※本記事は2026年10月時点の法令にもとづいて解説しています。
離婚にともなって、夫婦の一方の名義の家や土地を、もう一方に渡すことがあります。これを「財産分与」といい、名義を変えるには法務局で登記をします。
財産分与の登記は、話し合いがまとまれば手続き自体はむずかしくありません。ただ、住宅ローンが残っている家、離婚の前後どちらで名義を移すか、税金のかかり方など、先に知っておかないと後で困る点がいくつかあります。また、2026年4月1日から、財産分与のルールも一部変わりました。
この記事では、財産分与の基本と2026年の改正、協議書の作り方、登記の手続きと費用、住宅ローンと税金の注意点を順にお話しします。
先に結論:名義は「離婚が成立してから」「協議書をつくって」移します
- 財産分与は、婚姻中に夫婦で築いた財産を、離婚のときに分けることです。2026年4月1日以後に離婚した場合、家庭裁判所に求められる期限は離婚から5年です(それより前の離婚は2年のまま)
- 家の名義を移す登記は、原則として渡す側と受け取る側が一緒に申請します。登録免許税は固定資産税評価額の2%です
- 調停調書や審判、判決で「登記手続をする」と決まっていれば、受け取る側だけで申請できます。公正証書の協議書だけでは、相手の協力なしに登記はできません
- 住宅ローンが残っている家は、名義を変えても債務者は変わりません。名義を変える前に、金融機関に相談します
- 受け取る側には、原則として贈与税はかかりません。渡す側には、家の値上がり分に譲渡所得税がかかることがあります
1. 財産分与とは?2026年4月の改正点
分ける財産・分けない財産
財産分与は、離婚した夫婦の一方が、もう一方に財産の分与を求めることができる制度です(民法768条)。
| 分ける財産(共有財産) | 分けない財産(特有財産) |
|---|---|
| 婚姻中に夫婦で築いた財産。名義がどちらかは問わない(家・土地、預貯金、株式、自動車、保険の解約返戻金、退職金の一部など) | 結婚前から持っていた財産、婚姻中に親から相続したり贈与を受けたりした財産 |
住宅ローンなどの借金も、分け方を考えるときに差し引いて考えます。家の価値よりローンの残りが多い家(オーバーローン)をどう扱うかは、話し合いで決めます。
分け方は、夫婦の話し合いで自由に決められます。話し合いがまとまらないときは、家庭裁判所の調停や審判で決めます。
2026年4月1日からの改正(民法等の一部を改正する法律・令和6年法律第33号)
| 改正点 | 内容 |
|---|---|
| 請求の期限 | 家庭裁判所に財産分与を求められる期限が、離婚から2年→5年に(民法768条2項)。2026年3月31日までに離婚した場合は、2年のまま(改正法附則4条) |
| 考える事情 | 家庭裁判所が考える事情(婚姻中に取得・維持した財産の額、それぞれの寄与の程度、婚姻の期間、生活水準、年齢、収入など)が条文に書かれた(民法768条3項) |
| 2分の1 | 財産を築いたことへの夫婦それぞれの寄与は、違いがはっきりしなければ等しい(2分の1ずつ)とされた(民法768条3項) |
| 財産の開示 | 家庭裁判所が、相手に財産の状況を明らかにするよう命じられるようになった。正当な理由なく応じないと10万円以下の過料(家事事件手続法152条の2) |
期限は「離婚した日」で決まります。たとえば2025年10月に離婚した方は、期限は2027年10月です(2年)。期限を過ぎると、家庭裁判所に求めることはできません。期限が近い方は、早めに動きます。
2. 離婚のときに決めること(2026年4月以後)
財産分与のほかにも、離婚のときに決めておくことがあります。2026年4月1日から変わったところも含めて、一覧にします。
| 決めること | ポイント |
|---|---|
| 親権 | 離婚後も父母の双方を親権者にするか、どちらか一方にするかを決める(民法819条1項)。決まらなくても、家庭裁判所に親権者を決める調停・審判を申し立てていれば、離婚届を受理してもらえる(民法765条1項) |
| 養育費 | 取り決めがなくても、子を主に世話している親は、子1人あたり月2万円の「法定養育費」を請求できる(2026年4月1日以後の離婚。民法766条の3)。子1人あたり月8万円までは、公正証書などがなくても差押えの手続きを取りやすくなった |
| 親子交流 | 会う頻度や方法を、子の利益を優先して決める |
| 慰謝料 | 不貞行為や暴力などがあった場合。損害と加害者を知った時から3年で時効(民法724条) |
| 年金分割 | 婚姻期間中の厚生年金の記録を分ける。請求は離婚の翌日から5年以内(2026年4月1日より前の離婚は2年) |
2026年3月31日までに離婚した方も、子の利益のため必要があれば、家庭裁判所に親権者の変更を申し立て、父母の双方を親権者とすることを求められます(民法819条6項)。
なお、司法書士は、財産分与の登記の手続きや、家庭裁判所に出す書類の作成はお手伝いできますが、相手との交渉を代わりに行うことはできません。相手と争いがある場合は、弁護士への相談をおすすめします。
3. 財産分与の協議書に書くこと
話し合いで財産分与を決めたら、内容を「財産分与協議書」(離婚協議書の中の1項目でもかまいません)にまとめます。不動産を渡す場合は、次の点をはっきり書きます。
- どの不動産か:登記簿(登記事項証明書)のとおりに、土地は所在・地番・地目・地積、建物は所在・家屋番号・種類・構造・床面積を書きます。持分を渡す場合は、その持分も書きます
- 財産分与として渡すこと:「甲は乙に対し、財産分与として、本件不動産を譲渡する」など
- 登記に協力すること:渡す側が、所有権移転登記の手続きに協力すること。登記の費用をどちらが負担するか
- 住宅ローンの扱い:誰が払い続けるか。借換えや完済の予定(5章)
- 引渡しの時期、固定資産税の負担:いつ家を明け渡すか、その年の固定資産税をどう分けるか
- これで終わりにすること:ほかに請求し合わないこと(清算条項)
公正証書にすればよい?
養育費や代償金などのお金の支払いは、「支払わないときは強制執行を受けても異議はない」という一文(強制執行認諾文言)を入れた公正証書にしておくと、裁判をしなくても差押えの手続きができます(民事執行法22条5号)。
ただし、強制執行できるのはお金などの支払いに限られます。公正証書で「登記に協力する」と約束していても、相手が書類に判を押してくれなければ、それだけでは登記はできません。相手の協力が心配な場合は、離婚と同時に登記の書類までそろえておくか、家庭裁判所の調停で決めておく方法を考えます。

4. 財産分与の登記の手続きと費用
いつ名義を移す?離婚が成立してから
財産分与は、離婚によって生じるものです。離婚届を出す前に名義を移すと、財産分与ではなく夫婦間の贈与として扱われ、贈与税がかかるおそれがあります。
離婚の前に財産分与の約束をしておいた場合は、登記の原因の日付は離婚した日になります。離婚した後に話し合いがまとまった場合は、まとまった日です。
原則は2人で申請します
財産分与による所有権移転の登記は、受け取る側(登記権利者)と渡す側(登記義務者)が共同で申請します(不動産登記法60条)。司法書士に頼む場合は、2人とも司法書士に委任します。
調停調書・審判・判決で、相手が「所有権移転登記手続をする」と決まっているときは、受け取る側だけで申請できます(不動産登記法63条1項、家事事件手続法75条・268条、民事執行法177条)。調停で決める場合は、調書にこの一文が入っているかを確かめます。
必要な書類
| 用意する人 | 書類 |
|---|---|
| 渡す側 | 登記識別情報通知(または登記済権利証)、印鑑証明書(発行から3か月以内)、実印 |
| 受け取る側 | 住民票の写し |
| 共通 | 固定資産評価証明書(登録免許税の計算に使う)、財産分与協議書など(登記原因証明情報)。離婚の日を示すため、離婚の記載のある戸籍謄本を用意することもあります |
| 司法書士に頼む場合 | 委任状(2人とも)、本人確認書類(運転免許証など) |
調停調書などで受け取る側だけが申請する場合は、渡す側の登記識別情報や印鑑証明書は要りません。
登記簿に載っている渡す側の住所や氏名が今と違う場合(引っ越した、旧姓に戻った、など)は、先に住所や氏名の変更の登記が必要です。
登録免許税と費用の目安
財産分与による所有権移転の登録免許税は、固定資産税評価額の2%です(登録免許税法別表第一1(2)ハ)。相続のときの0.4%より高くなります。
たとえば、土地の評価額が1,200万円、建物が300万円なら、(1,200万円+300万円)×2%=30万円です。持分の一部を渡す場合は、その持分にあたる評価額で計算します。
ほかに、書類の取得費用と、司法書士に頼む場合はその報酬がかかります。登記は自分で申請することもできます。

登記が終わると、受け取った側に新しい登記識別情報通知が発行されます。大切に保管してください。

離婚後の住所・氏名の変更も義務に
2026年4月1日から、登記簿の住所や氏名が変わったときは、変わった日から2年以内に変更の登記をすることが義務になりました(不動産登記法76条の5)。財産分与で家を受け取らなくても、自分の名義の不動産を持っていて、離婚で旧姓に戻ったり引っ越したりした方は、変更の登記が必要です。

5. 住宅ローンが残っている家の注意点
名義を変えても、債務者は変わりません
夫が所有者で、住宅ローンの債務者でもある家を、財産分与で妻の名義にしても、ローンの債務者は夫のままです。家には金融機関の抵当権も付いたままです。夫が返済をやめると、家が競売にかけられるおそれがあります。
また、住宅ローンの契約では、担保の家の名義を変える前に、金融機関の承諾を得ることが求められていることがあります。承諾なしに名義を変えると、契約違反として一括返済を求められるおそれもあるため、まず契約書を確かめ、金融機関に相談します。
よく考えられる方法
| 方法 | 注意点 |
|---|---|
| 家を売って、残ったお金を分ける | ローンの残りより高く売れることが前提 |
| 受け取る側が、自分の名義で借り換える | 受け取る側の収入で審査に通る必要がある |
| 渡す側がローンを払い続け、名義も当面そのまま | 完済後に名義を移す約束を協議書に書く。相手の返済が止まるリスクが残る |
| ローンの完済を待って名義を移す約束をし、仮登記で備える | 仮登記にも金融機関の承諾が要ることがある。期限の管理が必要 |
夫婦の共有名義の家や、ペアローン、連帯債務、連帯保証になっている場合は、離婚しても金融機関との関係は自動では外れません。どの方法がよいかは、金融機関の考えと、ご夫婦の収入や住まいの予定で変わります。
ローンを完済したら、抵当権の抹消の登記も忘れずに行います。

6. 財産分与の税金
受け取る側:贈与税は原則かかりません
離婚で相手から財産を受け取っても、通常、贈与税はかかりません。贈与ではなく、財産分与の請求権にもとづいて受け取るものと考えられるからです(国税庁タックスアンサーNo.4414)。
ただし、次の場合は贈与税がかかります。
- 婚姻中に夫婦の協力で得た財産の額などを考えても、分与の額が多すぎる場合(多すぎる部分)
- 離婚が、贈与税や相続税を免れるために行われたと認められる場合(受け取った財産すべて)
受け取った家を将来売るときは、財産分与を受けた日に、そのときの時価で取得したものとして計算します(国税庁タックスアンサーNo.3114)。
受け取る側:不動産取得税
不動産取得税は、財産分与のうち、夫婦で築いた財産を清算する部分であれば、かからない扱いとされることが一般的です。一方、離婚後の生活の支えや慰謝料の意味あいで受け取った部分には、かかる場合があります。分与の意味あいによって変わるため、協議書に「財産分与として」と書いておき、県税事務所に確かめておくと安心です。
渡す側:譲渡所得税がかかることがあります
家や土地を財産分与で渡すと、渡す側が、分与したときの時価で家を売ったものとして、譲渡所得の税金の計算をします(国税庁タックスアンサーNo.3114)。買ったときより値上がりしていれば、その差額に所得税・住民税がかかることがあります。
自分が住んでいた家を渡す場合は、「マイホームを売ったときの3,000万円の特別控除」(租税特別措置法35条)を使える場合があります。この特例は、配偶者に渡す場合には使えません(租税特別措置法施行令23条2項・20条の3)。そのため、離婚が成立してから財産分与をすることが前提になります。ほかにも住まなくなってからの期間などの条件があるため、確定申告の前に、税務署か税理士に確かめてください。
7. 手続きの流れ(まとめ)
- 財産と名義を確かめる:登記簿で、家の名義、持分、抵当権を確認します
- 住宅ローンを確かめる:残高、債務者、連帯保証や連帯債務の有無、名義変更に承諾が要るか
- 話し合う:誰が家を受け取るか、ローンをどうするか。まとまらなければ家庭裁判所の調停へ
- 協議書をつくる:不動産の表示、登記への協力、ローンの扱いを書きます
- 離婚届を出す
- 財産分与の登記をする:書類をそろえて法務局に申請します。西宮市の不動産は、神戸地方法務局西宮支局の管轄です
- 税金の申告を確かめる:渡す側は譲渡所得の申告が要るか、受け取る側は不動産取得税

よくある質問
- 財産分与の登記は、司法書士に頼まないとできませんか?
-
ご自分で申請することもできます。ただ、2人で申請する書類のやりとりや、住宅ローンが残る家の扱いで迷うことがあります。司法書士は、財産分与の登記の手続きを代わりに行うことができます。
- 財産分与の登記の費用はどのくらいかかりますか?
-
登録免許税が固定資産税評価額の2%かかります(評価額1,500万円なら30万円)。ほかに、書類の取得費用と、司法書士に頼む場合はその報酬がかかります。
- 財産分与の手続きに期限はありますか?
-
家庭裁判所に財産分与を求められるのは、2026年4月1日以後の離婚なら離婚から5年、それより前の離婚なら2年までです。期限を過ぎた後に話し合いで分ける場合は、税金の扱いを含めて慎重に確かめる必要があります。
- 離婚届を出す前に、家の名義を変えてもいいですか?
-
離婚前に名義を移すと、財産分与ではなく夫婦間の贈与として扱われ、贈与税がかかるおそれがあります。渡す側のマイホームの3,000万円特別控除も使えません。協議書は離婚前に作っておき、登記は離婚が成立してから行うのが基本です。
- 相手が登記に協力してくれません。どうすればいいですか?
-
家庭裁判所の調停や審判で財産分与を決め、調書や審判に「所有権移転登記手続をする」と入れば、受け取る側だけで登記を申請できます。期限(離婚から5年、2026年3月31日までの離婚は2年)に気をつけてください。相手との交渉は弁護士の役割です。
まとめ
財産分与で家の名義を変えるときは、離婚が成立してから、協議書にもとづいて登記をします。登録免許税は評価額の2%で、原則は2人で申請します。相手の協力が心配な場合は、調停などで「登記手続をする」と決めておけば、受け取る側だけで申請できます。
住宅ローンが残る家は、名義を変えても債務者は変わらないため、金融機関への相談が欠かせません。税金は、受け取る側の贈与税は原則かからない一方、渡す側に譲渡所得税がかかることがあります。2026年4月1日以後の離婚は請求の期限が5年に延びましたが、話し合いは早めに始めるのが安心です。
離婚にともなう財産分与の登記のご相談は、西宮北口のシアエスト司法書士・行政書士事務所でもお受けしています。登記簿の確認から、協議書の不動産の書き方、住宅ローンが残る場合の進め方、登記の申請まで、状況に合わせて一緒に整理します。
出典・参考
- 民法 724条・765条・766条の3・768条・819条(e-Gov法令検索)
- 民法等の一部を改正する法律(令和6年法律第33号)附則4条、法務省「民法等の一部を改正する法律(父母の離婚後等の子の養育に関する見直し)について〔令和8年4月1日施行〕」
- 家事事件手続法 75条・152条の2・268条(e-Gov法令検索)
- 不動産登記法 60条・63条・76条の5(e-Gov法令検索)
- 民事執行法 22条・177条(e-Gov法令検索)
- 登録免許税法 別表第一(e-Gov法令検索)
- 租税特別措置法 35条、同法施行令 20条の3・23条(e-Gov法令検索)
- 国税庁 タックスアンサー No.3114(離婚して土地建物などを渡したとき)・No.4414(離婚して財産をもらったとき)(令和8年4月1日現在の法令等)
- 日本年金機構「離婚時の年金分割」

