※本記事は2026年9月時点の情報に基づいて解説しています。
はじめに
「不動産の名義人の住所が変わったら、登記も変えないといけない」——このルールが、令和8年4月1日から義務になりました。届出を忘れると過料(罰金のようなもの)の対象になることもあります。
その一方で、この負担を軽くするために、法務局が代わりに住所変更の登記をしてくれる新しい仕組みも始まっています。ただし、この仕組みを使ってもらうには、事前にご自身で「検索用情報」という情報を法務局に届け出ておく必要があります。
この記事では、義務化の内容と、この「検索用情報の申出」について、不動産をお持ちの方向けにわかりやすく解説します。
令和8年4月から、住所変更登記が「義務」になりました
不動産の所有者(登記名義人)は、氏名・住所に変更があったとき、変更から2年以内に変更登記をすることが義務付けられました。正当な理由なくこれを怠ると、5万円以下の過料の対象となる可能性があります。
過料は、変更があった方全員にすぐに科されるわけではありません。法務局(登記官)が期間を定めて登記をするよう催告したにもかかわらず、正当な理由なく応じなかった場合に限られます。
また、令和8年4月1日より前に引っ越しやご結婚などで住所・氏名が変わっていて、まだ登記を変更していない方も対象になります。この場合は、令和10年3月31日までに変更登記をする必要があります。
義務化の負担を軽くする、新しい仕組み
「変更のたびに法務局へ申請するのは面倒」という声に応える形で、法務局が住民票のネットワーク情報(住基ネット)をもとに、本人からの申請なしで住所変更の登記をしてくれる仕組みが始まりました。
この仕組みが使われるときは、まず法務局から本人あてに「住所が変わったようですが、登記を変更してよいですか」という意思確認の通知が届きます。これに回答しない、あるいは拒否した場合に、先ほどの過料の催告につながっていく流れになっています。
この仕組みを使うための届出、「検索用情報の申出」
法務局が住基ネットで本人の情報を正しく検索するためには、あらかじめ次のような情報を届け出ておく必要があります。これが「検索用情報」です。
- 氏名の振り仮名(またはローマ字氏名)
- 生年月日
- 電子メールアドレス(任意)
届出の方法は2通りあります。
①同時申出
相続登記や売買による名義変更など、所有権の移転登記等を申請するタイミングで、その申請にあわせて検索用情報も届け出る方法です。令和7年4月21日以降、こうした登記申請では検索用情報の提出もあわせて必要になっています。なお、今回の住所変更登記そのものの申請の際には、この同時申出はできません。
②単独申出
すでに所有権の登記名義人になっている方が、名義変更の予定がなくても、今のタイミングで個別に検索用情報を届け出る方法です。(担保権の登記名義人や他の権利の登記名義人は対象外です。)
なぜ本人の申出(意思確認)が必要なのか
住所変更を登記簿に反映する仕組みは、安全に配慮して設計されています。例えばDVやストーカー被害にあって避難先に住所を移した方の場合、新住所が自動的に登記簿に反映されてしまうと、加害者に住所が知られるおそれがあります。そのため、住基ネット等で住所の変更が確認できた場合でも、法務局から本人へ意思確認通知を送り、本人の回答を得てから職権で登記する仕組みになっています。
氏名の変更や法人の名称変更も対象です
今回の、職権登記の仕組みは住所変更だけでなく、結婚等による氏名変更登記も対象になっています。また、登記名義人が会社などの法人の場合には、商号・名称の変更も同じ仕組みで反映されます。個人との違いとして、法人の場合は意思確認の手続が不要で、企業情報としての商業登記の変更情報をもとに所有権登記の名称も自動的に更新されます。
届出をするときに知っておきたいこと
- 電子メールアドレスは任意です。届け出ていない場合、住所変更の意思確認は登記名義人の住所宛てに書面を郵送する方法で行われます。メールの方がやり取りが早く確実なため、お持ちの方は届けておくことをおすすめします。
- 単独申出を代理できるのは、司法書士または弁護士に限られます。ご自身で届け出ることもできますが、代理を依頼する場合はこの2つの資格者に限られる点にご注意ください。
- 届出に登録免許税はかかりません。
こんな方は、特に確認しておくと安心です
- これから相続や売買で不動産の名義変更をする方:登記申請とあわせて検索用情報の届出も必要になります。
- 何年も前から同じ不動産をお持ちの方:過去の登記申請の際には検索用情報の届出という仕組み自体がなかったため、今のうちに単独申出をしておくと、将来ご自身やご家族の住所が変わったときに、職権登記の対象になりやすくなります。
- 検索用情報の届出に費用はかかりますか?
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登録免許税はかからず、無料で届け出ることができます。
- 電子メールアドレスがない場合はどうすればよいですか?
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電子メールアドレスがない旨を届け出ることも可能です。その場合、住所変更の意思確認は登記名義人の住所宛てに書面を郵送する方法で行われます。
- すでに持っている不動産についても届出が必要ですか?
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過去に取得した不動産の所有権についても、任意のタイミングで「単独申出」として個別に届け出ることができます。義務ではありませんが、届けておくと将来の職権登記につながりやすくなります。
- 過料はどのような場合に科されますか?
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正当な理由なく住所変更登記を怠り、法務局から期間を定めて催告を受けたにもかかわらず、その期間内に対応しなかった場合に限り、5万円以下の過料の対象となります。
- 令和8年4月より前に引っ越しをした場合も対象ですか?
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対象になります。施行日より前の住所変更であっても未登記のままであれば義務化の対象となり、令和10年3月31日までに変更登記をする必要があります。
- 所有者が亡くなった場合、登記はどうなりますか?
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死亡が住基ネット等で確認できれば、登記簿上の氏名に「◇」の符号が付され、亡くなっていることが分かるようになります。これは自動的に相続登記がされるわけではなく、別途相続登記を行う必要があります。
所有者が亡くなった場合の「◇」表示
所有者が亡くなったことが住基ネット等を通じて確認できた場合、登記簿上の所有者の氏名に「◇」の符号が付され、亡くなっていることが分かるようになっています。ただし、すでに相続登記が完了している場合や、死亡情報がシステム上で確認できない場合などは「◇」が表示されないこともあります。相続登記は早めにすませておくことが大切です。
まとめ
令和8年4月1日から、不動産の住所・氏名の変更登記は義務になり、怠ると過料の可能性もあります。その一方で、あらかじめ「検索用情報」を届け出ておけば、法務局が代わりに登記をしてくれる仕組みも用意されています。
ご自身の不動産がこの届出の対象になっているか、届出がまだかご不明な場合は、お気軽に当事務所までご相談ください。
出典:日本司法書士会連合会「検索用情報の申出に関する質疑事項集」(令和8年9月16日現在版、常発081号)、法務省:住所等変更登記の義務化について(https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00693.html)

