※本記事は2026年10月時点の情報にもとづいて書いています。この記事は医療的な診断や治療の代わりになるものではありません。
「人との距離の取り方が分からない」「必要以上にがまんしてしまう」「何かあると、すぐに自分を責めてしまう」。こうした生きづらさの背景に、子どものころの家庭の環境が関係していることがあります。そうした人たちを表す言葉として知られているのが「アダルトチルドレン(Adult Children)」です。
この記事では、アダルトチルドレンという言葉の意味と成り立ち、よく挙げられる特徴、回復のための考え方、そして公的な相談先を整理します。あわせて、法律事務所に寄せられることの多い、親の介護や相続の場面で心が揺れるときのことにも少しだけ触れます。
先に結論:アダルトチルドレンについて知っておきたいこと
- アダルトチルドレンは、病名や医学的な診断名ではありません。育った家庭の影響で大人になっても生きづらさを抱えている状態を、自分で理解するための言葉です。
- もともとは、アルコール依存症の親のもとで育った人を指す言葉として、アメリカで広まりました。いまは虐待や過干渉など、さまざまな事情のある家庭で育った人にも使われます。
- 挙げられる特徴は「弱さ」ではなく、子どものころの家庭で身を守るために身につけた工夫だった、と考えられています。
- 回復の道は人それぞれです。自助グループ、カウンセリング、医療機関など、ひとりで抱え込まずに頼れる場所があります。
- 気分の落ち込みや不眠などが続くときは、医療機関や、精神保健福祉センターなどの公的な窓口に相談してください。
1. アダルトチルドレンとは
言葉の意味
アダルトチルドレンは、子どものころの家庭の環境が原因で心に傷を負い、大人になってからも生き方に悩んだり、生きづらさを感じたりしている人を指す言葉です。「子どもっぽい大人」という意味ではありません。国語辞典でも、そのような意味で使うのは誤りだと説明されています。
言葉の成り立ち
百科事典の説明によると、この言葉は1980年代のアメリカで、アルコール依存症の治療の中から生まれた考え方です。最初は「アルコール依存症の親のもとで育った人」を指していましたが、その後、親による虐待など、安心できない親子関係の中で育った人にも広く使われるようになりました。
日本では、1990年代半ばに関連する本が出版されたことをきっかけに広く知られるようになり、自分をアダルトチルドレンだと考える人が増えたとされています。
病名ではない、ということ
大切なのは、アダルトチルドレンは精神医学で認められた病気ではなく、診断の基準もない、という点です。医師から「あなたはアダルトチルドレンです」と診断されるものではありません。
病名ではないからこそ、「自分はそうだ」と名乗るかどうかは本人が決めることです。この言葉を知って「自分の生きづらさの理由が少し分かった」と感じる人もいれば、しっくりこない人もいます。どちらでもかまいません。
2. 機能不全家族とは
アダルトチルドレンの説明では、「機能不全家族」という言葉がよく使われます。家庭が本来もっている、安心できる、信頼できる、成長を支えてもらえる、といった働きが十分に果たされていない家庭のことです。例えば、次のような状況が挙げられます。
- 親のアルコールや薬物などへの依存
- 家庭内での暴力や虐待
- 過干渉や、親の思いどおりに子どもを動かそうとする関わり
- 気持ちを表に出せない雰囲気や、子どもへの無関心
- 親の病気などで、子どもが家族の世話や親の気持ちの支え役を担っている
こうした家庭では、子どもは「気持ちを押し殺す」「親の機嫌をうかがう」「家の問題を外に話さない」といったふるまいで、家庭を何とか保とうとすることがあります。その役割を、大人になってからも知らず知らずのうちに続けてしまうことがある、と考えられています。
親の気持ちの支え役を担った子ども
日本で、精神疾患のある親のもとで育った成人94人を対象に行われた調査では、学齢期に親の気持ちの世話をしていたことが、大人になってからの強い心理的な苦痛と関係していたと報告されています(Kageyama ほか、2023年)。ただし、自助グループに参加した人を対象にした小規模な調査であり、すべての人に当てはまるわけではありません。研究者は、子どもが担ってきた親の気持ちの世話を、専門職が引き受けることの大切さを指摘しています。
3. よく挙げられる特徴
アルコール依存症や機能不全家族のもとで育った人の自助グループ「ACA(Adult Children of Alcoholics & Dysfunctional Families)」は、「ランドリー・リスト(洗濯物のリスト)」と呼ばれる文章で、そうした家庭で育った人に共通しやすい特徴を14項目にまとめています。要点をやさしく言い直すと、次のような内容です。
- 人や、権威のある人を怖いと感じ、孤立しやすい
- 人に認められることを求めるあまり、自分を見失いやすい
- 怒っている人や、批判されることを怖がる
- 自分を被害者のように感じやすく、そうした関係にひかれやすい
- 人のことに責任を感じすぎて、自分のことを見つめるのを後回しにする
- 自分の意見を通すと、罪悪感を覚えやすい
- 同情と愛情を取り違え、だれかを助けずにいられない
- 子どものころのつらい気持ちを、感じないように押し込めてきた
- 自分に厳しく、自分を大切に思えない
- 見捨てられることを強く恐れ、人に頼りすぎてしまう
これらは、だれかを分類するためのチェックリストではありません。いくつか当てはまるからといって、何かが決まるわけではありません。むしろ、こうした特徴は、安心できない家庭で生き延びるために身につけた工夫だったと捉え直すことが、自分を責めないための第一歩になると考えられています。
4. 回復のための考え方
回復の道のりは人それぞれで、決まった順番があるわけではありません。よく紹介される考え方を、いくつか挙げます。
「影響を受けていた」と認める
「親を悪く言うようで気が引ける」と感じる人も少なくありません。けれども、家庭の影響を認めることは、親を責めることとは違います。「あのころの自分は、精いっぱいやっていた」と、子どものころの自分を認めることから始める人もいます。
気持ちを言葉にする
長いあいだ押し込めてきた気持ちは、すぐには言葉になりません。日記に書く、信頼できる人やカウンセラーに話す、同じ経験をもつ仲間の話を聞く、といった方法で、少しずつ言葉にしていくことが助けになるといわれます。
人との「境界線」を学び直す
「相手の問題まで背負わなくていい」「自分の気持ちを大切にしていい」と知ることは、人間関係を楽にする手がかりになります。頼まれごとを断る、すぐに返事をせず考える時間をもらう、といった小さな練習から始める方法もあります。
ひとりで抱え込まない
アメリカでは、ACAの自助グループが「12ステップ」と呼ばれるプログラムで回復を支えており、日本を含む各地でミーティングが開かれています。カウンセリングや、トラウマに詳しい医療機関の力を借りながら回復を進める人もいます。自分に合う場所を、焦らずに探してみてください。
回復には時間がかかる
長い年月をかけて身につけたものは、すぐには変わりません。うまくいかない日があっても、自分を責めず、少しずつ「自分を取り戻していく」ことが目標です。
5. つらさが続くときの相談先
気分の落ち込み、不安、眠れない、お酒や薬に頼ってしまう、といった状態が続くときは、ひとりで抱え込まず、医療機関や公的な窓口に相談してください。アダルトチルドレンは病名ではありませんが、うつ病や不安の病気、依存症などが重なっている場合には、治療が役立つことがあります。
- 精神保健福祉センター:都道府県や政令指定都市にある、心の健康の公的な相談機関です。兵庫県精神保健福祉センターは、神戸市を除く県内に住む方を対象に、心の悩みや精神的な病気、ひきこもり・依存症などの相談に応じています(神戸市に住む方は神戸市の精神保健福祉センターが窓口です)。
- こころの健康相談統一ダイヤル(厚生労働省):全国共通の番号に電話すると、電話をかけた場所の公的な相談機関につながるしくみです。受付の曜日や時間は地域によって異なります。
- 厚生労働省「まもろうよ こころ」:いのちの電話など、電話やSNSで相談できる窓口を、悩みや年代に合わせて探せるサイトです。
電話番号や受付時間は変わることがあるため、各窓口の公式サイトで確かめてからご利用ください。
6. 親の介護や相続の場面で、心が揺れるとき
法律事務所には、親の介護や相続の手続きについての相談が寄せられます。そうした場面では、子どものころの家族の関係が、思いがけず心に重くのしかかることがあります。
- 何年も距離を置いていた親の介護について、きょうだいや役所から連絡が来た
- 親が亡くなり、会いたくない家族と相続の話し合いをしなければならない
- 「長男だから」「娘だから」と、昔と同じ役割を当然のように求められる
こうしたとき、つらさを感じるのは自然なことです。手続きの中には、相続放棄の申述のように期限が決まっているものもありますが、すべてをひとりで、すぐに決める必要はありません。気持ちのケアは医療や相談窓口に、手続きのことは専門家に、と役割を分けて頼ることで、負担を軽くできることがあります。
相続の手続きや親族とのやりとりがつらいときの心の守り方は、次の記事で取り上げています。

障害のあるきょうだいがいる場合に、親が亡くなったあと、どこまで面倒を見る必要があるのか(扶養義務の範囲)については、次の記事で説明しています。

相続放棄の期限(3か月)の数え方は、次の記事で説明しています。

よくある質問
- アダルトチルドレンは病院で診断してもらえますか。
-
アダルトチルドレンは病名ではなく、診断の基準もないため、診断されるものではありません。ただ、気分の落ち込みや不安、不眠などが続く場合は、医療機関で相談することで、治療や支援につながることがあります。
- 自分がアダルトチルドレンかどうか、チェックリストで分かりますか。
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インターネット上にはさまざまなチェックリストがありますが、当てはまる数で何かが決まるものではありません。「自分の生きづらさを理解する手がかり」として参考にする程度にとどめ、つらさが強いときは専門の相談先を頼ってください。
- 親を責める気持ちになってしまい、自分が嫌になります。
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家庭の影響を認めることは、親を責めることとは違います。怒りや悲しみがわいてくるのは、押し込めてきた気持ちが表に出てきたためかもしれません。そうした気持ちを、カウンセラーや自助グループなど、安心して話せる場所で言葉にしていくことが助けになるといわれます。
- どこに相談すればよいか分かりません。
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公的な窓口として、都道府県・政令指定都市の精神保健福祉センターや、こころの健康相談統一ダイヤルがあります。厚生労働省の「まもろうよ こころ」では、電話やSNSで相談できる窓口を探すことができます。
- 疎遠な親の相続や介護の連絡が来て、どうすればよいか分かりません。
-
まずは、急いで決める必要があることと、そうでないことを分けて考えてみてください。相続放棄のように期限があるものは、早めに専門家に相談すると安心です。気持ちがつらいときは、手続きの相談と並行して、心の相談先も頼ってください。
まとめ
アダルトチルドレンは、「過去の家庭の環境が、いまの生きづらさに影響しているかもしれない」と気づくための言葉です。病名ではなく、だれかを分類するためのものでもありません。
- アダルトチルドレンは診断名ではなく、自分を理解するための言葉
- 挙げられる特徴は、家庭で身を守るための工夫だった
- 回復は人それぞれ。自助グループ、カウンセリング、医療機関を頼ってよい
- つらさが続くときは、精神保健福祉センターなどの公的な窓口へ
過去は変えられませんが、これからの生き方は少しずつ選び直していくことができます。
親の介護や相続の手続きで困ったときは、西宮北口のシアエスト司法書士・行政書士事務所でもご相談をお受けしています。手続きのことを整理するだけでも、気持ちが少し軽くなることがあります。
出典・参考
- コトバンク「アダルトチルドレン」(デジタル大辞泉、精選版 日本国語大辞典、百科事典マイペディア、ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ほか) https://kotobank.jp/word/%E3%81%82%E3%81%A0%E3%82%8B%E3%81%A8%E3%81%A1%E3%82%8B%E3%81%A9%E3%82%8C%E3%82%93-163508
- Adult Children of Alcoholics & Dysfunctional Families World Service Organization「The Laundry List」 https://adultchildren.org/literature/laundry-list/
- Kageyama M, et al. (2023). Childhood Adversities and Psychological Health of Adult Children of Parents with Mental Illness in Japan. Healthcare (Basel), 11(2), 214. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9859196/
- 兵庫県「心の健康に関する相談窓口」(兵庫県精神保健福祉センター、こころの健康電話相談) https://web.pref.hyogo.lg.jp/kf09/kokoronokenkousoudan.html
- 厚生労働省「こころの健康相談統一ダイヤル」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/jisatsu/kokoro_dial.html
- 厚生労働省「まもろうよ こころ」 https://www.mhlw.go.jp/mamorouyokokoro/

