても、新しい権利証は発行されません。土地の姿は変わりますが、所有者が変わるわけではないためです。売却や抵当権の設定などで権利証が必要になったときに使うのは、分筆前に受け取っていた権利証1通だけです。分筆後に複数の土地を売却する場合でも、必要になる権利証は同じものです。

一方で、土地をまとめる合筆では、新しい土地がひとつ生まれる扱いになるため、原則として所有権についての権利証が新しく発行されます。ただし、抵当権など所有権以外の権利については新しい権利証は発行されません。また、合筆の際に新しい権利証を失くしてしまっていたとしても、合筆前のすべての権利証がそろっていれば代わりに使うことができます。

例外的に、国土調査や区画整理による換地などの特殊なケースでは、形は合筆に近くても新しい権利証が発行されないことがありますが、一般的な分筆・合筆であれば上のルールで整理できます。

複数の権利証が手元にあって「どれが必要なのかよく分からない」という場合でも、登記簿の履歴を確認すれば必ず整理できます。土地の分筆や合筆は一生に何度も経験するものではありませんので、少しでも不安があればお気軽にご相談ください。丁寧に状況を確認し、必要な権利証がどれかを一緒に整理していきます。

代表司法書士・行政書士 今井 康介

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