※本記事は2026年10月時点の法令にもとづいて解説しています。
「親が亡くなって1か月。借金があるかもしれないけれど、相続放棄の期限はいつまでなのだろう」
「兄が相続放棄をしたと聞いた。自分の期限は、もう過ぎているのでは」
相続放棄には「3か月」という期限があります。ところが、その3か月を「いつから」数えるのか、「最後の日」がいつになるのかは、事情によって変わります。数え方を1日まちがえるだけで、期限を過ぎてしまうおそれもあります。
西宮で相続放棄のご相談をお受けしていても、「期限が分からなくて不安」というお声を伺うことがあります。
この記事では、相続放棄の期限に話をしぼって、数え始めの日、3か月の数え方、立場ごとの期限、3か月で決められないときの延長の方法を、具体例とともにお話しします。相続放棄の手続き全体や、放棄ができなくなる行為については、次の記事で詳しく説明しています。

先に結論:期限は「知った日の翌日」から数えて3か月。迷ったら期限内に延長を申し立てます
- 相続放棄の期限(熟慮期間)は、「自分のために相続が始まったことを知った時」から3か月以内です(民法915条1項)。亡くなった日ではなく、「亡くなったこと」と「自分が相続人になったこと」の両方を知った時から数えます
- 知った日は数えず、翌日から数えます(民法140条)。たとえば6月1日に知った場合、期限は9月1日です
- 期限は相続人ごとに別々です。先の順位の人が放棄して相続人になった第2順位(親など)・第3順位(兄弟姉妹など)の人は、そのことを知った時から3か月です
- 財産の調査が間に合わないときは、3か月以内に家庭裁判所へ「期間の伸長」を申し立てれば、期限を延ばしてもらえる場合があります
- 期限を過ぎると、原則として借金も含めて相続したものとみなされます(民法921条2号)。日付に不安があれば、早めに動くことが大切です
1. 相続放棄の期限は「知った時から3か月」
「熟慮期間」とは
相続人は、相続が始まったことを知った時から3か月以内に、相続を全部引き継ぐ(単純承認)か、引き継いだ財産の範囲でだけ借金を払う(限定承認)か、相続放棄をするかを決めなければなりません(民法915条1項)。この3か月を「熟慮期間」といいます。
相続放棄をするには、この期間内に、亡くなった方の最後の住所地を受け持つ家庭裁判所に「相続放棄の申述書」を出します(民法938条)。
期間内に限定承認も相続放棄もしなかったときは、単純承認をしたものとみなされます(民法921条2号)。つまり、預金や不動産だけでなく、借金や保証の債務もすべて引き継ぐことになります。
「知った時」とは:2つのことを知った時
数え始めになる「自分のために相続が始まったことを知った時」とは、次の2つを知った時と考えられています(裁判所の説明・最高裁昭和59年4月27日判決)。
- 亡くなった方が亡くなったこと
- それによって、自分が法律上の相続人になったこと
ですから、亡くなった日と、数え始めの日が同じとは限りません。たとえば、離れて暮らしていて、亡くなってから2週間後に連絡を受けた場合は、連絡を受けた日が基準になります。死亡届の日付や、戸籍に載った日とも別のものです。
「いつ・誰から・どのように知ったか」は、後から家庭裁判所に説明を求められることがあります。連絡を受けた日の手紙やメール、電話の記録などは残しておきましょう。
期限は相続人ごとに別々です
熟慮期間は、相続人一人ひとりについて、その人が知った時から別々に進みます(法務省の案内)。同じ親の相続でも、すぐに知らせを受けた長男と、遠方で後から知った次男とでは、期限が違うことがあります。
2. 3か月の数え方:初日・月末・休日
原則:知った日は数えず、翌日から数えます
期間の数え方は、民法の決まりに従います。
- 初日は数えない:日・月・年で決めた期間は、最初の日を数えません(民法140条)。知った日の翌日が「数え始めの日(起算日)」になります
- 3か月後の同じ日の前日まで:月で決めた期間は、最後の月の、起算日と同じ日(応当日)の前日に終わります(民法143条2項)
- 同じ日がない月は、その月の末日まで:最後の月に応当日がないときは、その月の末日に終わります(民法143条2項ただし書)
- 期限の日が終わるまで:期間は、末日が終わった時に満了します(民法141条)
具体例で確かめる
| 知った日 | 数え始めの日(起算日) | 期限(この日までに申述) |
|---|---|---|
| 6月1日 | 6月2日 | 9月1日 |
| 5月10日 | 5月11日 | 8月10日 |
| 4月30日 | 5月1日 | 7月31日 |
| 10月31日 | 11月1日 | 翌年1月31日 |
| 11月30日 | 12月1日 | 翌年2月28日(うるう年は2月29日) |
| 1月30日 | 1月31日 | 4月30日(4月31日がないため、4月の末日) |
いちばん上の例(6月1日に知った場合は9月1日まで)は、法務省が熟慮期間の説明で使っている例と同じです。
「3か月=90日」ではない点に注意してください。月によって日数が違うため、日数で数えるとずれることがあります。
期限の日が土日・祝日・年末年始のとき
期間の末日が日曜日や祝日などの休日に当たり、その日に取引をしない慣習があるときは、期間はその翌日に満了します(民法142条)。家庭裁判所は、土曜日・日曜日・祝日と、12月29日から1月3日までが休みです(裁判所の休日に関する法律1条)。
このため、期限の日が家庭裁判所の休みの日に当たるときは、次に家庭裁判所が開いている日まで延びると扱われるのが一般的です。ただし、休み明けは窓口や郵便が混み合います。休日をあてにせず、その前に出しておくのが安全です。
期限の日に「出せば」間に合う、ではありません
期限の日までに、申述書が家庭裁判所に届いている必要があると考えておくのが安全です。窓口は夕方に閉まります。郵送の場合も、ポストに入れた日や消印の日ではなく、届いた日で見られるのが一般的です。期限の数日前には届くように送りましょう。
戸籍などの書類が期限までにそろわない場合は、申述書だけを先に出し、手に入らなかった書類は後から追加で出すこともできます(裁判所の案内)。
3. 数え始めが後になるケース
第2順位・第3順位の相続人の期限
相続人には順位があります。子(第1順位)が全員相続放棄をすると、親や祖父母(第2順位)が相続人になり、その人たちも放棄をすると、兄弟姉妹(第3順位。亡くなっていればその子のおい・めい)が相続人になります。
後の順位の人にとっては、「先の順位の人が全員放棄して、自分が相続人になった」ことを知った時が、数え始めの日になります。亡くなった日から何か月もたっていても、そのことを知った時から3か月です。
| 立場 | 数え始めの日(例) |
|---|---|
| 第1順位(子) | 親が亡くなったことを知った時 |
| 第2順位(親・祖父母) | 子が全員相続放棄をして、自分が相続人になったと知った時 |
| 第3順位(兄弟姉妹・おい・めい) | 子も親も全員相続放棄をして(またはいなくて)、自分が相続人になったと知った時 |
先の順位の人が放棄をしても、次の順位の人がそのことを知らないままのこともあります。親族からの連絡や、亡くなった方の債権者からの手紙で初めて知ることもあります。放棄をした方は、次の順位の方に一言伝えておくと、後のトラブルを防ぎやすくなります。
なお、兄弟姉妹が全員放棄をしても、おじ・おばやいとこに相続権が移ることはありません。この場合は、相続人がいない状態になります。
相続人が、放棄するか決めないまま亡くなったとき(再転相続)
祖父が亡くなり、その相続人である父が、相続放棄をするか決めないうちに亡くなった、という場合があります(再転相続)。このとき、祖父の相続についての子の期限は、子が「父が祖父の相続人としての立場を、自分が引き継いだこと」を知った時から3か月です(民法916条、最高裁令和元年8月9日判決)。
祖父の相続があったこと自体を知らなかった場合は、知った時から数えます。くわしくは、次の記事で説明しています。

相続人が未成年や成年被後見人のとき
相続人が未成年者や成年被後見人のときは、その法定代理人(親権者や成年後見人)が、本人のために相続が始まったことを知った時から3か月を数えます(民法917条)。
親と未成年の子がともに相続人で、子だけが相続放棄をする場合や、複数の子のうち一部の子だけが放棄をする場合は、親と子の利益がぶつかるため、家庭裁判所で子のための特別代理人を選ぶ必要があります(民法826条、裁判所の案内)。親が先に放棄をしている場合は、特別代理人は要りません。親と子が同時に放棄をする場合も、要らないと考えられています。
「財産は何もない」と信じていたとき
3か月を過ぎてから、亡くなった方の借金の請求が届くことがあります。この場合でも、最高裁判所は、次の両方に当てはまるときは、借金などの財産があると分かった時(または、ふつうなら分かったはずの時)から3か月を数えてよい、という考え方を示しています(最高裁昭和59年4月27日判決)。
- 3か月以内に放棄をしなかったのは、亡くなった方に財産が全くないと信じたためであること
- そう信じたことに相当な理由があること(亡くなった方の生活の様子や、相続人との付き合いの状況などから、財産を調べることを期待するのがとても難しかった、など)
「借金があることを知らなかった」だけで、当然に認められるわけではありません。財産があることを知っていたかどうか、どんな付き合いだったかなどの事情を、申述書や事情説明の書面で、家庭裁判所に丁寧に伝える必要があります。
4. 3か月で決められないとき:期間の伸長の申立て
期限内に、家庭裁判所に申し立てます
財産や借金の調査に時間がかかり、3か月以内に決められないときは、家庭裁判所に「相続の承認又は放棄の期間の伸長」を申し立てることができます(民法915条1項ただし書)。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 申し立てできる人 | 相続人などの利害関係人、検察官 |
| 申立先 | 亡くなった方の最後の住所地の家庭裁判所 |
| 費用 | 収入印紙800円分(相続人1人につき)、連絡用の郵便切手 |
| 主な書類 | 申立書、亡くなった方の住民票除票(または戸籍附票)、期間を延ばしたい相続人の戸籍謄本、亡くなった方の死亡の記載のある戸籍など |
| いつまでに | その相続人の3か月の期限内 |
大切なのは、3か月の期限内に申し立てることです(裁判所の案内)。期限を過ぎてからでは、伸長の申立てはできません。
申立書には、なぜ3か月で決められないのか(財産が多い、借金の有無の照会に時間がかかっている、など)を書きます。どのくらい延ばすかは家庭裁判所が決めます。延ばしてもらった期間内にもなお決められない場合に、もう一度申し立てることが認められる場合もあります。
大きな災害のときの特例
大きな災害の被災地に住んでいた相続人については、政令で熟慮期間がまとめて延長されることがあります。2026年7月の熊本地震では、災害救助法が適用された市町村に住所があった相続人の熟慮期間が、2027年3月31日まで延長されています(法務省の案内)。
5. 期限を過ぎてしまったら
3か月の期限内に放棄も限定承認もしなかった場合は、単純承認をしたものとみなされます(民法921条2号)。
ただし、前の章の「財産は何もないと信じていた」場合のように、数え始めが後になると認められる事情があれば、家庭裁判所が相続放棄の申述を受理することもあります(裁判所の案内)。「もう過ぎてしまった」とあきらめる前に、知った時期や事情を整理してご相談ください。
また、期限内であっても、亡くなった方の財産を売ったり、預金を引き出して使ったりすると、単純承認をしたものとみなされ、放棄ができなくなることがあります(民法921条1号)。期限の心配と同じくらい、財産の扱いにも注意が必要です。くわしくは、冒頭でご紹介した相続放棄の記事をご覧ください。
6. 期限までにすること
- 知った日を書き留める:亡くなったことと、自分が相続人になったことを、いつ・どのように知ったかをメモし、手紙やメールは残します
- 期限をカレンダーに書く:2章の数え方で期限を出し、その2週間ほど前を「出す日」の目安にします
- 財産と借金を調べる:通帳、郵便物、督促状、固定資産税の通知書、保険の書類などを確かめます。借金は、信用情報機関に開示を求めて調べる方法もあります
- 戸籍を集める:亡くなった方の死亡の記載のある戸籍、自分の戸籍などを取ります。第2・第3順位の方は、亡くなった方の生まれてから亡くなるまでの戸籍なども必要です
- 決める・出す:放棄をする場合は申述書を出します(収入印紙800円分と郵便切手)。決められない場合は、期限内に伸長を申し立てます
- 放棄した後:次の順位の方に知らせます。空き家などを自分が管理している場合は、引き渡すまで管理する義務が残ることがあります(民法940条)

放棄をした後の空き家の管理の義務については、次の記事で詳しく説明しています。

「借金はないけれど、遺産はいらない」という場合には、家庭裁判所の相続放棄のほかにも方法があります。

よくある質問
- 相続放棄の期間は、亡くなった日から3か月ですか?
-
いいえ。亡くなったことと、自分が相続人になったことを知った時から3か月です。知った日は数えず、翌日から数えます。亡くなったその日に知った場合は、結果として亡くなった日の翌日から数えることになります。
- 第三順位(兄弟姉妹)の相続放棄の期限は、いつからですか?
-
子や親など先の順位の人が全員放棄をして(または初めからいなくて)、自分が相続人になったと知った時から3か月です。亡くなってから何か月もたっていても、その時から数えます。いつ知ったかが分かる手紙などは残しておきましょう。
- 期限の日に郵便で出せば間に合いますか?
-
間に合わないおそれがあります。期限の日までに家庭裁判所に届いている必要があると考えて、数日前には届くように送ってください。期限の日が土日・祝日・年末年始に当たる場合でも、休日をあてにせず早めに出すのが安全です。
- 3か月を過ぎてしまいました。もう相続放棄はできませんか?
-
原則として、相続したものとみなされます。ただし、財産が全くないと信じ、そう信じたことに相当な理由がある場合などは、財産があると分かった時から3か月以内に申述すれば、受理されることもあります。事情を整理して、早めにご相談ください。
- 相続放棄の手続きは、司法書士に頼むべきか判断に迷います。
-
自分で手続きをすることもできます。期限の数え方に迷う場合、第2・第3順位で戸籍が多く必要な場合、3か月を過ぎていて事情の説明が必要な場合などは、専門家に相談すると安心です。司法書士は、家庭裁判所に出す申述書や伸長の申立書などの書類を作成できます(司法書士法3条1項4号)。
まとめ
相続放棄の期限は、亡くなった日からではなく、「亡くなったこと」と「自分が相続人になったこと」を知った時から3か月です。知った日の翌日から数え、3か月後の同じ日の前日が期限になります。第2・第3順位の方や、再転相続、未成年の相続人など、立場によって数え始めが変わります。
3か月で決められないときは、期限内に家庭裁判所へ期間の伸長を申し立てることができます。期限が近い、日付の数え方に自信がないという場合は、まず「知った日」を書き留め、早めに動き出すことが大切です。
相続放棄の期限や手続きのご相談は、西宮北口のシアエスト司法書士・行政書士事務所でもお受けしています。いつ知ったかの整理と期限の確認から、戸籍の取り寄せ、申述書や伸長の申立書の作成まで、順を追ってご案内します。
出典・参考
- 民法 140条・141条・142条・143条・915条・916条・917条・921条・938条・940条(e-Gov法令検索)
- 裁判所の休日に関する法律 1条(e-Gov法令検索)
- 司法書士法 3条(e-Gov法令検索)
- 最高裁判所 昭和59年4月27日判決(民集38巻6号698頁。熟慮期間の起算点)https://www.courts.go.jp/hanrei/52168/detail2/index.html
- 最高裁判所 令和元年8月9日判決(民法916条の「知った時」の意義)https://www.courts.go.jp/hanrei/88855/detail2/index.html
- 裁判所「相続の放棄の申述」https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_13/index.html
- 裁判所「相続の承認又は放棄の期間の伸長」https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_25/index.html
- 裁判所「裁判手続 家事事件Q&A」https://www.courts.go.jp/saiban/qa/qa_kazi/index.html
- 法務省「令和8年熊本地震の被災者である相続人の方々へ」https://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00413.html

