※本記事は2026年10月時点の法令にもとづいて解説しています。
「事務所を同じ西宮市内で引っ越すことになった。本店移転の登記は自分でできるだろうか」
「来年、本店を大阪に移す予定。登記の費用はいくらかかるのか、何から始めればよいのか」
会社の本店を移したときは、法務局で本店移転の登記をする必要があります。ところが、移転先が「同じ登記所の管轄の中か外か」で、申請書の数も登録免許税も変わります。また、定款を変える必要があるかどうかは、管轄とは別に、定款の書き方と移転先で決まります。
この記事では、株式会社の本店移転登記を中心に、管轄内と管轄外の違い、登録免許税、定款変更と決議、期限、申請のしかた、印鑑の扱い、登記の後の届出までを順にお話しします。
先に結論:「管轄の内か外か」と「定款を変えるか」を分けて考えます
- 同じ登記所の管轄内の移転は申請1件・登録免許税3万円、管轄外への移転は旧所在地あてと新所在地あての2件・各3万円で計6万円です(登録免許税法 別表第一24号(一)ヲ)
- 兵庫県内に本店がある会社の登記は、神戸地方法務局(本局)がまとめて扱っています。西宮市から神戸市や尼崎市への移転は、登記所の管轄の上では「管轄内」です
- 定款に本店の所在地を「兵庫県西宮市」のように市区町村までしか書いていなければ、同じ市内の移転では定款変更はいりません。市の外へ移るときは、株主総会の特別決議で定款を変えます
- 登記は本店を移してから2週間以内に申請します(会社法915条1項・916条)。怠ると100万円以下の過料の対象になります(会社法976条1号)
- 管轄外への移転は、2件の申請書を同時に、旧所在地の登記所に出します(商業登記法51条)。2025年4月21日から、新所在地あての印鑑届書は原則として不要になりました
1. 本店移転登記とは
株式会社の登記には、「本店の所在場所」が載っています(会社法911条3項3号)。本店を移すと、この登記事項が変わるため、変更の登記をしなければなりません。
ここで混同しやすいのが、次の2つです。
| 言葉 | どこに書くか | 書き方の例 |
|---|---|---|
| 本店の所在地 | 定款(会社法27条3号) | 兵庫県西宮市 |
| 本店の所在場所 | 登記 | 兵庫県西宮市○○町○番○号 |
定款には市区町村まで(最小行政区画まで)を書く会社が多く、登記には番地まで載ります。本店移転の手続きでは、「定款を変える必要があるか」と「登記の管轄が変わるか」を、それぞれ確かめることになります。
2. 同じ管轄内の移転と、管轄外への移転
違いを表で比べます
| 項目 | 同じ登記所の管轄内の移転 | 他の登記所の管轄への移転 |
|---|---|---|
| 申請書 | 1通 | 2通(旧所在地あて・新所在地あて) |
| 出す先 | 今の本店を管轄する登記所 | 2通とも、旧所在地を管轄する登記所(商業登記法51条) |
| 登録免許税 | 3万円 | 3万円+3万円=6万円 |
| 新所在地あての添付書面 | なし | 委任状のほかは不要(商業登記法51条3項) |
| 印鑑 | そのまま使えます | 印鑑の記録は登記所の間で移されます。印鑑カードは新しく取り直します(8章) |
管轄外への移転では、旧所在地の登記所が2件の申請を受け付け、新所在地あての申請書を新所在地の登記所に送ります。新所在地で登記がされたという知らせを受けてから、旧所在地の登記がされます(商業登記法52条)。新所在地の登記簿には、会社の成立の年月日と、本店を移した旨・年月日も載ります(商業登記法53条)。
旧所在地あてと新所在地あてのどちらかに不備があると、2件とも却下されることがあります(商業登記法52条1項・5項)。管轄外の移転では、書類の点検をいっそう丁寧にすることが大切です。
西宮市の会社の管轄:登記の申請は神戸地方法務局(本局)
神戸地方法務局の管轄の案内では、商業・法人登記の管轄区域は、本局が「兵庫県全域」とされています。西宮支局は、不動産登記では西宮市を受け持ちますが、商業・法人登記については、各種証明書の交付と、印鑑の提出・印鑑カード・電子認証の事務だけを扱い、登記の申請は受け付けていません(神戸地方法務局の案内)。
このため、西宮市に本店がある会社の場合、次のように考えます。
| 移転の例 | 登記の管轄 | 登録免許税 | 定款変更(市区町村までの記載の場合) |
|---|---|---|---|
| 西宮市内での移転 | 管轄内 | 3万円 | いりません |
| 西宮市から尼崎市・神戸市など兵庫県内へ | 管轄内 | 3万円 | 必要です |
| 兵庫県から他の府県へ | 管轄外 | 6万円 | 必要です |
西宮市から尼崎市への移転のように、「登記の管轄は変わらないが、定款は変える」という場合がある点に注意してください。
なお、西宮支局では、登記事項証明書や印鑑証明書の交付、印鑑カードの手続きができます。場所や受付時間は次の記事でまとめています。

3. 登録免許税:管轄内3万円、管轄外は計6万円
登録免許税法の別表第一24号(一)ヲは、本店の移転の登記の税額を「本店…の数」を基準に「一箇所につき三万円」と定めています。
| 移転の形 | 申請 | 登録免許税 |
|---|---|---|
| 管轄内 | 1件 | 3万円 |
| 管轄外 | 旧所在地あて1件 | 3万円 |
| 〃 | 新所在地あて1件 | 3万円 |
| 〃 | 合計 | 6万円 |
登録免許税は、ふつう収入印紙を申請書に貼って納めます。管轄外の場合は、旧所在地あての申請書と新所在地あての申請書のそれぞれに、3万円分ずつ貼ることになります。
4. 定款の変更が要るのはどんなときか
定款の書き方と移転先で決まります
| 定款の書き方 | 同じ市区町村内の移転 | 市区町村の外への移転 |
|---|---|---|
| 「当会社は、本店を兵庫県西宮市に置く。」(市区町村まで) | 定款変更はいりません | 定款変更が必要です |
| 番地まで書いている | 定款変更が必要です | 定款変更が必要です |
まず、今の定款(変更されている場合は最新のもの)で、本店の所在地がどう書かれているかを確かめましょう。定款が手元にない、どれが最新か分からない、という場合は、次の記事も参考になります。

定款変更は株主総会の特別決議です
定款を変えるには、株主総会の決議が必要です(会社法466条)。この決議は特別決議で、原則として、議決権を行使できる株主の議決権の過半数を持つ株主が出席し、出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成が必要です(会社法309条2項11号)。
株主総会の決議をもとに登記を申請するときは、株主総会議事録と、株主リスト(主な株主の氏名・住所・議決権の数などを書いた書面)を添付します(商業登記法46条2項、商業登記規則61条3項)。
5. 具体的な場所と移転日を決める
定款の変更とは別に、新しい本店の具体的な所在場所(番地まで)と、移転の日を決めます。
- 取締役会のある会社:取締役会の決議で決めるのが一般的です。取締役会議事録を添付します(商業登記法46条2項)
- 取締役会のない会社:定款に別の定めがなければ、取締役の過半数で決めます(会社法348条2項)。取締役の過半数の一致を証する書面を添付します(商業登記法46条1項)
登記する「移転の年月日」は、決議をした日ではなく、実際に本店を移した日とするのが一般的な扱いです。決議の日と移転の日がずれる場合は、議事録の書き方に注意が必要です。
合同会社の場合は、定款の変更は原則として総社員の同意で行います(会社法637条)。合同会社の運営については、次の記事をご覧ください。

6. 期限は2週間。遅れると過料の対象に
本店を移したときは、2週間以内に変更の登記をしなければなりません(会社法915条1項)。管轄外への移転では、2週間以内に、旧所在地では移転の登記を、新所在地では会社の登記事項を登記します(会社法916条)。
登記を怠ったときは、100万円以下の過料の対象になります(会社法976条1号)。過料の対象になるのは、会社ではなく取締役などの個人です。期限を過ぎてから登記をしても、過料の対象になることがあります。期限に遅れた登記や、長いあいだ登記をしていない会社のリスクについては、次の記事でくわしく説明しています。

7. 申請書と添付書面
同じ管轄内の移転
- 本店移転登記申請書(登録免許税3万円)
- 取締役会議事録、または取締役の過半数の一致を証する書面
- 定款を変えた場合は、株主総会議事録と株主リスト
- 代理人に頼む場合は、委任状
管轄外への移転
- ①旧所在地の登記所あての申請書(登録免許税3万円):上の添付書面を付けます
- ②新所在地の登記所あての申請書(登録免許税3万円):委任状のほかは添付書面はいりません(商業登記法51条3項)
- ①と②は同時に、旧所在地の登記所に出します(商業登記法51条1項・2項)
法務局のホームページには、管轄内・管轄外それぞれの申請書の様式と記載例が載っています。オンラインで申請することもできます(神戸地方法務局の案内)。
8. 印鑑届と印鑑カードの扱い
管轄外の移転でも、印鑑届書は原則として不要に
2025年4月21日から、商業登記規則の改正(令和7年法務省令第10号)により、管轄外へ本店を移すときは、旧所在地の登記所が会社の印鑑の記録を新所在地の登記所に移すことになりました。このため、本店移転の登記の申請と同時にしていた、新所在地の登記所への印鑑届書の提出は不要になりました(法務省の案内)。
それより前の解説では「新所在地あての印鑑届書も一緒に出す」と書かれていることがあります。古い情報に注意してください。
印鑑カードは引き継がれません
印鑑カードは、これまでどおり引き継がれません。登記が終わった後に印鑑証明書が必要な場合は、新所在地の登記所あてに、あらためて印鑑カードの交付を請求します(法務省の案内)。
会社の印鑑を変えたい(改印したい)場合は、本店移転の登記申請の前か同時に旧所在地の登記所へ改印届書を出すか、登記が終わった後に新所在地の登記所へ出します(法務省の案内)。
9. 代表者の住所を表示しない申出(一言)
2024年10月1日から、一定の要件のもとで、株式会社の代表取締役などの住所の一部(市区町村より後)を、登記事項証明書などに表示しない措置(代表取締役等住所非表示措置)が始まっています(法務省の案内)。
この申出は、登記の申請と同時にしかできません。本店を他の登記所の管轄へ移したときの新所在地での登記は、代表取締役の住所に変更がなくても申出ができる場面の一つです(法務省の案内、商業登記規則31条の3)。融資や不動産の取引で書類が増えることもあるため、利用するかどうかは慎重に考えましょう。くわしくは次の記事をご覧ください。

10. 登記の後の届出
本店移転の登記が終わったら、登記事項証明書を取り、次のような届出を進めます。
| 届出先 | 主な手続き | ポイント |
|---|---|---|
| 税務署 | 法人税の「異動届出書」 | 納税地が変わる場合、移転前の納税地の税務署に出します。2017年4月から、移転後の税務署への提出は不要になりました(国税庁の案内) |
| 年金事務所 | 「適用事業所名称/所在地変更(訂正)届」 | 年金事務所の管轄を越える移転では、事実が生じてから5日以内に、移転前の所在地を管轄する年金事務所に出します(日本年金機構の案内) |
| 都道府県・市町村 | 法人の住民税・事業税の異動の届出 | 提出先や様式は自治体ごとに違います |
| そのほか | 銀行、取引先、許認可を受けている行政庁など | 許認可によっては、変更の届出に期限があります |
消費税や従業員の労働保険など、ほかに届出が要るかどうかは、会社の状況によって違います。顧問の税理士・社会保険労務士がいる場合は、移転の日が決まった段階で伝えておくと安心です。
11. 自分で申請する前のチェックリスト
- 管轄を確かめる:新しい本店が、今と同じ登記所の管轄か(兵庫県内の会社なら、県内の移転は管轄内)
- 定款を確かめる:本店の所在地が市区町村までか、番地までか。移転先は同じ市区町村か
- 決議をそろえる:定款を変えるなら株主総会の特別決議。具体的な場所と移転日は取締役会(または取締役の過半数)で決める
- 移転日と期限を書き出す:実際に移した日から2週間以内に申請できるよう、日程を組む
- 申請書を作る:管轄外なら2通。登録免許税は管轄内3万円、管轄外は計6万円
- 印鑑カードと届出の準備:管轄外なら新しい印鑑カードの請求。税務署・年金事務所などへの届出
この中で、「定款の書き方が分からない」「決議の順番や日付の書き方に自信がない」「管轄外で2通を同時に出す」という場合は、専門家に相談したほうが安全なこともあります。
よくある質問
- 本店移転登記は、自分でできますか?
-
できます。法務局のホームページに申請書の様式と記載例が載っており、オンライン申請もできます。ただし、定款変更の要否、決議の取り方、移転日と議事録の日付の関係などを誤ると、補正や却下の原因になります。管轄外の移転は2件を同時に出すため、特に注意が必要です。
- 西宮市から神戸市に本店を移すと、登録免許税は6万円ですか?
-
兵庫県内に本店がある会社の登記は、神戸地方法務局(本局)がまとめて扱っているため、西宮市から神戸市への移転は登記の管轄の上では「管轄内」で、登録免許税は3万円です。ただし、定款に「兵庫県西宮市」と書いている場合は、定款変更(株主総会の特別決議)が必要です。
- 同じ市内の移転でも、定款の変更は必要ですか?
-
定款に本店の所在地を市区町村まで(例:「兵庫県西宮市」)しか書いていなければ、同じ市内の移転では定款変更はいりません。番地まで書いている場合は、同じ市内でも定款の変更が必要です。まず最新の定款を確かめましょう。
- 2週間の期限を過ぎてしまいました。どうなりますか?
-
登記を怠ったときは、100万円以下の過料の対象になります(会社法976条1号)。期限を過ぎても登記の申請はできますので、できるだけ早く申請してください。遅れた期間などによって、過料が科されることがあります。
- 管轄外に移転すると、会社の印鑑を届け出し直す必要がありますか?
-
2025年4月21日からは、旧所在地の登記所から新所在地の登記所へ印鑑の記録が移されるため、新所在地あての印鑑届書は原則として不要です。ただし、印鑑カードは引き継がれないため、登記が終わった後に新所在地の登記所で印鑑カードの交付を請求します。
まとめ
本店移転登記は、「登記所の管轄の内か外か」と「定款を変えるか」を分けて考えると、全体が見えやすくなります。管轄内なら申請1件・登録免許税3万円、管轄外なら旧所在地の登記所に2件同時・計6万円です。兵庫県内に本店がある会社は、県内の移転であれば登記の管轄は変わりません。
定款に本店の所在地を市区町村まで書いている会社は、市の外へ移るときに株主総会の特別決議が必要です。登記は移転から2週間以内に行い、終わったら印鑑カードの取り直しや、税務署・年金事務所などへの届出を進めます。
本店移転の登記のご相談は、西宮北口のシアエスト司法書士・行政書士事務所でもお受けしています。定款と移転先の確認から、議事録・申請書の作成、管轄外の申請まで、順を追ってご案内します。

出典・参考
- 会社法 27条・309条・348条・466条・637条・911条・915条・916条・976条(e-Gov法令検索)
- 商業登記法 46条・51条・52条・53条(e-Gov法令検索)
- 商業登記規則 31条の3・61条(e-Gov法令検索)
- 登録免許税法 別表第一 24号(一)ヲ(e-Gov法令検索)
- 神戸地方法務局「不動産登記/商業・法人登記の管轄区域一覧」https://houmukyoku.moj.go.jp/kobe/table/shikyokutou/all.html
- 神戸地方法務局「取扱事務一覧表(商業・法人登記、電子認証)」https://houmukyoku.moj.go.jp/kobe/table/shikyokutou/all03.html
- 法務省「本店を管轄登記所外に移転する際の印鑑届書の提出が不要になりました」https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00228.html
- 法務省「代表取締役等住所非表示措置について」https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00210.html
- 国税庁「法人設立届出書等について、手続が簡素化されました」https://www.nta.go.jp/information/other/data/h29/kansoka/index.htm
- 日本年金機構「適用事業所の名称・所在地を変更するとき(管轄外の場合)の手続き」https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/tekiyo/jigyosho/20141205.html

