※本記事は2026年10月時点の法令にもとづいて解説しています。
「父の生命保険金は、相続税がかかるのでしょうか。」「実家の仏壇やお墓も、遺産として計算に入れるのでしょうか。」
相続の手続きを始めると、こうした疑問が出てきます。相続税は、亡くなった方の財産をすべて合計して計算するのが基本ですが、法律で「相続税がかからない」とされている財産もあります。これを「非課税財産」といいます。
この記事では、国税庁の案内にもとづいて、相続税の非課税財産の一覧と、それぞれの注意点をお話しします。あわせて、非課税財産と「控除・特例」の違い、相続の手続きとの関係もお伝えします。なお、実際に相続税がかかるかどうか、税額がいくらになるかの判断は、税理士にご確認ください。
先に結論:相続税の非課税財産で押さえておきたいこと
- お墓・仏壇・仏具など日常礼拝に使うものは、相続税がかかりません。ただし、骨とう的な価値があるものや投資用のものは除かれます
- 生命保険金と死亡退職金は、それぞれ「500万円×法定相続人の数」までの部分に相続税がかかりません。受け取った人が相続人であることが条件で、相続を放棄した人には使えません
- 相続した財産を、相続税の申告期限までに国・地方公共団体・一定の公益法人・認定NPO法人などに寄附すると、その財産には相続税がかかりません
- 非課税財産と、配偶者の税額軽減・小規模宅地等の特例などの「控除・特例」は別のものです。特例は、税額がゼロになっても申告が要ることがあります
- どの財産が非課税になるかは、遺産分割や相続登記の進め方にも関わります。税額の判断は税理士へ、手続き全体は早めに整理しておくと安心です
1. 非課税財産と「控除・特例」の違い
相続税を軽くする制度には、大きく分けて「非課税財産」と「控除・特例」があります。この2つは考え方が違います。
| 種類 | 考え方 | 例 |
|---|---|---|
| 非課税財産 | はじめから相続税の計算に入れない財産 | お墓・仏壇、生命保険金の一定額、申告期限までに寄附した財産 |
| 控除・特例 | 財産の評価額や税額を一定のルールで減らす | 基礎控除、配偶者の税額軽減、小規模宅地等の特例 |
相続税がかかるかどうかは、まず、亡くなった方の財産から非課税財産や借金・葬式費用などを差し引き、その合計が基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超えるかどうかで考えます。基礎控除額の範囲内であれば、申告も納税も必要ありません。
一方、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例は、相続税の申告書を出して初めて使えるしくみです。「特例を使えば税額はゼロになるから申告はいらない」とはならない点に気をつけたいところです(この点は9章でお話しします)。
2. 相続税がかからない財産の一覧
国税庁の案内(タックスアンサーNo.4108、令和8年4月1日現在の法令等)では、相続税がかからない財産として、主に次のものが挙げられています。
| 財産 | ポイント |
|---|---|
| お墓・仏壇・仏具など | 日常礼拝に使うもの。骨とう的価値があるもの、投資用・商品用のものは除く |
| 公益事業に使う財産 | 宗教・慈善・学術などの公益事業を行う一定の個人などが取得し、公益事業に使うことが確実なもの |
| 心身障害者共済制度にもとづく給付金を受ける権利 | 地方公共団体の条例による制度 |
| 生命保険金 | 500万円×法定相続人の数までの部分 |
| 死亡退職金 | 500万円×法定相続人の数までの部分 |
| 個人経営の幼稚園の事業用財産 | 一定の要件を満たし、相続人の誰かが引き続き経営する場合 |
| 申告期限までに寄附した財産 | 国・地方公共団体・一定の公益法人・認定NPO法人などへの寄附 |
| 申告期限までに公益信託に出した財産 | 公益信託などの信託財産とするために出したもの |
根拠は、相続税法12条と租税特別措置法70条などです。以下、身近なものから順に見ていきます。
3. お墓・仏壇・仏具
墓地や墓石、仏壇、仏具、神棚など、日常的に礼拝に使っているものには相続税がかかりません。
ただし、骨とう的な価値があるものや、投資の対象として持っているもの、商品として持っているものは、非課税になりません。高価な美術品のような仏像や、純金の仏具などは、礼拝用というより財産として持っているとみられて、相続税の対象になることがあります。
お墓や仏壇は、相続財産を分ける遺産分割とは別に、「祭祀(さいし)を主宰する人」が引き継ぐとされています(民法897条)。誰がお墓を引き継ぐかで家族の話し合いがまとまらないこともあります。祭祀を引き継ぐ人の決め方は、下の記事でお話ししています。

なお、「生前にお墓を買っておくと相続税の対策になる」と言われることがあります。現金でお墓を買えば、その分の現金は非課税のお墓に変わるためです。ただ、亡くなった時点で代金が払い終わっていないお墓の代金は、借金として差し引くことができないとされています。生前に買う場合も、ご家族の考えや、お墓を守る人の負担もあわせて考えたいところです。
4. 生命保険金の非課税枠
500万円×法定相続人の数
亡くなった方が保険料を負担していた死亡保険金は、民法の上では受取人の財産とされることが多いのですが、相続税では「相続や遺贈で受け取ったもの」とみなされ、相続税の対象になります(みなし相続財産)。
ただし、受取人が相続人の場合は、すべての相続人が受け取った保険金の合計のうち、次の額までは相続税がかかりません。
非課税限度額=500万円×法定相続人の数
例:法定相続人が3人の場合
妻と子2人が法定相続人のとき、非課税限度額は500万円×3人=1,500万円です。妻が1,200万円、長男が600万円の保険金を受け取った場合、合計1,800万円のうち1,500万円までは相続税がかかりません。非課税の1,500万円は、受け取った額の割合で分けます。
| 受取人 | 受取額 | 非課税の額 | 相続税の対象 |
|---|---|---|---|
| 妻 | 1,200万円 | 1,000万円 | 200万円 |
| 長男 | 600万円 | 500万円 | 100万円 |
気をつけたい点
- 相続人以外の人(たとえば孫や内縁の配偶者など、相続人でない人)が受け取った保険金には、非課税枠は使えません
- 相続を放棄した人も保険金を受け取ることはできますが、その人が受け取った保険金には非課税枠は使えません
- 一方、「法定相続人の数」は、相続を放棄した人がいても、放棄がなかったものとして数えます
- 養子は、実子がいる場合は1人まで、実子がいない場合は2人までしか「法定相続人の数」に入れられません
生命保険金が遺産分割でどう扱われるか、遺留分との関係などは、下の記事で詳しくお話ししています。

5. 死亡退職金の非課税枠
亡くなった方に支払われるはずだった退職金や功労金などを遺族が受け取ったときも、生命保険金と同じく「みなし相続財産」として相続税の対象になります。対象になるのは、亡くなった後3年以内に支給額が決まったものです。
死亡退職金にも、生命保険金とは別に、500万円×法定相続人の数の非課税枠があります。相続人以外の人が受け取った分や、相続を放棄した人が受け取った分に非課税枠が使えない点も、生命保険金と同じです。
勤務先から「功労金」など別の名前で支払われても、実質的に退職金にあたるものは同じように扱われます。一方、「弔慰金」には、一定の額までは相続税の対象にしない別の扱いがあるとされています。勤務先からの通知や支給の明細は、名前だけで判断せずに取っておき、税理士に見てもらうとよいでしょう。
6. 公益事業に使う財産・個人経営の幼稚園
宗教・慈善・学術その他公益を目的とする事業を行う一定の個人などが、相続や遺贈で取得した財産のうち、その公益事業に使うことが確実なものには、相続税がかかりません。また、個人で経営している幼稚園の事業用の財産も、一定の要件を満たし、相続人の誰かが引き続き経営する場合は非課税になります。
いずれも要件が細かく決まっていて、形だけ公益事業を掲げても認められるわけではありません。当てはまりそうな場合は、早めに税理士に相談することをおすすめします。
7. 心身障害者共済制度にもとづく給付金を受ける権利
地方公共団体の条例にもとづく心身障害者共済制度(障害のある方を扶養する保護者が掛金を払い、保護者が亡くなった後などに障害のある方へ年金が支給される制度)により、給付金を受ける権利には相続税がかかりません。
障害のある方のいるご家庭では、相続の財産を一覧にするときに、この制度に加入していたかどうかも確かめておきます。障害のある方が相続人になるときの障害者控除や、親が亡くなった後の生活の備えについては、下の記事もご覧ください。


8. 申告期限までに寄附した財産
非課税になる寄附
相続や遺贈で受け取った財産を、相続税の申告期限までに、次のような先へ寄附した場合、その寄附した財産には相続税がかかりません(租税特別措置法70条)。生命保険金や死亡退職金を寄附した場合も含まれます。
- 国・地方公共団体
- 独立行政法人、国立大学法人、公益社団法人・公益財団法人、社会福祉法人、更生保護法人、一定の学校法人、日本赤十字社など
- 認定NPO法人(その法人の特定非営利活動にかかわる事業に関する寄附)
- 公益信託(公益信託に関する法律にもとづく公益信託)の信託財産とするための支出
気をつけたい点
- 寄附は、相続税の申告期限(亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内)までにする必要があります
- 寄附の時点で、すでに設立されている法人であることが必要です
- 寄附を受けた法人が2年以内に対象の法人でなくなったり、寄附した財産を公益の目的に使わなかったりすると、非課税になりません
- 寄附した人やその親族が、寄附先の法人から特別の利益を受けているなど、相続税の負担を不当に減らす結果になる場合も、非課税になりません
- 非課税を受けるには、相続税の申告書に必要な明細を書き、寄附先から受け取った証明の書類などを付けて申告します
遺言で直接寄附する「遺贈寄附」との違い
ここでお話ししたのは、相続人がいったん相続した財産を寄附する場合のしくみです。これとは別に、亡くなった方が遺言で、公益法人などに直接財産を渡す(遺贈する)方法もあります。この場合は、遺言の書き方や、不動産・株式を渡すときの所得税(みなし譲渡)など、別の注意点があります。遺言で寄附を考えている方は、下の記事もご覧ください。

9. 非課税財産のほかに、税額を下げるしくみ
非課税財産とは別に、相続税を軽くするしくみとして、主に次のものがあります。
| しくみ | 内容 |
|---|---|
| 基礎控除 | 3,000万円+600万円×法定相続人の数までは相続税がかからない |
| 配偶者の税額軽減 | 配偶者が実際に受け取った財産のうち、1億6,000万円と法定相続分のどちらか多い額までは相続税がかからない |
| 小規模宅地等の特例 | 自宅の土地は330㎡まで、事業用の土地は400㎡までを80%減らす、など |
| 未成年者控除・障害者控除など | 相続人の年齢や障害に応じて税額から差し引く |
遺産分割が終わっていないと使えないものがある
配偶者の税額軽減と小規模宅地等の特例は、原則として相続税の申告期限までに遺産分割が終わっていることが必要です。間に合わないときは、「申告期限後3年以内の分割見込書」を付けて申告し、3年以内に分けることで、あとから適用を受けられるしくみがあります。
特例を使うには申告が要る
相続税の申告が要るかどうかは、小規模宅地等の特例を使わない前提で計算した財産の合計が、基礎控除額を超えるかどうかで決まります。特例を使えば税額がゼロになる場合でも、申告書を出さなければ特例は使えません。配偶者の税額軽減も同じく、申告書を出して使うしくみです。
亡くなる前の贈与が相続税の計算に足し戻されるルール(2024年から7年に延びていく加算)や、名義預金の扱いについては、下の記事でお話ししています。


10. 相続の手続きとの関係
相続税の非課税財産や特例は、税金だけの話で終わらず、遺産分割や相続登記の進め方にも関わります。
- 自宅の土地を誰が相続するかで、小規模宅地等の特例を使えるかどうかが変わることがあります
- 配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を使うには、申告期限までに遺産分割をまとめておくことが原則です
- 申告期限までに寄附するなら、10か月の中で寄附先を決め、相続の手続きを進める必要があります
そのため、相続が始まったら、戸籍を集めて相続人を確定し、財産の一覧を作るところまでを早めに進めておくことが大切です。相続税の申告と税額の計算は税理士の仕事、遺産分割協議書の作成や不動産の相続登記は司法書士の仕事と、役割を分けて進めるのが一般的です。相続の手続きの期限や、自宅を誰の名義にするかの考え方は、下の記事もご覧ください。


よくある質問
- 生命保険金は、全額が相続税の対象になりますか。
-
亡くなった方が保険料を負担していた死亡保険金は相続税の対象になりますが、受取人が相続人の場合は、すべての相続人が受け取った合計のうち「500万円×法定相続人の数」までの部分には相続税がかかりません。
- 相続を放棄した子が受け取った生命保険金にも、非課税枠は使えますか。
-
使えません。相続を放棄した人も保険金を受け取ることはできますが、非課税枠は相続人が受け取った保険金にだけ使えます。ただ、非課税枠の計算に使う「法定相続人の数」には、放棄した人も入れて数えます。
- 仏壇やお墓は、遺産分割で分ける必要がありますか。
-
お墓や仏壇などの祭祀のための財産は、遺産分割とは別に、祭祀を主宰する人が引き継ぐとされています(民法897条)。日常礼拝に使うものであれば、相続税もかかりません。
- 相続した預金を寄附したいのですが、いつまでにすればよいですか。
-
相続税の非課税を受けるには、相続税の申告期限(亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内)までに、国・地方公共団体・一定の公益法人・認定NPO法人などに寄附し、申告書で手続きをする必要があります。寄附先が対象になるかは、事前に確かめておきます。
- 相続税がかかるかどうかは、誰に相談すればよいですか。
-
相続税がかかるか、税額がいくらになるかの判断は税理士の仕事です。司法書士は、相続人の調査や遺産分割協議書の作成、不動産の相続登記をお手伝いします。両方が関わる相続では、早い段階で情報を共有しておくと進めやすくなります。
まとめ
相続税の非課税財産には、お墓・仏壇・仏具、公益事業に使う財産、心身障害者共済制度の給付金を受ける権利、生命保険金と死亡退職金のうち500万円×法定相続人の数までの部分、申告期限までに寄附した財産などがあります。
生命保険金と死亡退職金の非課税枠は、相続人が受け取った分にだけ使え、相続を放棄した人や相続人以外の人には使えません。寄附による非課税は、申告期限までの寄附と申告が条件です。非課税財産とは別に、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例もありますが、こちらは遺産分割や申告が前提になります。
税額の判断は税理士に、相続人の調査・遺産分割協議書・相続登記は司法書士に、と役割を分けながら、早めに全体を整理しておくと安心です。
相続人の調査、遺産分割協議書の作成、不動産の相続登記などのご相談は、西宮北口のシアエスト司法書士・行政書士事務所でもお受けしています。
出典・参考
- 国税庁 タックスアンサー No.4108「相続税がかからない財産」(令和8年4月1日現在法令等)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4108.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.4114「相続税の課税対象になる死亡保険金」(令和8年4月1日現在法令等)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4114.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.4117「相続税の課税対象になる死亡退職金」(令和8年4月1日現在法令等)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4117.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.4141「相続財産を公益法人などに寄附したとき」(令和8年7月1日現在法令等)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4141.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.4152「相続税の計算」(令和8年4月1日現在法令等)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4152.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.4158「配偶者の税額の軽減」(令和8年4月1日現在法令等)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4158.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.4124「相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」(令和8年4月1日現在法令等)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4124.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.4205「相続税の申告と納税」(令和8年4月1日現在法令等)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4205.htm

