※本記事は2026年10月時点の法令にもとづいて解説しています。
「父が亡くなって、実家を相続することになった。何から確かめればいいのだろう」
「固定資産税の通知書に載っている土地だけで、全部なのだろうか」
不動産は、預貯金のように金額で分けることができません。名義、分け方、建物や道路の権利、ローン、空き家の管理、売るときの税金と、確かめることがいくつも重なります。一つを見落とすと、何年もたってから手続きが止まってしまうこともあります。
この記事では、相続した不動産で起きやすい落とし穴を、チェックリストの形で整理します。一つ一つは短くまとめ、くわしい話は、それぞれのテーマの記事でご案内します。まずは全体を見渡して、ご自分の場合にどれが当てはまりそうかを確かめてみてください。
先に結論:最初に「名義・範囲・負担・期限」の4つを確かめます
- 名義:登記簿の名義が、亡くなった方ではなく祖父母やその前の世代のままのことがあります。まず登記事項証明書で確かめます
- 範囲:登記簿にない建物(未登記建物)や、私道の持分が漏れていることがあります。固定資産の名寄帳や「所有不動産記録証明書」、公図で確かめます
- 負担:住宅ローンの抵当権が残ったまま、空き家の管理を誰もしていない、といった「負担」も一緒に引き継ぎます
- 分け方:「とりあえず共有」は、後で売る・貸す・建て替えるときに全員の同意が要り、動けなくなることがあります
- 期限:相続登記は、相続で取得したことを知った日から3年以内です。2024年4月1日より前の相続は、原則として2027年3月31日までです(不動産登記法76条の2)
1. まずはチェックリストで全体を見渡します
次の表は、相続した不動産で確かめておきたいことの一覧です。当てはまるものがあれば、右の欄の章をご覧ください。
| チェックすること | 確かめる書類・場所 | この記事の章 |
|---|---|---|
| 登記簿の名義が、亡くなった方本人になっているか | 登記事項証明書(法務局) | 2章 |
| 相続人どうしで「とりあえず共有」にしようとしていないか | 遺産分割の話し合いの内容 | 3章 |
| 登記簿にない建物や、私道の持分が漏れていないか | 名寄帳(市役所)・所有不動産記録証明書(法務局)・公図 | 4章 |
| 抵当権などの登記が残っていないか | 登記事項証明書の「乙区」・金融機関の書類 | 5章 |
| 空き家の管理を誰がするか決まっているか | 現地の様子・固定資産税の通知書 | 6章 |
| 売るときの「取得費」が分かる書類があるか | 売買契約書・領収書など | 7章 |
| 相続登記の期限を過ぎていないか | 亡くなった日・相続を知った日 | 8章 |
2. 名義が祖父母のままになっていないか
登記簿を見て初めて分かることがあります
実家の名義は親だと思っていたら、登記簿を見ると祖父母のまま、あるいはさらに前の世代のままだった、ということがあります。名義が古いままだと、その間に亡くなった方の相続人も、すべて手続きに加わる必要があります。
たとえば、売却を考えて登記簿を確かめたら名義が祖父のさらに前の世代のままで、戸籍をたどると相続人が十数人に広がっていた、ということも考えられます。疎遠な親族や、住所の分からない方がいると、話し合いを始めるまでにも時間がかかります。
確かめ方
- 法務局で、土地と建物それぞれの登記事項証明書を取ります。所有者の欄(甲区)の最後に載っている人が、今の名義人です
- 名義が古いと分かったら、早めに戸籍を集めて、相続人が誰になるのかを整理します
長い間名義が変わっていない土地については、法務局から「長期間相続登記等がされていないことの通知」が届くことがあります。通知が届いた場合の進め方は、次の記事で説明しています。

西宮市内の不動産の登記は、神戸地方法務局西宮支局が受け持っています。場所や受付時間は、次の記事にまとめています。

3. 「とりあえず共有」にしようとしていないか
共有は、その場はまとまりやすい分け方です
遺言がない場合、不動産は相続人みんなの共有の状態から始まります(民法898条)。話し合いで誰が取得するかが決まらないと、「とりあえず兄弟で半分ずつ」としたくなるものです。
けれども、共有にした不動産を売ったり、建て替えたりするには、原則として共有者全員の同意が必要です(民法251条1項)。年月がたつと、それぞれの暮らしや考え方が変わり、意見がそろわなくなることがあります。共有者が亡くなると、その持分はさらにその家族に分かれていきます。
たとえば、親の賃貸アパートを兄と妹で2分の1ずつ相続したところ、数年後に兄は売りたい、妹は持ち続けたいと意見が分かれ、修繕の費用の負担でも話がまとまらなくなった、という場面が考えられます。
ほかの分け方も検討します
- 代償分割:一人が不動産を取得し、ほかの相続人にお金(代償金)を払う方法
- 換価分割:不動産を売って、代金を分ける方法
- 現物分割:土地を分筆して、それぞれが取得する方法。ただし、面積が同じでも、形や道路への接し方で使いやすさや価値が変わることがあります
共有のリスクと、共有にしない分け方については、次の記事で詳しく説明しています。


すでに共有になっていて、共有者の一人と連絡が取れない場合の制度は、次の記事でご案内しています。

4. 登記簿にない建物・私道の持分を見落としていないか
未登記の建物
古い家の離れや物置、増築した部分などは、登記がされていないことがあります。登記簿がない建物(未登記建物)は、そのままでは相続登記ができません。まず、建物の表示に関する登記(表題登記)が必要になります。表題登記がない建物の所有権を取得した人は、取得の日から1か月以内に表題登記を申請する決まりがあります(不動産登記法47条1項)。表題登記の申請は、土地家屋調査士が受け持つ手続きです。
未登記の建物でも、固定資産税はかかっていることが一般的です。西宮市には、未登記の家屋の持ち主が変わったときの届出の書式があります(西宮市「固定資産税(土地・家屋)書式一覧」の「家屋補充課税台帳登録者の変更届」)。
私道の持分
家の前の私道を、近所の方と共有していることがあります。私道の持分を相続登記から漏らすと、後で売却するときに手続きをやり直すことになりかねません。私道は固定資産税がかからない(非課税の)土地であることも多く、固定資産税の通知書だけを見ていると気づきにくいことがあります。
確かめ方
- 名寄帳(なよせちょう):市区町村が、その人が市内に持っている固定資産を一覧にしたものです。西宮市では資産税課などで取得でき、相続人が請求する場合は、亡くなった方の除籍謄本と、相続人であることが分かる戸籍謄本(または法定相続情報一覧図)が必要です。非課税の私道が名寄帳に載るかどうかは、市区町村によって扱いが違うことがあります
- 所有不動産記録証明書:2026年2月2日から、亡くなった方が登記簿上の名義人になっている不動産を、法務局で一覧にして証明してもらえるようになりました(不動産登記法119条の2)。ただし、登記上の住所や氏名と違う条件で請求すると見つからないことや、未登記の建物は載らないことに注意が必要です
- 公図・地積測量図:自宅の土地の周りの道路部分が誰の名義かを確かめます。登記事項証明書で、私道の名義に亡くなった方が入っていないかを確かめます
借地の上の建物のとき
建物は亡くなった方の名義でも、土地は借りている(借地)ということもあります。借地の契約書や地代の領収書を探し、契約の内容を確かめておきます。地主との話し合いが必要なときは、早めに専門家に相談しましょう。
5. 住宅ローンの抵当権が残ったままになっていないか
登記簿の「乙区」に、抵当権の登記が残っていることがあります。ローンは終わっているのに、抵当権を消す登記(抵当権抹消登記)だけがされていない場合もあれば、実際にローンが残っている場合もあります。
たとえば、亡くなった母のマンションの登記簿に抵当権が残っていて、家族は「ローンはもう終わっているはず」と思っていたものの、金融機関に確かめていなかった、という場面があります。
確かめることは次のとおりです。
- 金融機関に、ローンが残っているかどうかを問い合わせる
- 団体信用生命保険(団信)に入っていたかどうかを確かめる。団信で返済が終わる場合も、相続人から金融機関への連絡や手続きが必要です
- 完済していたのに抹消されていない場合は、当時の書類(解除証書など)が手元に残っていないか探す
団信と抵当権抹消の流れ、完済後の抹消の手続きは、次の記事で説明しています。

6. 空き家の管理を誰がするか決まっているか
相続した実家に誰も住まない場合、管理をする人を決めておかないと、建物が傷み、草木が伸び、近所に迷惑をかけるおそれがあります。
2023年12月13日から施行された改正空家法では、放っておくと危険な状態(特定空家等)になるおそれがある空き家を、市町村が「管理不全空家等」として指導や勧告ができるようになりました。勧告を受けると、その敷地は固定資産税の住宅用地特例(税の軽減)が受けられなくなります(国土交通省の資料)。
- 誰が鍵を持ち、誰が見回るかを決める
- 固定資産税の通知書が誰に届くようにするかを決める(西宮市には「相続人代表者指定届」の書式があります)
- 住む予定がなければ、売る・貸す・解体するのいずれにするかを早めに話し合う
なお、相続放棄をした場合でも、その空き家を現に占有している人には、引き渡すまで保存する義務が残ることがあります(民法940条)。空き家の相続と売却、相続放棄後の管理については、次の記事で説明しています。


7. 売るときの「取得費」が分かるか、相続税の期限はいつか
取得費の資料を探しておきます
相続した不動産を売ると、利益(譲渡所得)に所得税・住民税がかかることがあります。利益は「売った金額-(取得費+売るための費用)」で計算します。相続した不動産の取得費や取得の時期は、亡くなった方が買ったときのものを引き継ぎます(国税庁 No.3270)。
ところが、親が何十年も前に買った不動産だと、売買契約書や領収書が見つからないことがあります。取得費が分からない場合は、売った金額の5%を取得費とすることになり(国税庁 No.3258)、税金が思ったより多くなることがあります。
- 亡くなった方の書類の中から、売買契約書・建築の請負契約書・領収書などを探して保管しておく
- 相続登記の費用など、相続のときに払った登記費用は、取得費に含められる場合があります(国税庁 No.3270)
売るときに使える特例
- 相続した空き家を売ったときの特例:一定の要件を満たすと、譲渡所得から最高3,000万円(2024年1月1日以後の譲渡で、相続人が3人以上のときは2,000万円)を差し引けます。2027年12月31日までの譲渡が対象で、相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ることなどが要件です(国税庁 No.3306)
- 相続税を払った人の取得費の特例:相続税がかかった人が、相続税の申告期限の翌日から3年以内に売った場合、払った相続税の一部を取得費に加えられます(国税庁 No.3267)
特例には細かな要件があります。売る前に、税務署や税理士にご確認ください。代表者の名義で売る場合の遺産分割協議書の書き方などは、次の記事で説明しています。

相続税がかかるときは10か月が期限です
相続税の申告は、亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内です(国税庁 No.4205)。土地の評価は、形や道路への接し方などで変わり、専門的な判断が要ることがあります。相続税がかかりそうなときは、早めに税理士に相談しましょう。不動産が多く現金が少ない相続では、納税のための資金をどう用意するかも早めに考えておく必要があります。
遺産分割のときの不動産の評価の考え方は、次の記事でご案内しています。

8. 相続登記の義務と期限を過ぎていないか
2024年4月1日から、相続登記が義務になりました。
- 相続で不動産を取得した人は、相続が始まったことと、その不動産を取得したことを知った日から3年以内に、相続登記を申請しなければなりません(不動産登記法76条の2第1項)
- 2024年4月1日より前に始まった相続で、まだ登記をしていない不動産も対象です。この場合は、原則として2027年3月31日までに申請が必要です(法務省の案内)
- 正当な理由がないのに申請をしないと、10万円以下の過料の対象になります(不動産登記法164条1項)
- 遺産分割の話し合いがまとまらないときは、「相続人申告登記」という簡単な申出で、ひとまず義務を果たすこともできます(不動産登記法76条の3)
相続登記の義務化と期限については、次の記事でくわしく説明しています。

相続人申告登記のしくみと申出のしかたは、次の記事でご案内しています。

また、2026年4月1日からは、登記簿上の住所や氏名が変わったときの変更登記も義務になりました(変更から2年以内。不動産登記法76条の5)。相続で名義人になった後に引っ越したときも対象です。

9. 確かめる順番
- 登記簿を取る:土地・建物の登記事項証明書を取り、名義(甲区)と抵当権など(乙区)を確かめます
- 漏れを探す:名寄帳、所有不動産記録証明書、公図で、未登記の建物や私道の持分がないかを確かめます
- 相続人を確かめる:戸籍を集め、相続人が誰かを整理します。名義が古い場合は、その間の相続人もたどります
- 負担を確かめる:ローンの残り、空き家の状態、借地の契約などを確かめます
- 分け方を話し合う:住む・貸す・売るの見通しを話し合い、共有にするかどうかを慎重に決めます
- 期限に間に合わせる:相続登記の期限(3年、または2027年3月31日)を確かめ、遺産分割がまとまらなければ相続人申告登記も検討します
相続手続き全体でつまずきやすい点は、次の記事にもまとめています。

よくある質問
- 相続した不動産は、何から確かめればよいですか?
-
まず、法務局で土地と建物の登記事項証明書を取り、名義が亡くなった方本人になっているか、抵当権などが残っていないかを確かめます。あわせて、市役所で名寄帳を取ると、亡くなった方が市内に持っていた不動産の一覧を確かめられます。
- 固定資産税の通知書に載っている不動産だけで、全部と考えてよいですか?
-
全部とは限りません。固定資産税がかからない私道や、登記がされていない建物などが漏れていることがあります。名寄帳、法務局の所有不動産記録証明書、公図などで確かめると安心です。
- 兄弟で「とりあえず共有」にしておけば公平ではないですか?
-
その場では公平に見えますが、売ったり建て替えたりするには、原則として共有者全員の同意が要ります。将来の使い道を話し合い、代償分割や換価分割もあわせて検討することをおすすめします。
- 登記簿に抵当権が残っていますが、ローンは終わっているはずです。どうすればよいですか?
-
まず金融機関に、ローンが残っているかどうかと、団体信用生命保険に入っていたかどうかを確かめます。完済している場合は、金融機関から受け取った書類(解除証書など)を使って、抵当権の抹消登記をします。書類が見つからないときは、金融機関にご相談ください。
- 不動産の相続を司法書士に頼むかどうか、迷っています。
-
相続登記は自分ですることもできます。名義が古い世代のまま、相続人が多い、未登記の建物や私道がある、抵当権が残っている、といった場合は、司法書士に相談すると、確かめる順番や必要な書類を整理しやすくなります。税金の判断は税理士、表題登記は土地家屋調査士と、分野ごとに専門家が分かれます。
まとめ
相続した不動産では、「名義が祖父母のまま」「とりあえず共有」「未登記の建物や私道の持分の見落とし」「残ったままの抵当権」「空き家の管理」「取得費の資料がない」「相続登記の期限」といった落とし穴が重なりやすくなります。
まずは登記事項証明書と名寄帳を取り、名義・範囲・負担・期限の4つを確かめることから始めてみてください。どれか一つでも当てはまれば、早めに動くほど選べる方法が多くなります。
相続した不動産の名義変更や、古い名義の整理、抵当権の抹消のご相談は、西宮北口のシアエスト司法書士・行政書士事務所でもお受けしています。登記簿や名寄帳の確認から、戸籍の取り寄せ、遺産分割協議書や登記の申請書の作成まで、順を追ってご案内します。
出典・参考
- 不動産登記法 47条・76条の2・76条の3・76条の5・119条の2・164条(e-Gov法令検索)
- 民法 251条・898条・940条(e-Gov法令検索)
- 法務省「相続登記の申請義務化について」https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00599.html
- 法務省「所有不動産記録証明制度について」https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00740.html
- 国土交通省「『空家法』と『2023改正空家法』」https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001753652.pdf
- 国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律の施行期日を定める政令等を閣議決定」https://www.mlit.go.jp/report/press/house03_hh_000183.html
- 国税庁 No.3258「取得費が分からないとき」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3258.htm
- 国税庁 No.3270「相続や贈与によって取得した土地・建物の取得費と取得の時期」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3270.htm
- 国税庁 No.3306「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3306.htm
- 国税庁 No.3267「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3267.htm
- 国税庁 No.4205「相続税の申告と納税」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4205.htm
- 西宮市「固定資産(土地・家屋)公課証明書について」https://www.nishi.or.jp/kurashi/shizei/shomei/hyoukasyoumei.html
- 西宮市「固定資産税(土地・家屋)書式一覧」https://www.nishi.or.jp/kurashi/shizei/tochi/tetsuzuki/koteishisan-list.html

