※本記事は2026年10月時点の法令にもとづいて解説しています。
「会社を作りたいけれど、どこに頼めばいいのだろう」。ネットで調べると、司法書士事務所のほかに、税理士事務所の「設立費用0円」や、自分で書類を作れるサービスも出てきます。安いところで済ませたい気持ちは自然なことです。
ただ、会社の設立は「登記が終われば終わり」ではありません。株をどう持つか、資本金をいくらにするか、役員を誰にするか。設立のときに決めたことが、その後の会社の運営や、将来の事業承継・相続にまでつながっていきます。
この記事では、会社設立を司法書士に頼むメリットを、税理士に頼む場合や自分で設立する場合と比べながら解説します。
先に結論:会社設立を司法書士に頼むと、こんな点が違います
- 会社の登記を代わりに申請できるのは、司法書士(と弁護士)です。税理士の設立サービスでも、登記の部分は提携の司法書士が担当するか、ご本人の名前での申請になります
- 株の数、資本金、役員、事業年度など「最初の決めごと」を、設立後の運営まで見通して一緒に考えられます
- 設立後の役員変更、株主総会の議事録、本店移転など、会社が続くかぎり必要になる登記の相談先を最初から持てます
- 税理士の「設立無料」は、顧問契約とセットになっていることがあります。設立の窓口と顧問を分けておくと、あとで顧問を選び直しやすくなります
- 自分で設立もできますが、書類の不備で法務局から補正を求められると、そのたびに手間と時間がかかります
1. 会社設立の手続きと、だれが何を担当するか
設立までのおおまかな流れ
株式会社を発起人だけで作る場合(発起設立)の流れは、おおむね次のとおりです。
- 会社の基本事項を決める(商号、本店、目的、資本金、株の数、役員、事業年度など)
- 定款を作る
- 公証役場で定款の認証を受ける(合同会社は不要)
- 資本金を払い込む
- 設立登記を申請する(申請した日が会社の設立日になります)
- 設立後の届出(税務署・県・市・年金事務所など)と、銀行口座の開設
専門家ごとの担当範囲
| 手続き | 担当する専門家 |
|---|---|
| 定款の作成、設立登記の申請 | 司法書士 |
| 設立後の税務署などへの届出、決算・申告 | 税理士 |
| 社会保険・労働保険の手続き | 社会保険労務士 |
| 建設業・飲食店などの許認可 | 行政書士 |
ポイントは、法務局への登記の申請を、他人から依頼を受けて代わりに行うことは、司法書士の業務とされていることです(司法書士法3条1項1号・73条1項)。税理士事務所の会社設立サービスでも、登記の部分は提携する司法書士が担当するか、書類を整えたうえでご本人の名前で申請する形になるのが通常です。
2. 税理士の「設立費用0円」とのちがい
「0円」の中身を確かめる
税理士事務所の中には、設立の報酬を0円や低い金額にしているところがあります。その多くは、設立後に税務の顧問契約を結ぶことが前提になっています。毎月の記帳や決算を任せたい方にとっては、合理的な選び方の一つです。
ただし、次の点は先に確かめておくと安心です。
- 顧問契約の最低期間や、途中で解約したときに設立の報酬を払う決まりがあるか
- 登記を担当するのはだれか(提携の司法書士か、ご本人の名前での申請か)
- 登録免許税や定款認証の手数料などの実費は、0円に含まれていないことが多い
設立の窓口と顧問を分けるという考え方
税理士との顧問契約は、長いお付き合いになります。事業が大きくなって業種に強い税理士に替えたい、知り合いの税理士に頼みたい、ということも起こりえます。設立とセットで契約していると、あとから顧問を替えたいときに、気をつかって言い出しにくいという声も聞かれます。
司法書士に設立を頼み、税理士は設立後にゆっくり選ぶ。そうすると、顧問を選ぶときの自由が残ります。もちろん、信頼できる税理士がすでにいる場合は、その税理士と司法書士が連携して進めることもできます。
3. 司法書士に設立を頼む6つのメリット
メリット1:株の数や資本金を、将来を見通して決められる
設立のときに迷いやすいのが、資本金の額と株の数です。
- 資本金は1円からでも会社を作れますが、取引先や金融機関からの見え方、融資、許認可の要件などで、ある程度の額が求められる場面があります
- 株を複数の人で持つ場合、持ち株の割合によって、株主総会で一人で決められること・決められないことが変わります(普通決議は過半数、定款変更などの特別決議は原則3分の2以上)
- 家族で株を持つ場合は、将来の相続や事業承継のときに株がどう分かれるかも考えておきたいところです
いったん決めた株の割合をあとから変えるには、株の譲渡や増資の手続きが必要になり、税金がかかることもあります。最初に一緒に考えておく価値があるところです。税金の面の細かい判断は、税理士と相談しながら進めます。
メリット2:書類の不備による「補正」のやり直しを防げる
法務局に出した書類に不備があると、登記官から連絡があり、補正(書類の訂正や差し替え)を求められます。自分で申請した方が、何度も法務局に足を運ぶことになったり、定款や議事録が訂正印だらけになったりすることもあります。
設立日は登記を申請した日になるため、「この日に設立したい」という日付がある場合は、書類を事前に整えておくことが特に大切です。
メリット3:電子定款で、紙の定款の印紙代4万円がかからない
株式会社の定款を紙で作ると、4万円の収入印紙が必要です。電子定款(PDFに電子署名したもの)なら印紙はかかりません。ただ、電子定款を自分で作るには、電子署名の環境や専用のソフトの準備が必要です。司法書士に頼むと、この電子定款の作成と公証役場とのやり取りも含めて任せられます。
メリット4:会社の印鑑の発注もまとめて頼める
会社を作るときは、代表者の印鑑(会社の実印)、銀行印、角印などを用意することが多いです。商号が決まらないと印鑑も作れないため、順番を間違えると手戻りになります。当事務所では、印鑑の発注の手配もお手伝いできます。
メリット5:設立後の会社の運営も相談できる
会社は、設立したあとも登記が必要になる場面が続きます。
- 役員の任期が来たときの重任・変更の登記(取締役の任期は原則2年、非公開会社は定款で最長10年まで延ばせます)
- 本店の移転、目的の追加、商号の変更、増資
- 毎年の定時株主総会と、その議事録の作り方
会社の登記事項に変更があると、原則として2週間以内に登記を申請する必要があり(会社法915条1項)、怠ると100万円以下の過料の対象になります(会社法976条1号)。設立のときに会社の中身を知っている司法書士がいれば、こうした手続きを毎回一から説明しなくても相談できます。
メリット6:経営に専念できる
設立の準備は、定款の作成、公証役場の予約、資本金の払込み、登記申請、印鑑の手配と、細かい作業が続きます。事業の準備で忙しい時期だからこそ、手続きは任せて、取引先へのあいさつや資金の準備、商品・サービスづくりに時間を使っていただけます。
設立から始まる、長いお付き合い
会社の設立は、お付き合いの始まりでもあります。当事務所でも、設立をきっかけに、その後の役員変更の登記はもちろん、ご家族の相続手続きや不動産の売買など、会社の外のことまでご相談いただいている方がいます。
司法書士は、会社の登記だけでなく、不動産の登記、相続、遺言、成年後見なども扱います。経営者の方にとって、会社と家族の両方の相談ができる窓口を持っておくことは、いざというときの心強さにつながります。
4. 自分で会社を設立する場合の費用と注意点
自分で設立する場合にかかる費用(実費)
| 項目 | 株式会社 | 合同会社 |
|---|---|---|
| 定款認証の手数料(公証役場) | 1万5,000円〜5万円 | 不要 |
| 定款の印紙代 | 紙の定款は4万円(電子定款は0円) | 紙の定款は4万円(電子定款は0円) |
| 登録免許税 | 資本金の0.7%(最低15万円) | 資本金の0.7%(最低6万円) |
- 定款認証の手数料は、資本金100万円未満は3万円、100万円以上300万円未満は4万円、それ以外は5万円です。資本金100万円未満で、発起人が個人3人以下・発起人が株を全部引き受ける・取締役会を置かない、の3つを満たすと1万5,000円になります(2024年12月1日から)
- このほかに、定款の謄本の手数料、印鑑証明書の取得費用、会社の印鑑代などがかかります
- 市区町村の「特定創業支援等事業」(西宮市なら「みやスタ起業塾」など)を受けて証明書をもらうと、その市区町村内で株式会社・合同会社を設立するときの登録免許税が半額になります(株式会社は最低7万5,000円、合同会社は最低3万円)。設立の登記をする前に証明書を取っておく必要があります。対象のセミナーは市区町村ごとに違うので、本店を置く予定の市区町村で確かめてください
自分で設立するときにつまずきやすい点
- 目的の書き方:事業の目的が抽象的すぎたり、将来やりたい事業が入っていなかったりすると、あとで目的変更の登記(登録免許税3万円)が必要になります。許認可が必要な事業は、許可の要件に合う書き方が求められることもあります
- 資本金を払い込むタイミング:払込みは、定款を作ったあとに、発起人の個人口座へ行うのが一般的です。順番を間違えると、払込みを証明する書面が使えないことがあります
- 役員の任期と事業年度:深く考えずに決めると、任期の管理を忘れて登記を怠ってしまったり、決算の時期が繁忙期と重なったりします
- 印鑑の届出:オンラインで登記を申請する場合、会社の印鑑の届出は任意になりました(2021年2月15日から)。ただ、会社の印鑑証明書を求められる場面は多いため、届け出ておくのが一般的です。書面で申請する場合は届出が必要です
- 代表者の住所の非表示:株式会社の代表取締役の住所は、申出をすれば登記事項証明書で市区町村までの表示にできます(2024年10月1日から)。この申出は、住所が登記される登記の申請と同時にする必要があり、設立のときに決めておかないと、次の機会まで待つことになります
- 補正への対応:申請後に不備があると、法務局から連絡があり、訂正や差し替えが必要になります。平日の日中に法務局へ出向くことになる場合もあります
早く設立したい場合
定款の認証から設立の登記までを、条件を満たせば原則72時間以内に終える運用が、2024年9月20日から始まっています。添付書類をすべて電子データで作るオンライン申請であること、登録免許税を電子納付すること、補正がないことなどが条件です。急ぎの設立を考えている場合は、早めにご相談ください。
会社の登記はどこに申請するか
会社の登記は、本店の所在地を管轄する法務局に申請します。兵庫県内に本店を置く会社の登記は、神戸地方法務局の本局(神戸市中央区)が担当です。西宮支局などの支局は、会社の登記事項証明書や印鑑証明書の発行などの窓口です。オンライン申請を使えば、事務所から離れた地域の法務局にも申請できます。
5. 株式会社と合同会社、どちらにするか
| 項目 | 株式会社 | 合同会社 |
|---|---|---|
| 設立の実費(最低) | 約17万円〜(定款認証・登録免許税) | 6万円〜(登録免許税) |
| 定款の認証 | 必要 | 不要 |
| 役員の任期 | あり(登記が必要) | なし |
| 決算公告 | 必要 | 不要 |
| 向いている場合 | 取引先や金融機関からの信用、将来の出資を受けたい | 家族経営や小さく始めたい事業 |
合同会社は費用を抑えて始められますが、出資者(社員)の間のルールを定款でしっかり決めておくことが大切です。合同会社については、次の記事で詳しく解説しています。


そもそも会社にするか、個人事業のまま続けるかで迷っている方は、こちらの記事もご覧ください。

よくある質問
- 会社設立は税理士に頼んでも大丈夫ですか?
-
設立後の税務まで任せたい方には一つの選び方です。ただ、登記の申請を代わりに行えるのは司法書士です。登記をだれが担当するのか、顧問契約が条件になっていないかを確かめておくと安心です。
- 自分で会社を設立することはできますか?
-
できます。法務局のホームページにも申請書の様式が載っています。ただし、定款や議事録の書き方、資本金の払込みの順番、補正への対応など、慣れていないと時間がかかる点があります。
- 資本金はいくらにすればよいですか?
-
1円からでも設立できますが、取引先や金融機関からの見え方、融資、許認可の要件、税金の面などで、適した額は事業によって変わります。設立のときに一緒に考えることができます。
- 設立したあとも相談できますか?
-
はい。役員の任期が来たときの登記、本店の移転、目的の追加、株主総会の議事録など、設立後の会社の手続きもお手伝いしています。会社のことに限らず、相続や不動産のご相談もお受けしています。
- 会社の印鑑はいつ作ればよいですか?
-
商号が決まったら作り始めるのが一般的です。商号に使えない文字や、近くに同じ商号の会社がないかを確かめてから発注すると、作り直しを防げます。当事務所では、印鑑の発注の手配もお手伝いできます。
まとめ
会社の設立は、安く早く済ませることもできます。それでも、株の持ち方や資本金、役員の任期など、最初に決めたことは、その後の会社の運営や、ご家族の相続にまでつながっていきます。
司法書士に頼むと、登記の申請だけでなく、設立後の運営まで見通した「最初の決めごと」を一緒に考えられます。設立のあとも、役員変更や株主総会の手続き、さらには会社の外の相続や不動産のことまで、同じ窓口で相談できます。
会社設立のご相談は、西宮北口のシアエスト司法書士・行政書士事務所でもお受けしています。兵庫県・大阪府の全域の会社に対応しており、オンラインでのご相談もできます。費用の目安は、会社の登記のページでご案内しています。

出典・参考
- e-Gov法令検索「司法書士法」3条1項1号・73条1項
- e-Gov法令検索「登録免許税法」別表第一 第24号(一)イ・ハ
- e-Gov法令検索「会社法」332条・915条・976条
- 日本公証人連合会「会社の定款手数料の改定」 https://www.koshonin.gr.jp/chg_teikanfee
- 法務省「スタートアップ支援のための定款認証に関する新たな取組について」(72時間処理) https://www.moj.go.jp/MINJI/minji03_00076.html
- 法務省「代表取締役等住所非表示措置について」 https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00210.html
- 法務省「印鑑提出の任意化等について」 https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00070.html
- 法務局「商業・法人登記の申請書様式」 https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/COMMERCE_11-1.html
- 西宮市「産業競争力強化法に基づく創業支援」 https://www.nishi.or.jp/jigyoshajoho/sangyoshinko/shinkisogyo/sangyokyoso.html

