
※本記事は2026年10月時点の情報に基づいて解説しています。
戸籍の束、遺産分割協議書、印鑑証明書。相続登記のために集めた書類は、銀行や証券会社、相続税の申告でも使います。「法務局に出したら、もう返ってこないの?」「コピーはどう綴じて、どの順番で出せばいいの?」と、手が止まってしまう方も多いと思います。
書類は「原本還付(げんぽんかんぷ)」という手続をすれば、登記の審査が終わったあとに返してもらえます。この記事では、法務省のご案内(登記手続ハンドブック・令和8年4月版)に沿って、コピーの作り方、「原本に相違ありません」の書き方、綴じ方と並べる順番、契印(けいいん)の押し方を、順にお話しします。
原本還付は、ルールさえ分かれば難しい手続ではありません。私は、ご自身で申請される方には「戸籍は相続関係説明図、それ以外はコピー」と、まず全体の形をお伝えするようにしています。
この記事のポイント
- 返してほしい書類はコピーを作り、「原本に相違ありません」と書いて、申請書に押印した申請人が署名(記名)押印します。複数枚なら、つづり目ごとに契印します。
- 綴じ方は「申請書+収入印紙を貼った台紙」を左側2か所でホチキスどめし、そのうしろに添付書類をクリップでまとめます。
- 戸籍謄本・除籍謄本は、相続関係説明図を出せばコピーは要りません。遺産分割協議書・印鑑証明書・住民票などはコピーが必要です。
原本還付とは
原本還付とは、申請書に添付した書類の原本を、登記の調査が終わったあとに返してもらう手続です(不動産登記規則55条)。原本と一緒にコピーを出し、登記官が両方を見比べて同じであることを確かめたうえで、原本を返し、コピーを法務局に残します。
別に「還付請求書」を作る必要はありません。コピーを添えて出すこと自体が、還付の請求になります。
ただし、次の2点に気をつけてください。
- 原本が戻るのは、審査が終わってからです(同条3項)。申請したその場では返ってきません。その間に銀行の手続を急ぎたい場合は、後で触れる「法定相続情報証明制度」も検討してください。
- 還付の請求は、申請と同時にするのが原則です。登記が終わったあとでは、返してもらえないことがあります。
返してもらえる書類・返ってこない書類
相続登記でよく使う書類を、表にまとめます。
| 書類 | 原本還付 | コピーの要否 |
|---|---|---|
| 戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍 | できる | 相続関係説明図を出せば不要 |
| 被相続人の住民票の除票・戸籍の附票 | できる | 必要 |
| 遺産分割協議書 | できる | 必要 |
| 遺産分割協議書に付けた印鑑証明書 | できる | 必要 |
| 不動産を取得する人の住民票 | できる | 必要 |
| 登記申請書・委任状・相続関係説明図 | できない | ― |
委任状のように「その登記のためだけに作った書類」は、返してもらえません(不動産登記規則55条1項ただし書)。申請書と相続関係説明図も、そのまま法務局に残ります。
固定資産評価証明書(または固定資産税の課税明細書)は、登録免許税の計算のもとになる価格を確かめるための資料です。コピーでよいとしている法務局もあります(大津地方法務局のチェックシートなど)。扱いは管轄の法務局に確かめてください。
原本還付の手順(コピー→記載→契印)

1. コピーを取る
返してほしい書類を、すべてのページ、原寸大(等倍)でコピーします。法務局の申請書類はA4・片面が基本なので、裏面に記載がある書類は、裏面も1枚として片面でコピーしておくと扱いやすくなります。
2. 「原本に相違ありません」と書いて、署名(記名)押印する
コピーの1枚目の余白に、次のように書きます。
(記載例)
この写しは原本に相違ありません。
令和○年○月○日
申請人 ○○市○○町○番地 法務一郎 ㊞
法務省のハンドブックでは、「登記申請書に押印した申請人が、そのコピーに署名(記名)押印する」と案内されています。印鑑は、申請書に押したものと同じ印を使ってください。実印でなくてもかまいません(相続登記の申請書の押印は認印で可とされています)。
書類ごとにコピーを分けて、それぞれの1枚目に書くのがいちばん分かりやすい方法です。実務では、返してほしいコピーをまとめて1つの束にし、1枚目にまとめて書く方法も使われています。
3. ホチキスでとめて、つづり目に契印する
コピーが2枚以上になるときは、左側の余白を2か所ホチキスでとめ、各ページのつづり目(ページとページの境目)に、2で使った印鑑で契印をします。1枚目と2枚目の境目、2枚目と3枚目の境目……と、境目ごとに1つずつ押していきます。
コピーに押す契印は、申請人1人の印で足ります。これは、遺産分割協議書そのもの(原本)に相続人全員が実印で押す契印とは別物です。原本の契印は協議書を作るときに済ませておくもので、原本還付のための契印とは混同しないようにしてください。
綴じ方と並べる順番
法務省のハンドブックでは、次のように案内されています。
- 申請書と収入印紙等貼付台紙(登録免許税の印紙を貼った紙)は、重ねて左側の余白を2か所ホチキスでとめる。
- 添付書類は、そのうしろにクリップでとめるなどしてまとめる。
- 全体を「左とじ」で出す。
並べる順番は法令で決まってはいませんが、私は次の順をおすすめしています。
| 順番 | 書類 | まとめ方 |
|---|---|---|
| 1 | 登記申請書(2枚以上なら全部) | ホチキス2か所+つづり目に契印 |
| 2 | 収入印紙等貼付台紙 | 1と一緒にホチキス、申請書との間に契印 |
| 3 | 委任状(代理人が申請する場合) | ここからクリップ |
| 4 | 相続関係説明図 | 〃 |
| 5 | 原本還付用のコピーの束 | 記載・署名(記名)押印・契印を済ませたもの |
| 6 | 原本(戸籍一式・遺産分割協議書・印鑑証明書・住民票など) | 別の束にしてクリップ |
収入印紙そのものには、割印や消印をしないでください。申請書と台紙の間の契印は、つづり目にまたがるように押します。
原本には、パンチで穴を開けないでください。原本はコピーと分けて、クリップでまとめておくと、法務局でも照合しやすくなります。市区町村が複数枚をとじて交付した戸籍は、ホチキスを外さずにそのまま出してください。
申請書が2枚以上になったとき
申請書が2枚以上になったときは、ホチキスでとめ、各用紙のつづり目に契印をします(不動産登記規則46条1項)。申請人が2人以上いても、そのうちの1人が押せば足ります(同条2項)。印は、申請書に押したものと同じ印を使います。
戸籍のコピーを省く「相続関係説明図」
被相続人(亡くなった方)の出生から死亡までの戸籍は、何十枚にもなることがあります。これを全部コピーして契印するのは大変です。
相続登記では、「相続関係説明図」(家系図のような形で、誰が亡くなり、誰が相続人かを示した図)を出せば、戸籍謄本・除籍謄本のコピーを作らなくても、原本を返してもらえます。法務省のハンドブックでも、「この場合には、戸籍の証明書のコピーの作成・提出は不要」と案内されています。
ただし、この扱いは戸籍謄本・除籍謄本(改製原戸籍を含みます)だけです。被相続人の住民票の除票や戸籍の附票、遺産分割協議書、印鑑証明書、住民票は、これまでどおりコピーが必要です。
相続関係説明図に書くこと
- 被相続人:氏名、最後の住所、死亡日(本籍や登記上の住所を書き添えることもあります)
- 相続人:氏名、住所、生年月日、続柄
- 遺産分割の結果:不動産を取得しない人の名前の下に「(分割)」と書き添える(法務局の記載例)
法務局の申請書様式のページに、記載例が載っています。
法定相続情報証明制度も検討を
銀行や証券会社など、手続先が多い方には「法定相続情報証明制度」も便利です。戸籍の束と、相続関係を一覧にした図(法定相続情報一覧図)を法務局に出すと、登記官が認証した一覧図の写しを、無料で必要な通数交付してもらえます。
- 戸籍の束の代わりに、一覧図の写しを各窓口に出せます(受け付けるかは提出先しだい)。
- 相続登記では、一覧図の写しを出すか、申請書に「法定相続情報番号」を書けば、戸籍の添付に代えられます(不動産登記規則37条の3)。番号を書く方法は、2024年4月1日から使えるようになりました。
- 一覧図に相続人の住所が書かれていれば、住民票の添付も省略できます(同条2項)。
一方で、遺産分割協議書と印鑑証明書は、一覧図では代わりになりません。こちらは原本還付を使うか、各手続に合わせて用意することになります。
原本の受け取り方
窓口で受け取る
登記が完了したら、法務局の窓口で受け取れます。法務省のハンドブックでは、申請書に押したものと同じ印鑑が必要とされています。持ち物は、念のため管轄の法務局に確かめておくと安心です。
郵送で受け取る
郵送で受け取る場合は、宛名を書いた返信用封筒と郵便切手を、申請書と一緒に出します。申請書の余白に「登記識別情報通知書及び原本還付書類の送付を希望します。送付先:申請人の住所」のように書いておくと確実です(原本の送付には、申出と送付先の住所が必要です。不動産登記規則55条6項)。
- 登記識別情報通知書(いわゆる権利証にあたるもの)も一緒に受け取る場合:本人限定受取郵便(書留料+本人限定受取郵便の料金)
- 登記識別情報の通知を希望しない場合(登記完了証と原本だけ):書留郵便
原本の束が厚いと、郵便料金も上がります。料金は日本郵便の案内で確かめ、少し多めに切手を入れておくと安心です。登記識別情報通知書は本人限定受取郵便で送られるため、レターパックは使えません。
よくある質問
- 相続登記の原本還付で、コピーはどの順番で綴じればいいですか?
-
「申請書(2枚以上なら全部)+収入印紙等貼付台紙」を左側2か所でホチキスどめし、そのうしろに委任状、相続関係説明図、原本還付用のコピー、原本の順でクリップでまとめるのがおすすめです。順番が法令で決まっているわけではありませんが、法務局でも確認しやすくなります。
- 「原本に相違ありません」は、誰が書いて、どの印鑑を押しますか?
-
登記申請書に押印した申請人が、コピーの余白に「原本に相違ありません」と書き、署名(記名)押印します。印鑑は申請書と同じ印で、認印でかまいません。コピーが複数枚なら、つづり目ごとに契印もします。
- 原本還付のコピーに、押印は不要になったのではありませんか?
-
法令(不動産登記規則55条2項)は「原本と相違ない旨を記載した謄本」とだけ定めていますが、不動産登記について法務省が出しているハンドブック(令和8年4月版)では、署名(記名)押印と契印をするよう案内されています。商業登記では押印不要の案内もあるため混同しやすいところですが、相続登記では押印しておくのが確実です。
- 登記申請書が2枚になった場合、どうすればいいですか?
-
2枚をホチキスでとめ、つづり目に申請書と同じ印で契印をします。申請人が2人以上でも、1人が押せば足ります。収入印紙を貼った台紙と申請書の間にも契印が必要です。
- 戸籍謄本もすべてコピーしなければいけませんか?
-
相続関係説明図を出せば、戸籍謄本・除籍謄本のコピーは不要です。住民票の除票や戸籍の附票、遺産分割協議書、印鑑証明書などは、コピーが必要です。
- 申請したあとで、原本を返してほしくなったら?
-
原本還付は、申請と同時に請求するのが原則です。あとから頼みたいときは、できるだけ早く申請先の法務局にご相談ください。申請のときに、返してほしい書類はすべてコピーを添えておきましょう。
まとめ
原本還付は、「コピーに『原本に相違ありません』と書いて署名(記名)押印し、つづり目に契印する」「申請書と印紙の台紙はホチキス、添付書類はクリップ」という2つの形を押さえれば、ご自身でも十分に進められます。戸籍は相続関係説明図、手続先が多いときは法定相続情報証明制度と、上手に組み合わせてください。
書類の準備で迷われたら、出す前に一度ご相談ください。提出前に確認しておくことで、補正(出し直し)の手間を減らすことができます。
シアエスト司法書士・行政書士事務所は、阪急西宮北口駅から徒歩3分。西宮市を中心に、芦屋・宝塚・尼崎・神戸など阪神間で、相続登記、戸籍の収集、法定相続情報一覧図の取得、遺産分割協議書の作成を承っています(TEL 0798-31-5930)。



(参考)
- 不動産登記規則37条の3・46条・47条・55条(e-Gov法令検索)https://laws.e-gov.go.jp/law/417M60000010018
- 法務省民事局「登記申請手続のご案内(相続登記①/遺産分割協議編)」令和8年4月(登記手続ハンドブック)https://www.moj.go.jp/content/001436489.pdf
- 法務局「不動産登記の申請書様式について」(2026年1月7日更新)https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/minji79.html
- 法務局「所有権移転登記申請書(相続・遺産分割)記載例」https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/content/001469880.pdf
- 法務局「申請情報と併せて提供する情報は原本でなければならないのですか?」(情報番号1307)https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/content/000130968.pdf
- 大津地方法務局「相続登記チェックシート(遺産分割協議を行う場合)」https://houmukyoku.moj.go.jp/otsu/content/001437041.pdf
- 岡山地方法務局「商業・法人登記における原本還付の取扱いについて」https://houmukyoku.moj.go.jp/okayama/content/001408515.pdf
- 法務局「法定相続情報証明制度について」https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/page7_000013.html
- 平成17年2月25日民二第457号民事局長通達(相続関係説明図を戸籍謄本等の謄本として扱う取扱い)


