
親が亡くなって、悲しみが少し落ち着いたころには、相続の期限がいくつも過ぎかけています。「3ヶ月」「4ヶ月」「10ヶ月」、そして相続登記の「3年」。まず動画で全体像をつかんでください。
3ヶ月——相続放棄・限定承認の申述
相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内(熟慮期間)に、単純承認・限定承認・相続放棄のいずれかを選びます(民法915条1項)。借金や連帯保証など、マイナスの財産を引き継ぎたくない場合は、この期間内に家庭裁判所へ相続放棄の申述をします。
3ヶ月を過ぎると、原則として単純承認したもの(プラスもマイナスもすべて引き継ぐ)とみなされ、放棄できなくなります。財産調査に時間がかかる場合は、期間内に「熟慮期間の伸長」を家庭裁判所に申し立てることができます。あとから多額の借金が判明したケースなど、例外的に3ヶ月経過後の放棄が認められることもありますが、確実ではありません。
4ヶ月——準確定申告
亡くなった方に一定の所得(事業所得、不動産所得、一定額以上の年金、譲渡所得など)があった場合、その年の1月1日から死亡日までの所得について、相続人が代わりに確定申告をします。これを準確定申告といい、相続の開始を知った日の翌日から4ヶ月以内が期限です(所得税法124条・125条)。
給与や年金のみで年末調整・源泉徴収が済んでいる場合など、準確定申告が不要なケースもあります。必要かどうかの判断や申告の手続きは、提携する税理士と連携して対応します。
10ヶ月——相続税の申告・納付
相続税がかかる場合、相続の開始を知った日の翌日から10ヶ月以内に、申告と納税をします(相続税法27条1項)。遺産の総額が基礎控除(3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数)以下であれば、原則として申告は不要です。
注意したいのは、遺産分割が10ヶ月以内にまとまらなくても、いったん法定相続分で分けたものとして申告・納税しなければならない点です。その際「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出しておけば、後日分割が確定したときに、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を適用して更正の請求(払いすぎた税金の還付)ができます。
3年——相続登記の申請義務
2024年4月1日から、不動産を相続で取得した相続人は、その取得を知った日から3年以内に相続登記を申請することが義務化されました(不動産登記法76条の2)。正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象になります。2024年3月以前に発生した相続も対象で、その場合は2027年3月31日までが期限です。
相続登記の詳しい解説は別の記事で扱っています。
期限に間に合わせるために集める書類
どの期限も、まず「誰が相続人か」「どんな財産があるか」が分からないと動けません。早めにそろえておきたい書類は、次の5つです。
1. 亡くなった方の、生まれてから亡くなるまでの戸籍
相続人を確定するために、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍をすべてそろえます。2024年3月1日からは「広域交付」の制度で、本籍地が遠方や複数にまたがっていても、最寄りの市区町村の窓口でまとめて請求できるようになりました(戸籍法120条の2)。
ただし、広域交付で請求できるのは、本人・配偶者・父母や祖父母・子や孫に限られます。兄弟姉妹の戸籍は請求できず、郵送や代理人による請求もできません。戸籍の附票や、戸籍の一部だけの証明書(抄本)も対象外です。その場で出せず、後日の受け取りになることもあるので、早めに動くと安心です。
戸籍の集め方は、別の記事で詳しく解説しています。

2. 相続人全員の戸籍と住民票
相続人が今も生きていることや、住所を確かめるために使います。子がいない場合は、親や兄弟姉妹、甥・姪が相続人になることもあります。関係が込み入っているときは、早い段階で専門家に一度確かめてもらうと、あとの手続きが進めやすくなります。
3. 財産と借金の資料
不動産なら登記事項証明書や固定資産税の評価証明書、預金なら通帳や残高証明書、株や保険なら取引残高報告書や保険証券などです。借金やローン、連帯保証がないかも、郵便物や通帳の引き落としから確かめます。3ヶ月の相続放棄の判断にも、10ヶ月の相続税の判断にも、この一覧が土台になります。
4. 遺言書
遺言書が見つかったら、まず種類を確かめます。自宅などで保管されていた自筆の遺言書は、開封せずに家庭裁判所で「検認」を受ける必要があります(民法1004条)。法務局に預けてあった自筆の遺言書(自筆証書遺言書保管制度)と公正証書遺言は、検認はいりません。
5. 相続人全員の印鑑証明書
遺言がなく遺産分割協議をする場合、協議書に相続人全員が実印を押し、印鑑証明書を添えます。相続登記に使う場合は、発行からの期間の決まりはありません。一方で、銀行などの手続きでは「発行から3ヶ月以内」「6ヶ月以内」といった期限を求められることが多いため、提出先ごとに確かめてから取ると、取り直しを防げます。
まず「何を、いつまでに」を整理する
相続手続きは、戸籍を集めて相続人を確定するところから始まります。誰が相続人か、どんな財産があるか、借金はないかを早めに把握し、「3ヶ月・4ヶ月・10ヶ月・3年」のどれに該当するかを整理すれば、あわてずに進められます。当事務所は、戸籍収集・相続人確定から相続登記まで並走します。
よくある質問
- 相続放棄の3ヶ月に間に合いそうにありません。
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財産調査が終わらない場合は、3ヶ月以内に家庭裁判所へ熟慮期間の伸長を申し立ててください。申立てをしないまま3ヶ月を過ぎると、原則として放棄できなくなります。
- 相続税がかかるかどうか分かりません。
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遺産の総額が「3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数」を超えそうなら、税理士と連携して試算します。超えない見込みでも、名義預金や生命保険金を含めると基礎控除を超えることがあるため、早めの確認をおすすめします。
- 全部の期限を自分で管理するのは大変です。
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初回のご相談で、そのご家族に必要な手続きと期限を一覧にしてお渡しします。期限管理を含めて手続き全体をお引き受けすることもできます。
西宮・阪神間の相続手続きは、シアエスト司法書士・行政書士事務所へ
当事務所は阪急西宮北口駅から徒歩3分。西宮市を中心に、芦屋・宝塚・尼崎・神戸など阪神間で、相続手続き一式・相続登記・相続放棄のご相談を承っています。
「何を、いつまでに」を最初に整理し、戸籍収集・相続人確定から並走します(TEL 0798-31-5930)。
出典・参考
- 民法915条1項(熟慮期間3ヶ月)、916条〜917条
- 所得税法124条・125条(準確定申告。相続の開始を知った日の翌日から4ヶ月以内)
- 相続税法27条1項(相続税の申告期限10ヶ月)、基礎控除=3,000万円+600万円×法定相続人の数
- 不動産登記法76条の2(相続登記の申請義務。2024年4月1日施行、施行前の相続は2027年3月31日まで)
- ※準確定申告・相続税の具体的な手続きは提携税理士と連携して確認します。

